〈男と女の性犯罪実録調書〉③何食わぬ顔で“遺族”を装う

官能・2020/06/11 00:00 / 掲載号 2020年6月18日号

 事件当日、井上は仕事後に吸い寄せられるように友美さんの住むマンションに向かった。彼女も失意のどん底にいるだろうか。そこで壁に耳を当てると、寺島と楽しげに話す電話の内容を聞いてしまった。
「好きよ。愛してる。あなたの考えることはよく分かるけど、井上の考えることはよく分からなかったわ」

 寺島に対する愛の言葉と自分を罵るような言葉。聞いたこともない楽しそうな笑い声。はらわたが煮えくり返るほど怒った井上は、「殺してやる」と決意した。

 いったん自宅に戻り、レンタカーを手配。リネン袋とダンベルを車に積み、途中のホームセンターでロープを購入。「荷物を取りに来た」と言ってドアを開けさせ、押し入るや一気に首を絞めて殺害したのだ。

 友美さんの家出を装うために、部屋から携帯電話、現金、バッグ、靴、母子手帳などを持ち出した。

 その上で実姉に、友美さんの風俗勤務を両親に暴露してくれるよう依頼した。事情を知らなかった実姉は「友美さんも風俗嬢だったのに、なぜ弟が離婚後の家賃まで支払わされるのか」などと電話。その後、絶妙なタイミングで友美さんの携帯を使い、〈風俗で働いていてごめんなさい。もう顔を合わせられない〉などとメール。自分の携帯にも両親に暴露したことを激怒するかのようなメールを送り、それを見せることで犯行を隠蔽していた。

 井上はリネン袋に詰めた友美さんの遺体を港湾の防波堤に運び、ダンベル2個をくくりつけて海中に投棄した。友美さんの両親とはその後も連絡を取り合い、心当たりのある場所を一緒に捜すなど、何食わぬ顔で“遺族”を装っていた。

 それから3週間後、袋詰めされた妊婦の遺体が発見されたというニュースを見ると、前妻と子供たちが住む街にレンタカーで逃亡。前妻に犯行を告白し、出頭を勧められた。友美さんの両親は井上が逮捕されても、「何かの間違いじゃないのか」と信じないほどだった。

 井上は懲役20年を言い渡された。既成事実で他の異性関係を断ち切らせようとしても、愛情を勝ち取ったことにはならないのだ。
(文中の登場人物はすべて仮名です)

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