問われる柔道の安全性 中学武道必修化で死亡事故が増える!?

社会・2011/06/15 11:00 / 掲載号 2011年6月16日号

 来年度から実施される中学での武道必修化。柔道・剣道・相撲のうちいずれかを、各校が設備等の事情に合わせて選択するのだが、なかでも柔道は大きな課題を抱えているようだ。
 「指導中の死亡事故が後を絶たないんです。武道では日本独特の根性論が優先され、幼い子どもたちにも、その精神を教え込むために無理をさせるのが原因です」(スポーツライター)

 昨年3月、柔道指導中の事故撲滅を目指して『全国柔道事故被害者の会』が設立された。同会によると、実際に過去27年間で110人を超える子どもたちが、柔道の授業や部活動が原因で命を落としているという。
 この数字は、他のスポーツに比べて明らかに突出している。しかも、「日本では柔道で死亡事故が起きても誰も責任を取らない」(被害者の会関係者)というのだ。

 先日、こうした状況を憂慮した司法判断も下されて話題になっている。
 昨年11月、大阪市此花区の柔道教室で起こった小学1年生男児の死亡事故について、大阪区検が5月17日、柔道指導者(36)を業務上過失致死罪で略式起訴した。ところが、翌18日、大阪簡裁の立川唱寛裁判官がこの請求を認めず正式裁判を開くと決めたのである。
 「検察側の略式起訴が退けられるのは異例のこと。過去の同様の事故において、民事ではなく刑事裁判が行われるのも初めてです」(全国紙記者)

 被害者の会では、ホームページに〈事故に至った経緯が裁判の場で明らかにされる事、そして指導者の責任の有無が追及される事は、同様の事故再発防止のためにも非常に大きな意味を持つことだと思います〉とのコメントを掲載。さらに、中学での武道必修化についても問題点を指摘している。
 現職教員からアンケートを募ったところ、「講習会などで実技指導を受けて有段者(黒帯)となったが、柔道の実戦経験はほとんどなく、教えるのが怖い」との回答が多く見られたというのだ。
 格闘技未経験者の教員が、簡単な講習を受けただけの“インスタント指導者”になれば、これまで以上に死亡事故が増える可能性も否定できない。
 これに対し、国や(財)全日本柔道連盟も「指導者の技量および安全に対する認識の向上」に取り組んでいるというが、「柔道指導の盛んな諸外国では、死亡事故はゼロに等しい」(前出の被害者の会関係者)とされるだけに、お家芸の安全性が問われている。

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