森咲智美 2018年11月22日号

話題の1冊 著者インタビュー 桂千穂 『真の栄冠はこの映画に』 メディアックス 1,800円(本体価格)

掲載日時 2016年10月23日 18時00分 [エンタメ] / 掲載号 2016年10月27日号

 −−ここ数年、映画紹介の本を積極的に出されていますが、何か意図があるんですか?

 桂 映画は美しい絵、物語、音楽、そのほかすべてが入った娯楽の王様です。多くの才能あふれる映画人が素晴らしい作品を作ってきました。ところが最近の若い人は、過去の本当に面白い映画について何も知らないんですね。映画を見る環境自体は、映画館以外にCS放送、DVD、ブルーレイ、ネットと豊かになってきたのに、優れた映画についての知識を学ぶ機会がないのではと思い、今、私がこれまで見てきた映画の中で特にお薦めしたい作品についてまとめているんです。

 −−今回は1946年に日本公開された『この虫十万弗』から本年度公開の『ヘイル、シーザー』までの162本。掲載作品の思い出を語ってください。

 桂 とにかく『この虫十万弗』にはビックリしました。本作は戦時中に製作されたのですが、すごくおしゃれなんです。同じ時期、日本では戦争に協力する映画しか製作されていませんでした。戦後、本作を見て、アメリカはなんてすごい国なんだと思いました。戦争に勝てないのも当然だと。『イースターパレード』('50年)はフレッド・アステア主演のミュージカル。最高に楽しい作品で、本作を見て私はアメリカ映画の大ファンになりました。

 −−紹介作品の中で特に好きな映画は何ですか?

 桂 『白い肌に狂う鞭』('64年)と『情婦マノン』('50年)です。『白い肌に狂う鞭』は当時、小規模にしか公開されなかった作品ですが、女のマゾヒズムをこれほどムードたっぷりに描いた作品は、これまでも、これ以後もありません。私が映画雑誌で本作を絶賛したのがきっかけで、大林宣彦監督とも仲よしになりました。『情婦マノン』はラスト、心底愛した女が砂漠で死んでしまい、その死体を男が必死で運ぶシーンが素晴らしい。原作よりもよくできています。

 −−映画ファンに一言お願いします。

 桂 映画は知識があるとより楽しく見ることができます。本書は作品のあらすじだけでなく、公開された当時の評判や監督、脚本家について、監督の意図など、その映画についてのうんちくも誌面の許す限りまとめました。ほかにも面白い映画はいっぱいあります。巻末には私と共著者で脚本家仲間の掛札昌裕氏、2人の『戦後70年年度別ベストテン』を掲載し、本文で触れることができなかった作品についても語っています。本誌を参考にして、本当に面白い映画を1本でも多く楽しんでいただけると筆者冥利に尽きます。
(聞き手/岩尾悟志)

桂千穂(かつら ちほ)
1929年岐阜県生まれ。脚本家・映画評論家。'70年、『血と薔薇は暗闇のうた』でシナリオ作家協会・新人シナリオコンクールに入選。'72年、脚本家デビュー。『HOUSEハウス』('76年)、『アイコ十六歳』('83年)、『ふたり』('91年)など数多くの作品を手がける。

関連タグ:著者インタビュー

エンタメ新着記事

» もっと見る

話題の1冊 著者インタビュー 桂千穂 『真の栄冠はこの映画に』 メディアックス 1,800円(本体価格)

Close

WJガール

▲ PAGE TOP