和地つかさ 2018年9月27日号

本好きリビドー(203)

掲載日時 2018年05月19日 18時00分 [エンタメ] / 掲載号 2018年5月24日号

◎快楽の1冊
『炎と怒り-トランプ政権の内幕』
マイケル・ウォルフ/関根光宏、藤田美菜子ほか訳 早川書房 1800円(本体価格)

 全米で200万部突破のベストセラーの本書。内容を素直に受け取る限り、改めてアメリカはとんでもない性格破綻者、というよりほとんど異常者に近い男を大統領に選んでしまったと思わざるを得ない。気分屋で堪え性がなく人の話を最後まで聞けない。活字に疎く1冊丸ごと通読した本は恐らくない。ワーカホリックで趣味に乏しいが度を超えた女好きで…等々その人物像は否定的形容がこれでもかのオンパレードな上、“衝撃の事実”が次々と暴かれてゆく。
 曰く選挙期間中、トランプ陣営の誰しもが(本人含め)勝利を予期していなかったどころかそもそも勝つつもりでなく、壮大な敗北をビジネスチャンスに活かそうと目論んだ。曰く今やホワイトハウスに政治のプロは皆無で、在野の右派イデオローグに過ぎなかったバノン首席戦略官(現在辞任)側と娘のイヴァンカと夫のジャレッド・クシュナー(2人の名を足して“ジャーヴァンカ”と陰で呼ぶマスコミの造語までできたとか)の側とで政権運営の主導権を巡る争いが低劣で目に余る。曰くトランプ支持層の中には「たとえニューヨークの五番街でトランプが人を撃って逃げたとしても」彼を支持すると答える者が最低3割いて、そこにKKKやネオナチが含まれる…とまで言われるとさすがに疑問が湧く。
 「この国は混乱し、ばらばらで、余裕がなくなっている。変革者であり、人を鼓舞する有能なコミュニケーターだったあのバラク・オバマでさえ、あまり国民の関心を集められなかったというのは、信じがたい悲劇だ」という一節にぶつかれば著者が決してニュートラルな立場に非ず、心情的に前大統領贔屓なのは明白だ。ゴシップ本としては充分面白いが、中身は話半分にとどめるのが無難だろう。
(居島一平/芸人)

【昇天の1冊】
 女性と会話していると、「自分の目が嫌い」「鼻の形がコンプレックス」「右側から写真を撮るとブスに見える」など、細かなこだわりを持っていることに気付く。はたから見ると「そんなことないのに」と思えるのに、本人は頑として「嫌い」と譲らない…。そんな経験をした人は少なくないだろう。
 こうした劣等感にさいなまれるのは、“醜形恐怖”という精神疾患なのだそうだ。その病症をテーマとした1冊が『自分の顔が嫌いですか?』(ビジネス社/1300円+税)。著者は精神科医の町沢静夫氏。
 事例としてあげられる症例は、「脚が長すぎる」と思い込んで不登校になった女子高生、「毛が縮れていて顎が細い」からと家庭内暴力に走った23歳の女性。さらに同じく縮れ毛が理由で出社拒否に陥った20代後半の男性…。そう、醜形恐怖は男にも起きる。そして、どれもがうつ病や摂食障害を併発しやすい深刻な病なのだそうだ。また男性の場合、「ペニスが小さい」も醜形恐怖の一つ。
 もっと問題なのは、他人から見るとむしろ美人やイケメンが多いこと。彼女・彼たちは美的感性に優れているため、些細な醜形にこだわってしまい、悩んだあげく人との接触を避けようとする。なるほど、美容整形が流行るワケである。
 人間が持つ終わりなき美への欲望を目の当たりにできる本。容姿は凡人並みのほうが、かえってラクに暮らせるようである。何事も“そこそこ”のレベルがいいということか…。
(小林明/編集プロダクション『ディラナダチ』代表)

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