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大韓航空“ナッツ”前副社長さらし首 韓国経済壊滅に庶民の怒り

掲載日時 2014年12月29日 12時00分 [社会] / 掲載号 2015年1月1・15日号

 『大韓航空』会長の長女、趙顕娥(チョ・ヒョナ)前副社長が、機内食のピーナッツの出し方がマニュアル通りでないと激昂し、離陸寸前の飛行機の出発時間を大幅に遅れさせた「ナッツリターン事件」。この事件に韓国国民の怒りの声が、どうにも鳴りやまない。
 韓国のメディア関係者がこう語る。
 「問題の趙氏は副社長を辞任したが、客室乗務員への暴行や口止め工作が暴露され、批判の声は高まるばかり。これには国土交通部(日本でいう国交省)も頭を抱え、大韓航空に20日間の運航停止か数億円の罰金を科すことを決定し、彼女を検察に告発せざるを得なくなった。そのため、趙氏は立件に怯え、今では5年以内の懲役刑もあり得るところまで追いつめられているのです」

 だが気になるのは、なぜ国民がこの事件に、かくも怒りを爆発させているのかという点だろう。
 実はそこには、同国が陥る悲惨な経済事情が色濃く反映しているのである。
 韓国経済に詳しいシンクタンク関係者が言う。
 「日々深刻さを増している経済不況が、今回の不祥事と微妙にリンクしているからです。というのも、韓国では大韓航空グループを含む10大財閥が国内総生産の約8割を握っている。ところが、経済はウォン高に襲われ大不況の嵐。屋台骨を支えるサムスングループでさえも例外ではなく、中国製やアイフォン6の激しい追随を受け、ドル箱商品のギャラクシー(スマートフォン)の売れ行きが急激に地盤沈下しているのです」

 その減収ぶりは凄まじい。今年10月に発表されたサムスン電子の'14年第3四半期決算では、営業利益が4兆605億ウォン(約4300億円)で前年同期比60%減。しかも、こうした状況は金融、石油関連、造船など全ての業種に見られ、軒並み業績に急ブレーキが掛かっているありさまなのだ。
 ただ、これだけなら「ナッツ事件」がここまで庶民の反感を買うことはなかったかもしれない。それを加速させたのには、この未曽有の経済不況下に財閥グループが講じたとんでもない手段が横たわっているのである。
 「その最大要因が、上場企業が始めた数万人規模の社員のクビ切り策なのです。これら企業のサラリーマンが危機的な年越しを迎えている最中に、当の財閥の娘がやりたい放題の浮世離れした事件を引き起こしたため、庶民の怒りが爆発したのです」(メディア関係者)

 実際、韓国メディアの中央日報が大企業300社の7-9月期の事業報告書を調査した結果、今年に入ってから9月までの間に2万7800人余りがリストラの憂き目にあっていたことが判明したという。
 例えば財閥系のハンファ生命では上半期に300人を削減。さらに年内までに700人を削減する方針という。しかも、これらはいずれも定年にはほど遠い、働き盛りの社員ばかりが対象となっているのだ。
 「一方、サムスン財閥系の三星生命もすでに1000人を削減。証券業界でも3000人余りが会社を去り、'08年の韓国金融危機以来、初めて業界従事者が4万人を切ったという。また、リストラの嵐は銀行界でも顕著で、650人を希望退職させることにした韓国シティ銀行に続き、他の都市銀行もゾクゾクと自主退職を検討しているのです」(同)

 ちなみに、これら企業では肩叩きに応じれば割増退職金が支払われるが、拒否すれば地方に飛ばされ退職金すら無くなってしまうため、大半が肩叩きに応じているのが実情なのである。
 韓国の大学講師が言う。
 「韓国では大企業に入れるのは、受験戦争に勝ち残った一握りの人間だけ。例えばサムスンは700倍の競争率。他の財閥系でも数百倍です。900点満点のTOEIC(世界共通の英語コミュニケーション力判定テスト)で、9割以上点を取らないと書類審査も通らない。そこまでして大企業に入社したのに、働き盛りを迎えた途端に肩叩きに遭い始めたとして、経済界には怨嗟の声が蔓延しているのです」

 もっとも、こうした大企業のサラリーマンたちは、ある程度の蓄えとスキルがあるからまだマシだ。
 酷いのは中小企業の従業員らで、「この調査結果にも反映されないままクビを切られ、路頭に迷うことになった労働者は10万人以上」(別のシンクタンク関係者)との声もあるほどなのだ。
 「加えて、韓国では大学を卒業しても正社員になれるのは5人に1人。あとは非正規雇用かバイト生活をしているのが実情です。また昨年、韓国銀行が発表した'12年度の『家計金融・福祉調査』によると、金融機関から融資を受けた家庭は全体の6割近くで、前年よりも3.1ポイント増加している。その25%余りが融資理由を『生活資金』と答えており、さらにその6割が『今後の返済が困難』と述べている。もはや庶民は青息吐息の状態なのです」(韓国の金融関係者)

 要は、大企業の社員から慎ましい暮らしぶりをする庶民までが不満を募らせているのだが、それが今回の「ナッツ事件」で爆発したのには、前段とも言える不祥事が存在するともいわれているのだ。
 韓国のマスコミ関係者がこう話す。
 「それが、財閥子弟によるハレンチ騒動の続発なのです。実は昨年には韓国保険大手のハンファグループ会長の次男が、大麻所持と使用を疑われたほど。また、別の財閥子弟たちは芸能人やその卵らを集めて、数百万円から数千万円規模の買春容疑疑惑で話題を集めたこともある。このやりたい放題のハレンチぶりが、庶民感情に油を注ぎ、『ナッツ事件』で一気に爆発したとみられているのです」

 今回の事件の決着次第では、今後さらに庶民から新たな火の手が上がる可能性も否めないのだ。

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