中川祐子 2019年1月31日号

無償化したら全国最多…絵に描いたモチになりかねない待機児童撲滅策

掲載日時 2019年01月08日 22時10分 [社会]

無償化したら全国最多…絵に描いたモチになりかねない待機児童撲滅策
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 2019年10月から始まる幼児教育・保育の無償化策では「待機児童」は減らないことが分かった。

 16年度から独自に無償化を先行させた兵庫県明石市では待機児童が急増し、調査対象の自治体では全国最多になった。どうしてこうなるのか。

 同市は所得制限を設けず、第2子以降の保育料無償化(0〜5歳児対象)を独自に開始し、無償化による保育所へのニーズ増をにらんで、無償化前の約3倍にあたる約15億円をかけて保育所を整備し、17年4月には約800人分の定員を増やした。ところが、入所希望者が予測を大きく上回ったのだ。

 「無償化しても希望者全員が入れなくては、不公平感が強まるだけです。実際『働いて収入を得た分が保育料に回って、負担増にしかならなかった。不公平です』とこぼす保護者も多いですよ」(明石市を取材した育児ライター)

 無償化と並ぶ「待機児童対策」が、内閣府主導で16年4月からスタートした「企業主導型保育」だ。同制度は、《企業が従業員の子どもたちを預かる保育所を新たに開設した場合や、保護者の勤務先が企業主導型保育施設と契約した場合などに、内閣府から認定を受ければ、認可保育所並みの助成金が交付される制度。直近の16年度末時点で、助成が決定しているのは全国で871拠点》となっている。この事業の助成金額は、例えば東京23区内の定員12人の施設(保育士比率50%、11時間開所)であれば、一施設あたり年間約2600万円が基本額として支給され、加えて0歳児保育を行えば、1人あたり月約30万円、病児保育で年約534万円、賃借料で年約228万円などの手厚い加算がある。

 開園に際しての内装工事費用もかかる費用の4分の3(最大8000万円)が助成される。こうした助成金の原資は、企業が厚生年金から支払う拠出金だ。

 こうした莫大な助成金が、受託事業者の持つ1園ごとに会計化、つまり懐に入る。その中から園に委託費を支払うことになるから、委託費の支払いに細工を施せば、受託事業者の懐は潤うことになる。認可外保育園は、補助金収入がほとんどない上、月ごとに収入も一定ではないから、受託事業者から安定的に委託費が支払われるだけでも経営が安定する。保育士の給料も安定し万々歳と思うが、実はそうではないのだ。

 企業主導型保育事業で助成の対象となるのは、16年4月1日以降に新たに園を開設した場合のみである。《既存の保育園を廃止して、新園に振り替えた場合や園を移転、建て替えた場合は対象にならず、「助成金の返還」になることもあり得ますのでご注意願います。――内閣府・助成申請、運営にあたっての留意事項(17年度)》とある。

 にもかかわらず、既存の認可外保育園の園児と保育士を新施設に移管させ、「空」になった旧施設を何のかんのと理屈をつけ、一定期間存続させることで、企業主導型保育施設を新設したかのように見せて助成を受けている受託事業者があるという。

 「助成を決定する段階で見抜けないこの制度にも問題がある。その原因は、認可外保育と企業主導型保育の管轄が異なることにあります。新施設の助成決定やその後の監査などを担うのは、企業主導型保育の助成を担当する内閣府の外郭団体である『児童育成協会』です。一方、旧施設の認可外保育施設の立入調査を担当するのは、園が所在する自治体です。『児童育成協会』と『自治体』の両者が児童と保育士の数を突き合わせれば、不正は見抜けたはずで、役所の縦割り体質の弊害が出ているわけです」(同・ライター)

 明石市の需要予測の大甘ぶりといい、新制度の縦割り行政の弊害といい、制度化して終わりではなく、その後の検証を行わなければ絵に描いた餅にしかならない。


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