〈男と女の性犯罪実録調書〉③「レイプじゃないと思ってる」

官能・2020/01/23 00:00 / 掲載号 2020年1月30日号

 松本は大好きな女性とセックスできたことに対する満足感に浸っていた。
「もう1回やりませんか」
「ダメ。明日はバイトがあって、朝が早いから」
「じゃあ、また会ってくれる日を決めて下さい」
「えっ?」
「決めてくれないと、服を返しませんよ」

 やむなく美帆さんは再会の約束はしたが、「最近、忙しいので、まだ日にちまでは分からない」と言ってごまかした。
「駐輪場まで送りますよ」
「もう車には乗らない」

 美帆さんが断ったので、大学の図書館まで2人で歩いていくことになった。

 美帆さんは250㏄のバイクにまたがり、「松本君も就職頑張ってね」と言って去って行った。

 だが、その日を境に美帆さんからLINEが来なくなった。美帆さんはレイプされてから2日後、性暴力支援センターに相談し、警察に通報していたのだ。

 それから2カ月後の朝、松本のアパートに4人の捜査員が訪れた。松本は令状を見せられ、パトカーに乗せられた。
「原美帆さんに強制性交したよな?」
「えっ、してません」
「トボけるな。逮捕状を読み上げるぞ」

 松本の事件は新聞で報道され、松本の両親は何とか被害者と示談しようと、私選弁護人を付けた。
「今回の件は示談にしてもらって、起訴猶予にしてもらうしかない。裁判が始まったとしても、示談だけは成立させて、執行猶予を付けてもらうしかない」
「ちょっと待って下さい。僕はレイプじゃないと思っているんですよ。暴行や脅迫を加えた覚えはありません。確かに彼女は『もっとして』とかは言わなかったんで、積極的とは言い難いものでしたが…」
「イヤがっているとは思わなかったのか?」
「しぶしぶながら、応じてくれたと思っていました。『コンドームを着けて』と言っていましたし。僕は彼女のことがどうしようもなく好きだったので、『好きだ』『好きだ』と言い続ければ、いつか好きになってくれると思っていました」

 嫌よ嫌よも好きのうちと昔から言うが、現行法が規定している強制性交の「暴行脅迫要件」は、知人同士で起こると立証が難しい。

 女性は、レイプされたくない相手の家に入るべきではない。車に乗ってもダメだ。さもないと、こんな露骨なレイプ事件でも「合意の上だった」と認定されてしまう可能性が高いのだ。

 事実、松本は大学をやめることもなく、保釈が認められ、公判のときだけ出頭している。このまま無罪判決が出るかもしれない。
(文中の登場人物はすべて仮名です)

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