葉加瀬マイ 2018年11月29日号

食事から見直す健康長寿の秘訣 「医食同源」の大切さを考える

掲載日時 2017年12月31日 10時00分 [健康] / 掲載号 2018年1月4日号

 日本人の平均寿命のランキングは、依然として世界1位をキープしている。『ついに突き止めた究極の長寿食』(洋泉社)などの著書がある家森幸雄氏は、その理由を「バランスのとれた食生活」にあるとして、こう述べている。
 「毎日の一食一食が我々の体を作り、いかに食生活が命を支えているかを考えて欲しい。若いサラリーマンや学生、フリーターたちは外食中心の美食に走り、コンビニ食、市販のおにぎり、ハンバークで毎日、昼食や夜食を済ませている。こうした人たちが、現在の平均寿命まで到達するかは難しいと言わざるを得ない。医食同源の精神を、しっかりと心に刻んで頂きたい」
 世界保健機関(WHO)が昨年に発表した2016年版の「世界保健統計」によれば、'15年の日本人寿命は83.7歳(女性=86.8歳、男性=80.5歳)。世界1位をキープし続けている理由は、乳幼児の死亡率が低いことや、最近では、成人病の検査が広まったことなどが挙げられ、加えてWHOは「何よりバランスのとれた伝統の食生活にある」と結論付けている。

 戦国時代、織田信長が気に入り、舞ったとされる「幸若舞」の演目の一つ、「敦盛」の一説には「人間50年、下天の内をくらぶれば、夢幻の如くなり」とあるが、当時の武将の寿命は、身分の高い人でさえ50歳程度だったと言われ、貧しい農民たちは明治初期まで30代で寿命を終えていた。
 それが1950年以降、日本人の寿命は一気に世界一に駆け上がるわけだが、根本にあるのは医療技術の向上だけではない。日本には、「医食同源」という言葉があり、毎日栄養バランスのとれた食事をしていれば、病気の予防や治療にも繋がり、健康維持も可能という考えが延々と継がれてきた結果でもあるのだ。
 「医食同源は、中国の“薬食同源思想”が元になっているとされ、70年代に日本で広まった造語と言われています。すぐに風邪をひいてしまうような人は、食事において好き嫌いが多いとされ、特に野菜を摂らない人は、ビタミンとミネラルが不足している傾向があります」(健康ライター)

 この2つに、たんぱく質、脂質、糖質を合わせたものを5大栄養素と呼び、体調をコントロールするための微調整役を果たしている。
 「普段から元気な人は、これらを万遍なく摂って、何でも美味しく食べられているので、病気もしにくいのです。50年代以降生まれの日本人は、若いうちからそういったバランスのとれた食生活が自然と身に付いたのでしょう。ここ数年は“食育”という言葉が広まり、何をどう食べるか、親から子供に伝え、引き継いでいくことが大切です」(同)

 ここで、食事と長寿の関係について見てみよう。
 管理栄養士で料理研究家の林康子氏に聞いてみた。
 「ペルーやパキスタン、ブルガリア、ジョージア(旧グルジア)などには、“長寿の郷”があったと言われます。これらの国があるコーカサス地方は、ヨーグルトの生産地として有名であると同時に、長寿国が集まっている地域とされます。ヨーグルトと言えば、中に含まれる乳酸菌が腸内の環境を整え、便秘を防いだり免疫力を高める効果がある。他にも、コレステロール値を下げることから、これが健康長寿に繋がっているとされています」

 一般的に長寿と言われる地域では、ヨーグルトの他、発酵食品のチーズなどを上手に食べているという。現在は日本でも様々な銘柄のヨーグルトが手に入るが、中でもカスピ海ヨーグルトは、2012年あたりから日本で広まり注目を集めた。やや高価ではあるが、コレステロール値を下げ、がんを防ぐ効果もあると言われているからだ。
 しかし、林氏によれば、かつて長寿国と言われた地域でも、今はそれを維持することが困難になりつつあるという。食生活が西欧化している今、ブルガリアでさえヨーグルト派からバターとパン食などに移行する人が増え、心筋梗塞などの病気に罹る人が少なくない(WHO発表の'15年データでは平均寿命74.5歳で世界ランキング80位)。
 「厚労省の今年9月の発表によれば、日本における100歳以上の高齢者は6万7824人。前年から2000人あまり増え、47年連続で増加しているという。政府が'63年に統計を取り始めた頃は、わずか156人だったことを考えれば、相当な変革を遂げたことになります。ちなみに、先進国のアメリカは'15年のデータで79.3歳。その差は歴然としています。確かに、一度でもアメリカを訪れたことのある人は分かると思いますが、レストランで出される食事量が向こうはケタ外れに多い。ステーキは大きく、ハンバーガーやピザも山盛り。飲み物も甘いものばかり。平均寿命が延びないのも頷けます」(同)

 都内で総合医療クリニックを営む医学博士の遠藤茂樹氏に、「日本の食文化」について聞いた。
 「もともと米国と日本は食文化が違いますが、過食はカロリー過多になります。動脈硬化や糖尿病などの成人病の原因にもなり、がんにもなる。これでは、死亡率が上がっても不思議ではありません。その点で言えば、日本食は塩分などを調整しながら摂れば、健康的な食生活となります。ただし、今の若い人たちが外食中心の生活になっているため、彼らが老いたとき、今のような健康長寿・日本が保てているのか心配になります」

 最近は、日本食が世界で注目されている。とくに日本料理店や寿司店が人気で、各国で出店数がうなぎ登りで増え続けている。しかし、一方で日本国内を見れば、この半世紀ほどで農作物、食肉、加工食品など、外食すれば化学合成物質を多く使った“美味しいもの”が溢れ返っている。とくに子供たちの間では、以前はほとんどなかった喘息やアレルギー、アトピーなどの病気が増え続けており、断定はできないものの、その原因は大気汚染、水質汚染、電磁波汚染などの環境変化、そして何より、食生活の悪化によるものだと、専門家は口を揃える。
 「本来、食べ物は食べた人の体をいつくしみ、養うものであり、老化や病気を遠ざける妙薬的なもの。それがつまり『医食同源』ということ。大事にして欲しいものです」(同)

 もう一度、自分の食生活を見直してみよう。

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