菜乃花 2018年10月04日号

森永卓郎の「経済“千夜一夜”物語」 年金崩壊が確実に

掲載日時 2016年03月30日 10時00分 [政治] / 掲載号 2016年4月7日号

 政府は3月11日、年金制度改革関連法案を閣議決定した。法案が成立すると、'18年度から物価下落時には適用されないマクロ経済スライドが繰り越しされ、物価上昇時にまとめて適用されることになる。
 マクロ経済スライドというのは、年金の支え手である現役世代が減ることと、平均寿命の伸長で受給者が増えることによる年金財政悪化を、年金給付水準を引き下げることで調整しようするものだ。'04年の年金制度改正で導入された。年金水準の削減は毎年1%程度だが、これまでマクロ経済スライドが発動されたのは、今年度のただ一度だけだ。他の年はデフレが続いていたため、発動が見送られてきたのだ。
 しかし、この法案が成立すると、デフレ下で見送られたマクロ経済スライドは累積され、物価上昇率がプラスになったとき一気に発動されることになる。例えば、3年間マクロ経済スライドが見送られたとして、その次の年に物価・賃金が3%上昇したとすると、マクロ経済スライドが3%分発動される。つまり、本来3%年金が改善されるはずが、年金の改善率はゼロとなり、実質3%の削減となるのだ。
 この制度の導入により、今後は平均すると毎年1%程度ずつ確実に実質年金が下がっていく。問題は、どこまで下がるのかということだ。

 厚生労働省は'14年6月に、年金制度の「財政検証」の結果を発表した。そこでは、経済成長率の前提が異なる8パターンの将来推計が示されており、ケースAからケースEの5つのケースは、将来的にも厚生年金の所得代替率50%が維持できるとされた。これはつまり、厚生年金の保険料を漏れなく納めていれば、現役世代の手取り収入の50%以上の年金を保障できますとしているのだ。
 しかし、これらの5つのケースに共通する前提がある。それは、「労働市場への参加が進む」ということだ。例えば、65〜69歳男性の労働力率は、現状49%だが、参加が進むケースでは67%と、3分の2の高齢者が働く前提になっているのだ。
 一方、高齢者の労働力率が現状と変わらないとしたケースFからケースHの場合では、所得代替率は、現状の62.3%が、最悪35〜37%まで低下する。これは、年金が実質的に44%もカットされていくことを意味する。

 今のままの年金制度を続けていれば、年金は半額に向かって確実に減っていく。もし、それが嫌だというなら、みんな70歳まで働いて、年金保険料を払い続けろということなのだ。
 これが安倍総理の提唱する「一億総活躍社会」の正体だ。今回、閣議決定された年金制度改正案は、70歳支給開始を国民に納得させるためのプレッシャーだろう。ひどいことを考えたものだ。
 政府が年金支給年齢を70歳に繰り延べたら、国民の反乱が起きてしまう。だから、年金を確実に下げていき、高齢者が音を上げたところで、「生活が苦しいんだったら支給開始年齢を遅らせましょう」と言いだすのだ。

 庶民の採りうる対抗策はたった一つしかないということになる。ただでさえ苦しい生活のなかから、老後の貯蓄をしておくことしかないのだ。

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