菜乃花 2018年10月04日号

本好きリビドー(198)

掲載日時 2018年04月07日 18時00分 [エンタメ] / 掲載号 2018年4月12日号

本好きリビドー(198)

◎快楽の1冊
『「リベラル」という病』 岩田温 彩図社 1500円(本体価格)

 ひと昔前は大学の文学部で「国語国文科」という表記が当たり前だったはずが、今じゃ大抵「日本語日本文学科」(そういやその日本はおろか『J文学で行こう』だなどとはしゃいでたバカ評論家はどこへ行ったか?)。
 あるいは「私たちは日本国民じゃなく地球市民です」と真顔で言いたがる向きも、決して珍しくない。思い返せば少年時代に夢中になったいわゆる“スーパー戦隊シリーズ”ものの主題歌にしたって、「地球を悪の手から救う」「この星を守る」云々の連呼で「日本」は何しろ一切出てこなかった(『大戦隊ゴーグルⅤ』だけは例外的に、“愛する国を守るために…”という歌詞あり)。随分念入りに刷り込まれたものだ。
 とにかく「日本」という「国家」のイメージを無味無臭、脱色化してゆく(なるほど、だから小学生が図画の授業で使う絵の具の種類でも“はだいろ”が差別語扱いで御法度なのか)のに執拗な人種が大好きな片仮名が「リベラル」なのだと自己流に理解していたが、著者によれば現在リベラルを標榜する政党や学者、知識人はもはや“病”の領域に達しているらしい。それも読み進めるほどに深刻で、俗にいうステージ4の段階を疑わざるを得ないくらいその進行ぶりは目を覆うばかり。
 靖国神社への公式参拝を「あれは理屈から言えば、ドイツの首相がヒトラーの墓参りをしているようなものなんです」(内田樹氏)…本来こういう発言こそ、左翼系やリベラル派の多用する「歴史に目を閉ざした」「妄言」以外の何物でもなかろう。大戦中の日本はナチスのごとく一民族全体の物理的抹殺など企んだ事実はなく、それどころか朝鮮人陸軍中将まで存在した。自覚症状なき論客ならぬ患者の群れに向けた処方箋、いな特効薬だ。
(居島一平/芸人)

【昇天の1冊】
 2014年に文庫本として発売されたドキュメンタリーを漫画化したのが『ソープランドでボーイをしていました』(KADOKAWA/550円+税)。
 原作は玉井次郎さん。東北の震災で家は倒壊、職も失った50歳男性だ。同時に投資していた株も暴落し、住宅ローンも支払えない状況へと陥る。
 そこで妻と子を残し上京、東京・吉原のソープランドで働くことになる。住居は店が用意した寮でボーイ仲間3人と共同生活。年齢は上だが、一番下っ端のため風呂は最後に入り、入浴後は掃除。就寝は毎日午前4時…。寮費は無料だが、かなり過酷な生活といえよう。
 さらに同僚たちが、いずれもスネに傷を持つ強烈なキャラ。無断退職も少なくない業界らしく、従業員が突然姿を消すのを「飛ぶ」というそうだ。
 体育会系の厳しい上下関係、店の階段の掃除などの肉体労働のため、ハードワークとストレスで極度の緊張を強いられる。給料は? 会社の福利厚生は? …など、ソープ従業員の労働環境がリアルに描かれている点もオモシロイ。
 もちろん泡姫たちも登場するが、色恋沙汰など皆無。とにかく激務なゆえ、女性に目移りしている状態ではないようなのだ。むしろ男性従業員の目線から見た、ソープ嬢たちのリアルな姿が興味深い。
 「割に合わない仕事」というのが正直な読後感だが、同時にこうした体験をするのも貴重なのではないかという感慨も持つ。中年男の青春ドラマという印象の1冊である。
(小林明/編集プロダクション『ディラナダチ』代表)

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