菜乃花 2018年10月04日号

世の中おかしな事だらけ 三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』 第209回 2016年のインフレ率▲0.3%

掲載日時 2017年02月19日 14時00分 [政治] / 掲載号 2017年2月23日号

 総務省から2016年のインフレ率(コアCPI)が発表された。マイナス0.3%。わが国のインフレ率は4年ぶりにマイナスに落ち込んでしまったのである。
 1994年以降の日本のインフレ率(年平均)の推移を左ページ(※本誌参照)にグラフ化した。CPIは「総合消費者物価指数」、コアCPIは「生鮮食品を除くCPI」、コアコアCPIは「食料・エネルギーを除くCPI」を意味する。日本銀行はインフレ率について、コアCPIで定義している。

 さて、図から、'94年以降に3回、日本のインフレ率が上昇した時期があることが分かる。
 すなわち、橋本龍太郎政権による消費税増税、2008年の資源バブル期、そして安倍晋三政権による消費税増税だ。
 '08年の資源バブル期は、何しろ「資源」バブルであったため、食料・エネルギーを除くコアコアCPIは上昇していない。
 安倍政権期による消費税増税時='14年は、増税と同時に金融緩和も実施していたため、コアCPIで2.6%にまでインフレ率が上昇した。もっとも、内2%は消費税増税分であるが。
 消費税増税による物価上昇は、その後の物価下落を引き起こす。さらに言えば、日本銀行が4年近くで300兆円超の日本円(日銀当座預金)を発行しても、政府が緊縮財政をやっている限り、物価が安定的に上昇することはないという「真実」を、安倍政権は証明したわけである。

 ならば結局のところ、どうしたらいいのか。
 もちろん、政府が需要創出のための財政政策に乗り出さなければならないのだが、「いつまで」やるべきなのか。短期的な財政出動では、日本のデフレ脱却は果たせない。デフレから脱却するためには、安倍総理本人も言っている通り「十分な脱出速度」が必要だ。
 さらに、デフレギャップ(総需要の不足)が完全に埋まるまで、財政出動を「継続」することも重要だ。デフレギャップの額が正確にいくらなのか、厳密には誰も分からないため、一般企業(非金融法人企業)の資金過不足を見るべきだろう。

 そもそも、資本主義とは企業が負債を増やし、つまりは資金不足となり、投資を拡大し、成長していくものだ。ところが、デフレ期には企業までもが資金過剰(貯蓄)に走り、「民間主導の経済成長」は絶対に実現しない。
 だからこそ、政府が資金不足(財政赤字)を拡大しなければならないのだ。
 「政府による需要創出の期間」を定めるならば、「企業の資金過不足が資金不足になるまで」となる。

 日本の非金融法人企業は'98年のデフレ化以降、延々と資金過剰を続けている。現在のわが国では、資本主義が成り立っていないも同然なのだ。
 また、'14年の日本の非金融法人企業の資金過剰は、'13年(22兆円)から10兆円弱へと、大幅に縮小した。もう少しで、非金融法人企業が「資金不足に戻る」というところで、安倍政権が緊縮財政でぶち壊しにしてしまったのだ('15年には、非金融法人企業の資金過剰は、30兆円超にまで拡大してしまった)。

 というわけで、日本政府が真剣にデフレ脱却を望むならば、非金融法人企業が(せめて年単位で)資金不足になるまで、財政拡大の継続をコミットする必要がある。非金融法人企業の資金過不足が「資金不足」になれば、一応、民間主導の経済成長が始まったと判断して構わない。
 政府は、少なくとも民間主導の経済成長が確実になるまで、財政出動による需要創出を続ける必要があるのだ。

 さて、政府の経済政策に大きな影響力を持つ浜田宏一教授(内閣官房参与)が1月末に中日新聞のインタビューを受け、「金融緩和が徐々に効かなくなってきた」との見解を示した。浜田教授はデフレ脱却のために「財政支出の助けが必要」と述べ、金融中心だった政策を修正する必要性を認めたのである。
 さらに、浜田教授はインタビューにおいて、現在の日本にとって極めて重要なことをいくつか語っている。インタビュアーが「日本の財政は世界一の赤字を抱えています」と、財務省的な(かつ事実としても間違っている)煽りをした際に、教授は、
 「財政を均衡させる考えにとらわれ過ぎだ。政府が潤っても国民が貧しいなら、どうしようもない」
 と、筆者としては心から賛同したい回答をしている。

 さらに、インタビュアーの「政府が当面借金を返す気がないと、国民に思わせても本当にいいのですか」という突っ込みに対し、
 「構わない。経済が成長していれば財政赤字が増えることは問題ではない」
 と答え、「それでは歯止めのないインフレになってしまうのでは」という陳腐(かつ、安倍政権が間違っていることを証明した)な「ハイパーインフレ破綻論」に対し、
 「長年デフレが続いている。そのような心配をする必要はない」
 と、現実を踏まえた正しい回答をしたのである。

 もっとも、多くの国民は浜田教授の「正しい発言」に対し、「???」という印象を覚えるのではないか。
 すでに、わが国において「国の借金で破綻する」論は、社会通念化している。社会通念をひっくり返すのは時間と根気が必要となる。
 それでもやらなければならない。筆者は最近、財務省の「国の借金プロパガンダ」「嘘の財政破綻論」が原因で、わが国が亡国に至り、将来的に中国の属国化する未来以外を想像することができなくなってしまったのだ。

みつはし たかあき(経済評論家・作家)
1969年、熊本県生まれ。外資系企業を経て、中小企業診断士として独立。現在、気鋭の経済評論家として、分かりやすい経済評論が人気を集めている。

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