〈男と女の性犯罪実録調書〉③隠し持った包丁で男を刺殺

官能・2020/04/02 00:00 / 掲載号 2020年4月9日号

 ところが、翌日にメールしても返信がなかった。不安になって、再びジャック宅を訪れた。部屋の中でジャックを待っていると、ジャックが妻と電話で話しながら帰ってきた。恵令奈の存在に気付き、慌てて電話を切った。
「何しに来たの?」

 明らかに昨日とは態度が変わっていた。
「朝から連絡しても、何も返事がないから、不安になって来たのよ」
「その件なら、上司にもう連絡してはいけないと言われたんだ。別れよう」
「なぜ…」

 恵令奈はショックを受けた。そのとき、突然、ジャックの上司と同僚の男が訪ねてきた。
「ジャックの奥さんから様子を見に行くように言われて来た。今すぐ出て行け」
「誰なの、あなたは?」
「ジャックの上司だ」
「私たちのプライベートの問題でしょ」
「それならあと5分間だけ話し合いの時間をやろう」

 上司は出て行った。部屋にはジャックと2人だけが残された。これはどういうことか。もしかしたら、ジャックは私のことを悪く言っていたのではないか。そうでなければ、あの上司の態度はあり得ない。なぜ私だけが悪者にされなければならないのか。恵令奈はパニックになり、怒りの限界点を超えた。

 カバンの中に隠し持っていた包丁で唐突にジャックの首を刺した。その悲鳴を聞きつけて、上司らが飛び込んできた。恵令奈はその場で取り押さえられた。ジャックは病院に運ばれたが、出血多量で死亡した。
「夢を叶えてワーキング・ホリデーでイギリスに行ったのに『寂しいから帰ってきてほしい』と言われ、志半ばで帰ることになった。結婚していたことを隠して、ずっと騙していた。ジャックの上司に『あなたはもうここにいられない。別れなければならない』と言われ、何かが切れてしまった」

 愛憎事件が起こる背景は世界共通らしい。裁判所は「交際相手に別れ話を告げられ、精神的に追い詰められて犯行に及んだ」と断罪し、恵令奈に懲役15年を言い渡した。
(文中の登場人物はすべて仮名です)

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