菜乃花 2018年10月04日号

話題の1冊 著者インタビュー 田崎健太 『電通とFIFA』 光文社 760円(本体価格)

掲載日時 2016年06月26日 18時00分 [エンタメ] / 掲載号 2016年6月30日号

 −−サッカー界が商業化された時代から現在までを描いてみて、あらためてどういう感想を持ちましたか?

 田崎 サッカービジネス草創期は、若い人たちのいろんなアイデアで変わる面白い世界だったんだな、と思いましたね。現在は組織が全面に出て、みんな駒の1個になっていますが、当時は個人が目立っていた。そうした時代へのノスタルジーもありますね。

 −−FIFA(国際サッカー連盟)の元会長であるアベランジェや、日本人では現在の電通顧問・高橋治之さんが描かれています。彼らの功績とは?

 田崎 1974年、ヨーロッパ出身者以外で初めてFIFA会長に就任したアベランジェは、それまでの貴族的社会の有志の集まりのような組織に、企業スポンサーを募り、放映権の販売などを通し、サッカー界に金が流れ込む仕組みをつくった人物です。当時、企業スポンサーにはちょうど世界に打って出る時期だった日本企業は外せなかった。電通の社員だった高橋さんは、FIFAのマーケティングを一手に引き受ける会社「ISL」をアディダスの創立者の息子、ホルスト・ダスラーと設立しました。
 アベランジェはISLの集めたお金を背景に、アジアやアフリカをはじめ世界中にサッカーを広めました。彼を批判する人は多いですが、サッカーを世界に広めたという功績については評価しないといけない。
 また、腐敗自体は最近の問題ではなく、ホルスト・ダスラーが、旅費として1000〜2000ドルを渡すことは昔からありました。
 ただ、アベランジェが会長だった後半、90年代からテレビ放映権料が莫大になり、歯車が狂い始めた。

 −−巨額のサッカー利権に対し、昨年5月、ついに当局のメスが入りました。

 田崎 商業化したサッカー界で、恩恵を受けた国の一つは日本なんです。日本にはJリーグが発足し、ワールドカップに出場し、開催もできるようになった。また、多くの日本人プレーヤーがヨーロッパで活躍するなど、一大産業となった日本のサッカービジネスで食べている人も多くいます。
 しかし、FIFAに関する報道はどうしても欧米発のニュースになってしまい、その中には電通がすっぽりと抜けている。書かれていても電通が「悪」や「悪の代理人」と描かれている。でも、僕はそうした描き方に違和感があったし、日本人だからこそFIFAと電通の関係についてきちんと描かなければならないと。
 この本には、ピッチの中が一切出てきません。政治や経済と同じく、スポーツも金と権力にいろんな人が絡み人間ドラマが楽しめると思うので、手に取っていただけるとうれしいですね。
(聞き手/本多カツヒロ)

田崎健太(たざきけんた)
ノンフィクション作家。1968年3月13日京都府生まれ。著書に『真説・長州力 1951-2015』(集英社インターナショナル)、『球童 伊良部秀輝伝』(講談社)など多数。

関連タグ:著者インタビュー

エンタメ新着記事

» もっと見る

話題の1冊 著者インタビュー 田崎健太 『電通とFIFA』 光文社 760円(本体価格)

Close

マダムとおしゃべり館

▲ PAGE TOP