葉加瀬マイ 2018年11月29日号

やくみつるの「シネマ小言主義」 「あの頃に帰りたい」人に、お勧めの映画 『ナミヤ雑貨店の奇蹟』

掲載日時 2017年10月09日 15時00分 [エンタメ] / 掲載号 2017年10月12日号

やくみつるの「シネマ小言主義」 「あの頃に帰りたい」人に、お勧めの映画 『ナミヤ雑貨店の奇蹟』

 1980年と2012年が奇妙な接点を持ち、お互いの運命に影響を与え合っていくという、稀代のストーリーテラー東野圭吾のベストセラーを見事に映画化した本作。
 自分はこういう「時空のねじれ」系の作品を見ていますと、すぐに頭が混乱してしまうタチなため、置いていかれないようにちょっと緊張して見ました。
 一方、本作に登場する'12年に生きる少年たちは、「時空のねじれ」が起きているシチュエーションをあっさり受け入れる。疑い深い自分の場合は、たとえ現実に超常現象に遭遇したとしても、こんなに素直に受け入れられるものだろうかと。まあ、そうしないと話が前に進まないのですが…。

 さて、'80年。最近、このバブル前夜の頃の話が多いのですが、本作はもちろん、常に大昔のように描かれているのも受け入れがたい。ついこの間のことじゃないですか。でも若い人にとっては、バブルなんて、ファンタジー以外の何ものでもないのでしょうね。
 '80年に起きた象徴的な出来事として、「ジョン・レノンの死」が描かれていますが、自分もあのニュースを聞いた時のことをハッキリと覚えています。同じ日に地下鉄東西線で脱線事故があり、なぜか混ざって「ジョン・レノンが東西線の事故で死んだらしい」というフェイクニュースを大学近くの雀荘で聞き、非常に驚いた記憶があります。

 さて、『三丁目の夕日』ほどではないにしろ、まだまだ昭和が色濃いこの時代を描くのに、美術スタッフが微に入り細に入り小道具を作り込んでいます。
 私は細かいところまで気になり、検証したくなる性格ですので、「昭和の小道具コーディネーター」なる仕事がもしあれば、やってみたいですねぇ。
 本作の美術も非常によくできているんですが、ナミヤ雑貨店に集まる小学6年生くらいの子供が背負うランドセルがピカピカだったのは惜しかった。高学年まで使い込んで、ひしゃげた感じが欲しいところです。

 昭和の商店街のロケ地として大分県の豊後高田が選ばれたとパンフにありましたが、ここは昭和20〜30年代を彷彿させるレトロな街並みで町おこしをしている場所。でも、あと50年もしたら、その時代を懐かしむ人も消えて、商店街もろともなくなってしまうんじゃなかろうか。まあ、そんな先のことは、知ったこっちゃありませんが…。
 最後に流れる山下達郎作の主題歌。本作の途中でも様々な形で登場してきますが、やっぱり本人の声でしか伝わらない深い主題があるのだなと感じた次第です。

画像提供元:(C)2017「ナミヤ雑貨店の奇蹟」製作委員会

■『ナミヤ雑貨店の奇蹟』監督/廣木隆一
出演/山田涼介、村上虹郎、寛一郎、成海璃子、門脇麦、林遣都、鈴木梨央、山下リオ、手塚とおる、PANTA、萩原聖人、小林薫、吉行和子、尾野真千子、西田敏行
配給/KADOKAWA、松竹

 全国公開中。
 2012年。養護施設出身の敦也は、幼なじみの翔太や幸平と悪事を働き、夜を明かすために1軒の廃屋に逃げ込む。そこは、かつて町の人々から悩み相談を受けていた『ナミヤ雑貨店』だった。今は廃業しているはずの店内に、突然、シャッターの郵便受けに手紙が投げ込まれたことに気付く。なんとその手紙は1980年に書かれた悩み相談。3人は戸惑いながらも、当時の店主・浪矢雄治に代わって返事を書くことに。次第に、この雑貨店と浪矢の意外な秘密が明らかになっていく…。

やくみつる:漫画家。新聞・雑誌に数多くの連載を持つ他、TV等のコメンテーターとしてもマルチに活躍。『情報ライブ ミヤネ屋」(日本テレビ系)、『みんなのニュース』(フジテレビ系)レギュラー出演中。

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