菜乃花 2018年10月04日号

【話題の1冊】 著者インタビュー 張江泰之 『人殺しの息子と呼ばれて』 KADOKAWA 1,500円(本体価格)

掲載日時 2018年09月02日 07時00分 [エンタメ] / 掲載号 2018年9月6日号

きっかけは本人からの攻撃的なクレームだった

――あまりの凄惨さに報道規制が敷かれていたという『北九州連続監禁殺人事件』。最初に、犯人の息子から連絡を受けたときの様子を教えてください。
張江 金曜プレミアムでこの事件を扱ったところ“クレーム電話”を掛けてきたのが彼でした。「ネット上で自分のことを、人殺しの息子だからろくでもないヤツに違いないと言われている。なぜ、あんな番組を放送したのか」とかなり攻撃的でしたね。その時は、正直、どうやってこのクレームを抑えようか、ばかりを考えていました。
 その後、やり取りを繰り返すうちに、彼は自分のこれまでの人生を誰かに聞いてほしいんじゃないかと思うようになりました。世の中には殺人犯の身内というだけで、苦しんでいる人がたくさんいます。もしかしたら、彼がそんな人たちの“代弁者”になれるかもしれないと思い、私の担当する番組『ザ・ノンフィクション』でインタビューすることにしたんです。

――放送後、日曜午後2時の番組であるにもかかわらず、10・0%という驚異的な視聴率を記録しましたね。
張江 正直、ここまで反響があるとは思いませんでした。放送前は「どうせ息子もクズなんだろ」といった、誹謗の声が吹き荒れるかもしれないと、ドキドキしていたのですが、結果は称賛の声ばかりでした。何の罪もない青年が犯人の息子というだけで、不遇な人生を送っている。そんな知られざる事実を知って感動した、という声を聞いて、日本人もまだまだ捨てたもんじゃないな、と思いました。

――実際に“彼”をどんな人物だと感じましたか?
張江 中学しか卒業しておらず、きちんとした教育を受けていなかったにもかかわらず、その発言は理路整然としていて、私の発言も一言一句すべて覚えているんです。こちらが曖昧なことを言おうものなら、逆に見透かされてしまう怖さがありましたね。しゃべりも上手で、相手の心理を読み取るのが得意だと思いました。ただ、人目を避けて生きてきたためか、人付き合いは苦手なようでした。

――本書の発売について、何か言っていましたか?
張江 本の売れ行きを気にしているようでしたね。本人はタイミングを見計らって世間に名乗り出たいと思っているんじゃないでしょうか。決して恵まれた境遇の中で生きてきたわけではありませんが「人のためになりたい、人助けをしたい」といつも口にしています。
 今、生きることに悩んでいる人がいたら、ぜひ、彼の声に耳を傾けてみてください。きっと力が湧いてくると思います。
_(聞き手/程原ケン)

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張江泰之(はりえ・やすゆき)
フジテレビ情報制作局情報企画開発センター専任局次長。1967年、北海道生まれ。'90年NHK入局。'05年退局後、フジテレビ入社。現在は『ザ・ノンフィクション』のチーフプロデューサー。

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