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プロフェッショナル巧の格言 第19回 福本清三(俳優) ハリウッドに認められた斬られ役一筋50年(3)

掲載日時 2014年07月06日 14時00分 [芸能] / 掲載号 2014年7月10日号

 斬られ役、殴られ役中心で歩んできた俳優人生。だが、そんな福本に、この夏ついにスポットライトがあたる。71歳にしての初の主演作『太秦ライムライト』が公開されるのだ。
 この映画はチャップリンの名作『ライムライト』がモチーフ。若い女優と彼女を支える道化師ならぬ老斬られ役との交流が、時代劇が衰退した太秦を舞台に哀切たっぷりに描かれている。時代劇のスターを目指す女優には新進の山本千尋(17)が抜擢され、松方弘樹、栗塚旭といった太秦ゆかりの俳優が“御馳走”で脇を固める、現場の熱気が伝わる作品に仕上がった。

 主演映画製作のきっかけは、やはり“立ち回り”だった。
 「以前、テレビに呼ばれたとき『昔見たチャップリンの倒れ方が印象に残っていて、それを倒れ方の演技に取り入れています』と言ったら、それを日本チャップリン協会の会長で、今回、脚本を書いてくれた大野(裕之)さんが見ていて連絡をくださり、そこからお付き合いが始まりました。『太秦〜』はそんな中から出てきた企画ですが、最初に話を聞いたときには他人事でした。私が主演なんて、そんなアホな、ですよ。長く役者をやってると、自分が主演のニンでないことぐらいわかります。そら、我々斬られ役悪役の中からでも、ピラニア軍団の川谷拓三君(故人)みたいな人も出てますが、普通はあり得ないことなんです。しかし、そこをぜひにと言われると…。やっぱり役者ですからね」

 『太秦ライムライト』は斬られ役・福本にあてて書かれた作品であり、文字通りの代表作だが、これまでがセリフの少ない斬られ役。さらに元来、話下手とあって、いざ撮影が始まると、多少の混乱もあった。
 「セリフが飛んでしまったり、脚本を変えてもらったり、本当に大変でした。それにしても、私なんかが主演なんて畏れ多いことです。スクリーンの隅っこでのたうち回っていたのが、ど真ん中で偉そうな顔してるんですから。ほんまによく務まったなと思います。これも皆さんのおかげです。好評ならば次回作? いや、それはないでしょ(笑)」

 今、時代劇を取り巻く状況は厳しい。多くの人員と製作費を必要とすることから、映画もテレビも製作数が激減。その影響は、役者の世界にも及んでいる。福本は映画、テレビに出演する一方で、東映京都撮影所の斬られ役集団『剣会』の代表として後進の指導にあたっているが、現在の会員数はわずか16名だ。
 「剣会は、昔は役者の親睦団体みたいなところもあったんですが、今は数が少なくなって、演技術としての立ち回りを保存し、伝えていくことが役目です。時代劇を志す若手俳優に、これはというのがいたらスカウトしていますが、最近はその若いのが少なくなってきました。理由ですか? 時代劇では食べていけないからです。仕事が少ないし、(東映の)社員でやっていた私らと違って、身分の保障もない。寂しい話ですが仕方ありません。でもこれで時代劇がなくなってしまうとは思えない。その意味で、今回の『太秦ライムライト』が時代劇を見直すきっかけになってくれたら、何かが変わるかもしれない。あの映画には、そんな夢も持っているのです。時代劇は必ず盛り返します。その日のために、私は命のある限り、斬られ続けますよ」

 映画の惹句ではないが『どこかで誰かが見ていてくれる』の心境であろう。夢が叶うことを祈りたい。

福本清三(ふくもと・せいぞう)
1943年兵庫県出身。15歳で東映京都撮影所に入所し大部屋俳優になる。時代劇を中心に数々のアクション映画やヤクザ映画にも出演。'02年にはハリウッド映画「ラストサムライ」でも斬られ役を披露。今夏、初の主演映画『太秦ライムライト』が公開。

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