葉加瀬マイ 2018年11月29日号

友成那智 メジャーリーグ侍「007」 MVPは「田中将大」 最も期待を裏切った選手は?

掲載日時 2016年07月23日 14時00分 [スポーツ] / 掲載号 2016年7月28日号

 メジャーリーグは7月10日に前半戦が終了。15日から後半戦に入る。今週は日本人大リーガーの「シーズン前半の総括」を行ったうえで、前半のMVP(最優秀選手)を選出し、併せて米国流にLVP(最も期待を裏切った選手)も選んでみたい。

■前半戦の総括
 昨季、メジャーの日本人選手は故障者が続出し稼働率が極端に低下。総年俸に対する実際の働きは52.7%しかなかった。総年俸は5960万ドル(63億円)だったので30億円くらいが無駄になったことになる。そのため今季は、何が何でも年俸に見合った働きができることを示す必要があった。
 結論から言うと、今季前半は、その命題を何とか達成することができたと言える。
 今季の日本人メジャーリーガーの総年俸は6548万ドル(68.8億円)なので、前半戦の俸給の総計はその半分の3274万ドル(34.4億円)となる。
 それに対し、WARベースで算出した前半戦の実際の働きは3440万ドル(36.1億円)で、俸給の総額をわずかに上回った。オールスター選出者がゼロだったのを見ても分かる通り、今季前半、日本人メジャーリーガーには際立った働きをした者がいなかった。しかし、DL入りしたのはトミージョン手術明けのダルビッシュ有だけで稼働率がたいへんよく、「カネの分は働いた」と言える結果になった。

■シーズン前半のMVP
 候補:田中将大、イチロー
 受賞者:田中将大
 田中将大は7月6日現在、勝ち星が六つしか付いていないため、今季は不調だと思っているファンが少なくない。しかし、勝利数が少ないのは、ひとえにヤンキース打線の得点力不足に原因がある。今季のヤ軍は、打線の中軸がまったく機能せず、チーム得点はア・リーグ15球団中13位というひどさだ。その影響をもろに食ったのが田中なのだ。
 田中は、昨年までは相手打線を自責点2以内に抑えれば、8割方勝ち星がついた。しかし、今季はそうならない。自責点2に抑えた試合はこれまでに6試合あったが、勝ち星が付いたのは1試合だけだ。それ以外にも自責点1の試合で負け投手になった試合と、8回まで無失点に抑えながら勝ち星が付かなかった試合が一つずつあり、今季はとことん勝ち運に見放されたシーズンになってしまった。

 しかし、勝ち星以外はハイレベルな数字が並ぶ。
 防御率(3.12)はア・リーグ9位、貢献ポイントであるWAR(3.1)は同4位、安定感の指標であるWHIP(1.05)は同5位、耐久性を見る投球イニング数(112回1/3)は同6位である。
 田中はヒジの故障リスクを減らすため、今季は三振を狙わず、打たせて取ることに徹している。投球スタイルの転換を図りながら、これだけハイレベルな数字を出していることは称賛に値する。

 マーリンズのイチローはメジャーの野手で最高齢の42歳になりながら、オフの間、徹底的に下半身を鍛え、全盛期に近いスイングスピードを取り戻し序盤からヒットを量産。6月上旬には日米通算でピート・ローズの通算安打記録4256本を更新。メジャー3000本安打の達成も時間の問題となった。打率3割4分はナ・リーグの150打数以上の打者では2位、出塁率4割1分3厘は同3位、得点圏打率4割3分5厘は同2位である。
 ただ、マ軍は若くて優秀な3人のレギュラー外野手を擁しているため、依然4人目の外野手という位置づけで使われており、出番が限られている。そのため、チームへの貢献度では田中に大きく後れを取っており、どちらがMVPにふさわしいか考えた場合、田中将大に軍配が上がる。

■LVP(最も期待を裏切った選手)
 候補:青木宣親、上原浩治
 受賞者:青木宣親
 青木はオフにマリナーズと契約し、トップバッターとして期待されていた。しかし、以前は得意だった左投手を苦にするようになり、序盤から打率が低迷。6月半ばにはトップバッターから8番打者に降格。さらに6月23日には3Aに降格となった。日本のファンは、イチローの指定席だった「マリナーズのトップバッター」に青木が入ることに大きな期待を寄せていただけに、落胆は大きい。
 レッドソックスの上原は新加入のキンブレルにクローザーの座を明け渡し、今季はトップセットアッパーに回った。これにより負担が軽くなったため、今季はフルシーズン、レベルの高い活躍をしてくれるのではないかと期待が高まった。しかし、伝家の宝刀スプリッターが落ちずに、甘く入って痛打されるケースが頻発。最大の武器が最大のリスクになってしまった。
 レ軍は今季、地区優勝を狙える戦力を十分備えているが、上原の不振は首位争いでオリオールズに後れを取る一つの要因になっている。
 ただ、青木と比較した場合、上原はここ一番というところで度々見事な働きを見せているので、LVPは青木で決まりだ。

ともなり・なち 今はなきPLAYBOY日本版のスポーツ担当として、日本で活躍する元大リーガーらと交流。アメリカ野球に造詣が深く、現在は大リーグ関連の記事を各媒体に寄稿。日本人大リーガーにも愛読者が多い「メジャーリーグ選手名鑑2016」(廣済堂出版)が発売中。

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