葉加瀬マイ 2018年11月29日号

話題の1冊 著者インタビュー 高橋源一郎 『民主主義ってなんだ?』 河出書房新社 1,200円(本体価格)

掲載日時 2015年11月22日 16時00分 [エンタメ] / 掲載号 2015年11月26日号

 −−SEALDs(シールズ)のデモが話題になりました。高橋さんの学生時代の頃とどのような違いがありますか?

 高橋 シールズ諸君の運動と、僕が学生だった頃の運動との違いはたくさんあります。一番大きな違いは、彼らの運動が「個人」の集まりであること。一方、僕たちの頃の運動は、結局のところ何らかの「組織」によるものだった。もう一つは彼らの運動が今の生活を守る「生活保守的」なものであるのに対して、僕たちのそれは、生活とはかけ離れたところで「社会全体を変える」ことに一足飛びに向かっていったことでしょう。どちらにも一長一短がありますが、社会運動はその社会にとって「必然」の運動でもあります。彼らの運動は、現在の社会が要請している「形」をとっていると思います。

 −−国会で意見陳述をした奥田愛基さんは、高橋さんのゼミの学生だそうですが、どのような生徒でしたか?

 高橋 本書でも書きましたが、奥田くんとは大学入試の際の面接で出会ったのが最初です。大抵のというか、ほぼすべての受験生が「こうすれば面接に通る」と「社会」が教えてくれた「形」をとろうとしているのに、奥田くんはそんなことに無頓着でした。そのことが強く印象に残っていますね。その後、入学してからゼミや授業を聴講してくれましたが、どのようなときでも「自由」さを感じることができました。入学してくる学生は、社会に「洗脳」されて、おとなしくなっていますが、彼は違っていましたね。「知性」というものは、知識の量ではなく、何でも受け入れることができる能力だとするなら、最初からきわめて「知性的」だったといえるでしょう。

 −−SEALDsの活動には一部から否定的な意見も出ています。どのように思われますか?

 高橋 批判はいろいろあるようです。学生中心とはいえ、'60年、'70年安保に比べてたくさんの学生を動員しているわけではないとか、一過性のものですぐに消費されてしまうだろうとか、ラップ調のコールについていけないとか、既成の政党や社会運動と親しすぎるとか、例を挙げればキリがありません。当たっている批判もあれば誹謗、中傷もあります。そもそも、どんな社会運動も万全であったり完全であったりするはずがありません。現在進行形の彼らの運動の欠陥をあげつらっても、意味はあまりないように思います。少なくとも過去のどんな運動よりも、批判に耳を傾けようとしていることこそ評価すべきでしょう。
(聞き手:程原ケン)

高橋源一郎(たかはし げんいちろう)
1951年生まれ。作家、明治学院大学国際学部教授。'81年『さようなら、ギャングたち』で第4回群像新人長編小説賞優秀作を受賞。朝日新聞で『論壇時評』を連載中。

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