菜乃花 2018年10月04日号

東京大停電 首都直下大地震で電力供給ストップの地獄絵図

掲載日時 2016年10月28日 10時00分 [社会] / 掲載号 2016年11月3日号

 「電力がストップすると、あっという間に都市機能がマヒします。非常用電源が準備されていても、やがてそれは尽き、そこから本当のマヒが始まるのです」
 こう語るのは、防災ジャーナリストの渡辺実氏だ。

 10月12日、都心から遠く離れた送電ケーブル火災の影響で、東京都11区、約58万6000軒が停電に陥った。出火は午後2時45分ごろ、埼玉県新座市野火止の東京電力の地下施設で発生。地下約6.5メートルにあるトンネル状の“洞道”と呼ばれる施設で、新座変電所から練馬変電所と豊島変電所に結ぶ、送電ケーブルの分岐点手前で発火したという。
 「都心まで伸びる2系統の送電路で起きたトラブルだったため、重大な結果を招いた。先に火災が起きたのは練馬へのルートで、練馬変電所については10分程度で別回線からの送電が行われ復旧。しかし、その直後に起きた豊島変電所に向かう送電線の火災で、停電範囲が広がってしまった」(全国紙社会部関係者)
 原因は、ケーブルの老朽化だった。事故後、東京電力の発表により、今回出火したものと同タイプのケーブルで敷設から35年以上が経過したものが約7割、中には60年近く経っていたものもあったことが判明。点検も目視のみだったというから、素人目に見ても手抜きを疑いたくなる。

 それにしても、たった1カ所の送電ケーブルの火災で今回のような停電が起きると、“発生秒読み”とも言われる関東直下型の巨大地震直後のパニックを想像せずにはいられない。
 「電力が断たれると都市機能が100%ストップすることを改めて思い知らされた。首都直下型地震が発生すると、今回のような事態では済みません」(前出・渡辺氏)

 例えば、病院にとって電力はまさに命綱だ。
 「人工呼吸器や患者監視装置、輸液ポンプは、停止すると生命に関わる。そのため、ほとんどの機器自体にバッテリーが内蔵されています。停電になると自動的にこの内蔵バッテリーで作動しますが、その時間は10分程度から数時間と、機種により異なるのです」(医療ライター)

 先の停電事故の際にも、練馬区内の病院では一時、手術の開始を見合わせたほどだった。
 「この病院の医療器具は自家発電で動くようになっていましたが、何しろ3時間しかもたない。幸い5分後には復旧して手術を開始することができたそうですが、停電が長時間にわたる場合は中止せざるを得なくなる。都内で最悪のケースに耐えられる病院が、いったいどれくらいあるか。しかも、直下型地震による停電の場合、ただでさえ負傷者で各病院は大混乱になっていますからね」(同)

 エレベーターの中も怖い。2006年に東京都防災会議が出した被害想定では、M7.3の地震が東京湾北部を震源として発生すると、都内のエレベーター約14万5000台のうち、約9200台で“閉じ込め事故”が発生するとしている。
 「ハイテクビルのエレベーターの場合は、中央コンピューターで運転を制御するため、非常口が外からしか解錠できず救助を待つしかない。保守員が駆けつけ現場の状態を確認してから、エレベーターのブレーキを開放し、箱を移動させた上で外部から扉を開け救出することになる。この間、外部と遮断された人たちの不安は極限状態にあり、パニック障害を引き起こす場合もある」(前出・全国紙記者)

 一方、地震が発生した場合、地下は地上と比べ揺れが小さく安全と言われるが、実際はどうか。
 「確かに、東日本大震災の時、地上の鉄道は駅や電柱、橋脚などで多数の損壊が出ましたが、宮城県仙台市を走る地下鉄などは大きな被害がほとんどなかった。とはいえ、地下鉄が地震に強いというのも程度の問題。阪神・淡路大震災では、神戸高速鉄道の大開駅が壊滅的な被害を受け、地上の国道まで陥没した。もし列車が進入していれば、さらなる大惨事を呼んでいました」(地元記者)

 地下鉄の施設は緊急時に備え、停電が発生した際に予備電源を作動させることが義務づけられている。
 「最低限の明かりを確保するという考え方があるわけです。ただし、非常電源のバッテリーは、30分で切れるそうです」(前出・渡辺氏)

 地上は帰宅困難者がひしめき合っているため、出口にたどりついても簡単に外へ出ることはできない。
 「そうこうしているうちに予備電源も停止し、構内は完全に停電になる。地下鉄は空調設備のほか、電車が走ることで空気を押し出し、トンネル内の空気を循環させている。そのため、停電し電車までも止まってしまうと空気の循環が滞り、二酸化炭素の濃度が一気に上昇してしまうのです」(前出・全国紙記者)

 神戸交通局が行った実験によれば、ラッシュ時に地下鉄の空調が止まった場合、二酸化炭素濃度はわずか1分間で標準時の760PPMから843PPMに上昇することが分かっている。敏感な人であれば1000PPMを超えると思考力が低下し始めるという。
 地震そのものはもちろん、暗闇の覚悟も必要だ。

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