菜乃花 2018年10月04日号

話題の1冊 著者インタビュー 岩木一麻 『がん消滅の罠 完全寛解の謎』 宝島社 1,380円(本体価格)

掲載日時 2017年05月08日 10時00分 [エンタメ] / 掲載号 2017年5月11・18日合併号

 ――がん研究をしていたそうですが、がんを題材にミステリーを書こうとしたきっかけはなんですか?

 岩木 今は日本人の2人に1人ががんになりますが、医学の進歩により「がんと共に生きる時代」になりつつあります。最近発表された10年生存率は約60%で、これは10年以上前に治療を開始した人の結果ですから、最近治療を開始した患者さんではもっと高くなっていると考えられています。しかし、多くの人は「がん=死」という強いイメージを持っていて、そのことが、がんと共生する社会を実現する妨げになっていると感じていました。ミステリー小説の核に「末期がんの消滅」という起こりにくい出来事を据えることで、がん治療の現状について多くの人に興味を持ってもらえるのでは、と考えて執筆しました。多くの方から「分かりやすかった」「がんについて自然に学ぶことができた」という感想を頂戴しています。がん患者さんからも「他人事ではないので、読んで勉強してほしい」と言っていただき、執筆した甲斐があったと感じています。

 ――「がん完全寛解のトリック」はどんな時に思いついたのでしょうか?

 岩木 それぞれのトリックは研究所時代に研究をしていた時や、現在勤務している出版社で業務を通して得た情報をベースに考えました。勤務先では最新の医学や科学の情報に常に触れていますので、平日の業務は執筆のためのインプットとしてとても大切です。休日はそうして得た情報を元に、それらのトリックを物語に配置していきます。それぞれのトリックが最適なタイミングで物語の中に登場するように、何度も考え直しました。この作業は「神経細胞同士が繋がりを強めたり弱めたりしながら神経回路を形成するプロセス」に似ているのではないかと思います。結果として、トリック同士を登場人物の運命と上手く関連付けることができて、多くの方に驚いていただけたのではないでしょうか。

 ――発売1カ月で16万部突破と大好評です。今後も医療系ミステリーを書いていく予定でしょうか?

 岩木 疾患を含む社会が抱える問題の中には、あまり理解されていないものがまだまだあります。これからも医療ミステリーや科学ミステリーを書き続けることで、そういった問題について考えるきっかけになる小説を生み出していきたいと考えています。次回作では「バイオテロ」を題材にする予定ですが、これまで描かれてきたバイオテロとは全く違う展開と結末を用意できそうですので、ご期待ください。
(聞き手/程原ケン)

岩木一麻(いわき・かずま)
1976年、埼玉県生まれ。千葉県在住。神戸大学大学院自然科学研究科修了。国立がん研究センター、放射線医学総合研究所で研究に従事。現在、医療系出版社に勤務。

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