〈男と女の性犯罪実録調書〉③あきらめの心境でセックス

官能・2020/07/16 00:00 / 掲載号 2020年7月23日号

 それから3週間後、長井の自宅に警察がやって来た。逮捕状を読み上げられ、いきなり手錠をかけられそうになったので、「事実と全然違う。あれを強姦と言っている時点で違う」と主張したが、「まァ、ええわ。話はあとで聞いてやる」と言われ、長井は親の目の前で手錠をかけられ、警察に連行された。

 長井は警察でセックスに至った経緯を説明したが、「髪の毛をつかんで暴行してるんだから強姦だ」と言われ、ろくに話を聞いてもらえず、8時間の取り調べを受けた上、「無理やりセックスの相手をさせ、そのときにケガを負わせたのは間違いありません」という調書にサインさせられた。

 一方、同様に逮捕された杉田は「あれは強姦じゃない。女の方から『入れてもいい』と言ったんだ」と説明したが、「長井はもう認めているぞ。なぜお前は言わんのだ」と言われ、同様に調書にサインさせられた。

 2人は検察庁でも取り調べを受けたが、最終的に明暗を分けたのは、「髪をつかんで引き倒し、脅迫文言を浴びせた」という行為に、杉田が加担していないことだった。そのときのことを杉田は「自分は車の中にいたので、何もしていない」と主張した。

 ただ、長井と美沙さんが黙って帰ってきて、長井が車を駐車場の端に移動させても、美沙さんが何も言わなかったので、「今からセックスが始まることを分かっていて、その気があるんだなと思った」というのだ。

 長井もまた、「髪の毛に指が引っ掛かったのかもしれないが、引き倒してもいないし、脅迫文言も浴びせていない」と否認した。

 結果的に長井だけが起訴されることになり、美沙さんの証人尋問が行われた。

「ふざけるなという感じです。500年ぐらい刑務所に入っていてもらいたい。セックスに応じたのは、早く解放されるためだった。2人ともヤクザかと思って怖かった。ホテルで助けを求めなかったのは、もし助けてもらえなかったら、長井たちに暴力を振るわれると思ったから。もうあきらめの心境だった」

 これを司法はどう判断したのか。

「性交を拒んでいた被害者が機嫌を悪くして降車し、髪をつかんで引き倒され、さらに腹を立てることはあっても、急に性交に応じることになったというのは不自然。性交の同意があったとは言えない」

 長井は納得せず、当然ながら控訴することになった。強姦罪から強制性交等罪になっても引き継がれている「暴行脅迫要件」は、知人同士だとモメることが多い。被害者支援団体からは撤廃を求められている。
(文中の登場人物はすべて仮名です)

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