葉加瀬マイ 2018年11月29日号

世の中おかしな事だらけ 三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』 第180回 新幹線ネットワーク

掲載日時 2016年07月01日 10時00分 [政治] / 掲載号 2016年7月7日号

 前回に引き続き、新幹線の話題である。

 筆者は最近、地方講演が激増し、週に何度も新幹線を利用している。ある週に至っては月曜日、水曜日、金曜日と仙台に出張する事態になり、3回も東北新幹線に乗った。仙台講演が「月・火・水」と連続してくれれば宿泊するのだが、飛び飛びの予定になってしまうと毎回、日帰りせざるを得ない。
 とはいえ、東京都民である筆者にとって仙台とは「気軽に日帰りできる街」なのである。新幹線で東京-仙台間が最短1時間32分で結ばれているため、筆者にとって仙台は「それほど遠くない市場」だ。すなわち、近場の商圏なのである。
 逆側から見ると、仙台のサービス業にとって、東京圏という世界最大のメガロポリスを標的市場と化すことが可能という話である。新幹線は地域と地域を結び付け、それぞれの商圏を拡大することで、サービス産業の発展を促進する(最も分かりやすいのが、観光サービスになる)。

 6月1日の安倍総理の会見を受け、全国的に「新幹線建設」の動きが盛り上がり始めた。
 秋田県の佐竹知事は、フル規格の奥羽新幹線(福島-秋田)と羽越新幹線(新青森-富山)の建設促進を求める「奥羽・羽越新幹線整備促進期成同盟」を、9月上旬に設立することを明らかにした。ちなみに、現行の秋田新幹線や山形新幹線は、実は新幹線ではない。福島-山形間、盛岡-秋田間は、「奥羽本線」など在来線の線路を走る「ミニ新幹線」なのだ。最高速度も時速130キロメートル程度にすぎない。
 新幹線の基本計画には、福島から山形を抜け、秋田に至る奥羽新幹線が存在している。さらに新青森から日本海沿いに走り、富山に至る羽越新幹線もある。羽越新幹線は日本の二つ目の国土軸を日本海側に構築する、いわゆる「日本海国土軸構想」上も極めて重要だ。

 政府の地震調査委員会は6月10日に、全国各地で今後30年内に震度6弱以上の大地震に見舞われる確率を示した2016年版の「全国地震動予測地図」を発表したのだが、太平洋側が軒並み上昇していた。茨城県から高知県に至る「太平洋ベルト地帯」において、今後30年間で震度6弱以上の地震が発生する確率は100%に近いと考えるべきである。
 いざ太平洋側で大地震が発生した際に、日本海側の「供給能力」で救援をしてもらうためにも、日本海国土軸構想は重要だ。日本海側に救援の意思があったとしても、「モノ」「ヒト」「技術」という経済力が蓄積されていない場合、どうにもならない。経済力とは、カネではない。モノやサービスを供給する力なのである。

 また、「山陰縦貫・超高速鉄道整備推進市町村会議」は、6月7日に「山陰新幹線の整備と北陸新幹線舞鶴ルートの実現」を決議した。北陸新幹線の大阪延伸ルートとして、舞鶴ルートが有力視されているのと連携する動きになる。
 北陸新幹線が「小浜-舞鶴-京都-新大阪」のルートで建設されれば、山陰新幹線は舞鶴から西に延ばしていくだけで済む。舞鶴ルートの場合、山陰地方が金沢、京都、新大阪と一本で結ばれることになり、経済波及効果は計り知れない。
 奥羽新幹線、羽越新幹線、山陰新幹線に加え、四国新幹線も動き始めた。四国経済連合会と四国商工会議所連合会、四国4県が、6月10日に四国新幹線建設に向けた政府予算の計上を求め、国土交通省や自民党に要望書を提出したのである。

 新幹線は昭和47年時点で計画されていた9000キロメートルのうち、整備が完了しているのは3割にすぎない。本来、奥羽新幹線も、羽越新幹線も、山陰新幹線も、四国新幹線も、とっくに開業していなければならなかったのだ。ところが、バブル崩壊後の「土建たたき」「公共事業たたき」により、わが国は地方経済発展のために不可欠な新幹線整備に予算を使えなくなっていった。
 そもそも、新幹線ほど費用対効果が高いインフラ整備は他にない。何しろダムや防波堤、一般道路などのインフラは、公共投資で建設したとしても、基本的には「料金」を徴収することができない。それに対し、新幹線は運賃収入を得ることが可能なのである。

 もっとも、それ以前に「公共」インフラに収益性を求める発想が異様ではある。確実に黒字になるならば、民間が建設するべきだ。「収益」が出るインフラ建設に政府が乗り出すなど、民業圧迫もいいところである。
 短期的には収益にならないかもしれない。とはいえ、地域や国家全体の経済成長のために不可欠であるからこそ、政府が公共投資でインフラを整備するのである。しかも、新幹線の場合は収益が出る。それにもかかわらず「新幹線を建設しても無駄」などと、抽象的なレトリックで整備新幹線を批判する連中が少なくない。

 また、新幹線を整備すると「東京一極集中が加速する」などと、無知蒙昧な主張をする者がいるが、そもそも東京一極集中が進行しているのは東京圏の「雇用創出力」が大きいためなのだ。新幹線整備により、地方が東京圏を「市場」「商圏」と化すことができれば、東京一極集中はむしろ止まる。
 東京圏を市場とすることで、地方のサービス産業において雇用が創出される。しかも、地方から東京に遊びに行くのにも短時間、という状況になれば、間違いなく東京一極集中は解消に向かう。

 いずれにせよ、今後の新幹線整備については国内マスコミから、
 「赤字になる新幹線は建設するな」
 「ストロー効果で東京に吸い上げられる」
 といった陳腐かつ「嘘」のレトリックで攻撃されることになるだろう。それに対し、政治家や「国民」が、いかに反論していくべきなのか。
 日本全体の安全保障強化、東京一極集中の解消、真の意味における「地方創生」実現のためにも、わが国は新幹線ネットワークを建設する必要があるという現実をぜひとも認識してほしい。

みつはし たかあき(経済評論家・作家)
1969年、熊本県生まれ。外資系企業を経て、中小企業診断士として独立。現在、気鋭の経済評論家として、分かりやすい経済評論が人気を集めている。

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