菜乃花 2018年10月04日号

本好きリビドー(129)

掲載日時 2016年11月12日 18時00分 [エンタメ] / 掲載号 2016年11月17日号

◎快楽の1冊
『十二人の死にたい子どもたち』 冲方丁 文藝春秋 1550円(本体価格)

 吉川英治文学新人賞、山田風太郎賞などを得てきた作者による初の現代長篇ミステリーだ。死の背後に隠れている謎を順序立てて解明していくストーリーはこのジャンルの基本であり、そういうパターンを本作も踏襲している。と同時に、実に読み応えのある議論小説にもなっている。タイトルからも分かる通り、12人の少年少女たちが、ひたすら議論を重ね、謎の解明を目指していくのだ。皆が10代で誰もが主役であり脇役である。
 廃業したとある総合病院。建物は映像製作会社に買われたが、本格的な改装工事には至っておらず、廃虚状態だ。とはいえ、荒れ果てているわけではなく、病院時代の名残もある。そこに子どもたちが集まってくる。目的は集団安楽死だ。発案者の少年がネットで希望者を募ったのである。なので、それぞれが初対面。地下の部屋には12台のベッドや練炭が用意されている。そこの部屋が集合場所だ。
 ところが奇妙なことに、あらかじめ決められていたメンバーとは別の少年が集合前からベッドに横たわっていた。すでに死んでいるようだ。いったい彼は何者なのか。自殺なのか、いや誰かに殺されたのか。12人の間で憶測が飛び交い、議論を開始する。ディスカッションのダイナミズムを存分に堪能できる。これに異論はなかろうと思うが、子どもは純粋ゆえに感情の爆発、攻撃性にも忠実である。ただ10歳に満たない子どもはまだ自我が未熟だ。これが10代に入ると個々人の性格が固まってくる。辛辣に会話で攻撃し合う様の生々しさが、本書最大の読みどころだ。
 キャラクターも自殺願望に至った動機もそれぞれである。ほかに人気のない建物の中、という閉塞感がなおさら議論を白熱させる。加えて現実の子どもたちの抱える心の問題が盛り込まれており、リアルな社会性もかなりの魅力だ。
(中辻理夫/文芸評論家)

【昇天の1冊】
 可愛過ぎる“男の娘”大島薫。テレビなどでご覧になった読者もいるだろう。外見は本当に女のコだが、実は女装した男性。性転換手術もしていなければ、女性ホルモン投与などの治療も受けていない。
 カラダは正真正銘の男性だけに、ペニスは勃起し、射精もする。そんな“彼女”が書き下ろした性の教科書『セックスよりも気持ちイイこと』(マイウェイ出版/1389円+税)は、男の知られざる性感やさまざまなセックス法が記されていて誠に興味深い。
 「男だって乳首でイケる」
 つまりオナニーするように肉棒をシゴかなくても、乳首を愛撫するだけで射精に至ることがある。
 また「前立腺を開発し、アナルをイジられるだけでイケるコツとは?」「人間にも発情期がある以上、男にも生理はある」など、これまで誰にも聞くことができなかった禁断の男の体の秘密が、これでもかとつづられている。
 “彼女”は同性(男)ともセックスできる。そうした経験がある人だけに、女との性交では知ることのできない、あらゆる「気持ちのイイこと」を伝授できるのだ。
 いや、何もゲイセックスを体験するべきだと推奨しているワケではない。
 男の性とはこれだけ深淵なモノなのだから、男女間のセックスに自分の経験を応用してみれば、未知の世界を知ることも可能…と提案しているのである。
 一度入り込んでしまったなら抜け出せなくなりそうな、危険な匂いのする1冊だ。
(小林明/編集プロダクション『ディラナダチ』代表)

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