菜乃花 2018年10月04日号

本好きリビドー(102)

掲載日時 2016年04月24日 16時00分 [エンタメ] / 掲載号 2016年4月28日号

◎快楽の1冊
『ノヴェリストの季節』 沢村鐵(さわむらてつ) 徳間書店 1700円(本体価格)

 メタフィクション、というジャンルがある。基本的には、小説を論じたり、批評したりするのは文芸評論や書評である。しかし、小説の中で小説を批評する、という類いのものもある。それがメタフィクションだ。有名なところでは、筒井康隆の作品にかなりの数の例がある。
 本書『ノヴェリストの季節』もメタフィクションと言っていい。作者は2000年にデビューし、その後、警察小説などミステリーの分野で活躍している。しかしながら、本書はミステリーではない。編集者が作家と交流を重ね、小説なるものに対しての考えを深めていく物語なのだ。
 出版社である行文社に勤める黒島郁夫は30代。もともとは書店に常に顔を出す営業マンであったが、途中で編集部に異動を命じられる。持ち前の生真面目さ、ストイックさ、小説好きの性分を活かして、業界内では有名な優秀な編集者までになった。その後、結城日向子という作家の本に惚れ込むことになる。20代の大学生ながら、頭角をあらわしており、黒島はぜひこの作家の担当編集者にさせてほしい、と会社の上層部にアピールする。果たして担当になることができた。それから黒島は日向子をバックアップするために全力を尽くしていく…。
 おそらくこの小説は、作者が自分の今の立場を見つめ直すために書いたものだ。小説家ではなく、その傍らにいる編集者を主人公にすることで、内容に客観性を持たせたのだ。そういう手法もあるだろう。自分語りというのはうまくいかないと読者をしらけさせるわけで、作家ではない者を主役にすれば、独りよがりのナルシシズムから逃れることができる。
 恋愛小説でもある。全体に甘ったるいラブ・ストーリーという感じもあるが、青春成長小説として楽しめる。何より出版業界の内情を知ることができて楽しい。
(中辻理夫/文芸評論家)

【昇天の1冊】
 記紀神話といわれても、ピンとこない方もいるだろう。日本の成立をつづった『古事記』と『日本書紀』のことだ。
 この中に、イザナギとイザナミという、日本の先祖となる男女の神様が登場する。実はこの2人は兄妹なのだが、お互いの体に「成り余るところ」と「成り合わぬところ」があることに気付く。ペニスと女性器である。そこで合体させると、次々と子供が誕生する。日本の歴史上に描かれた、初めてのセックス描写である。
 では、この時、2人はどんな体位だったのだろう? なんてテーマを、真面目かつユーモアたっぷりに解説したのが、『エロティック日本史』(幻冬舎/880円+税)だ。
 副題に「古代から昭和まで、ふしだらな35話」と付けられている通り、歴史に埋もれてスポットライトが当たらなかったものの、よく読めば下ネタという題材を掘り起こしている。
 日本の大名たちの性生活を調査したという江戸時代の記録や、奈良時代の貴族たちの間で流行していた“秘具”について、つまり大人のオモチャの話題や、その玩具類が通販されていたという爆笑ネタなど、とにかく面白いのだ。
 また、夜這いのルーツや春画とお寺の関係など、目からウロコの記述もてんこ盛り。
 著者は風俗史家の下川耿史氏。性風俗の研究家として多数の著書を持つ方だから、古来から性を謳歌してきたニッポン人の赤裸々な姿を、見事なまでに看破している。日本は、スケベな国なのである。
(小林明/編集プロダクション『ディラナダチ』代表)

関連タグ:本好きリビドー

エンタメ新着記事

» もっと見る

本好きリビドー(102)

Close

マダムとおしゃべり館

▲ PAGE TOP