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やくみつるの「シネマ小言主義」 21世紀版「風と共に去りぬ」だ! 『ニュートン・ナイト/自由の旗をかかげた男』

掲載日時 2017年02月13日 16時00分 [エンタメ] / 掲載号 2017年2月16日号

やくみつるの「シネマ小言主義」 21世紀版「風と共に去りぬ」だ! 『ニュートン・ナイト/自由の旗をかかげた男』

 まさに21世紀の『風と共に去りぬ』だと思えたほど、壮大な「大河ドラマ」に仕上がっている本作。ただし、ビビアン・リーのようなヒロインは出てまいりません。
 これまで南北戦争時代のことはさんざん描かれてきたはずなのに、南と北以外の第三勢力「自由州」の設立を目指した人物がいたことは知りませんでした。しかも、肌の色、貧富の差、宗教や思想に関係なく、誰もが平等な世界を目指し、リンカーン大統領より先に奴隷解放を成し遂げた人物がいたにも関わらず、歴史の中に封印されてきたとは驚きです。
 トランプ大統領が口撃する人種は、主にメキシコなどのスパニッシュ系。黒人に対する差別発言はないですが、新閣僚は押しなべて白人ですし、白人優越主義なのは誰の目にも明らか。音を立てて世界が逆回転しつつある今、図らずも「アメリカの良心」を映すような本作が公開されるのは皮肉な気がします。

 さて、この映画が厚みのある本物感を醸し出しているのは、キャスト100人、エキストラ2800人、時代考証に則した衣装4000着。なるべく自然光をと、ろうそくや松明といった当時の光源だけで撮影するなど、監督がこだわりまくった結果です。
 そして、ちょっとややこしいのですが、南北戦争時代と、その80年後の主人公ニュートンの子孫の話も重層的に挟まってきます。
 それを見ると、黒人差別は南北戦争時代の昔話ではなく、今なお続くことを示唆していると分かります。
 映画の中で州選挙が行われるのですが、ニュートンが属する共和党はたったの2票。あとは全部捨てられていたのですが、不正選挙だって今も続いていると聞きます。
 しかし、150年後にはトランプ勝利で共和党政権が誕生するとは…って、共和党と民主党のイデオロギーの違いすら自分はよく分かってないんですがね。

 ところで、1939年製作の『風と共に去りぬ』ですが、自分が中学の頃、何度目かのリバイバルの際に、劇場で1人で見た思い出の映画。ハンパなく感銘を受けまして、すぐにサウンドトラックのLPレコードも買いました。75年以上も前の映画ですので、キャストは全員亡くなったかと思いきや、メラニー役の女優さんが100歳超えでご存命とか! 物語の中では短命だったのでちょっと意外でしたが、うれしいことです。
 最近、とくに分かりやすいアニメ映画ばかりがヒットしていますが、時にはこういうガツンと骨太な大作を見て、メリハリをつけてはいかがでしょうかね。

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■『ニュートン・ナイト/自由の旗をかかげた男』監督・製作・脚本/ゲイリー・ロス 出演/マシュー・マコノヒー、ググ・ンバータ=ロー、マハーシャラ・アリ、ケリー・ラッセル、クリストファー・ベリー他 配給/キノフィルムズ/木下グループ 2月4日(土)新宿武蔵野館 ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国公開。
 南北戦争による動乱の最中の1863年。ニュートン・ナイトは、戦死した甥の遺体を故郷のミシシッピ州ジョーンズ郡に届けようと、南部軍を脱走。故郷で農民から食料を奪う軍と衝突し追われる身となった彼は、身を隠した湿原で黒人の逃亡奴隷たちと出会い、友情を築く。そして、白人と黒人が一つになった反乱軍を結成。自由のために立ち上がる。

やくみつる:漫画家。新聞・雑誌に数多くの連載を持つ他、TV等のコメンテーターとしてもマルチに活躍。『情報ライブ ミヤネ屋」(日本テレビ系)、『みんなのニュース』(フジテレビ系)レギュラー出演中。

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