菜乃花 2018年10月04日号

本好きリビドー(151)

掲載日時 2017年04月22日 18時00分 [エンタメ] / 掲載号 2017年4月27日号

◎快楽の1冊
『果鋭』 黒川博行 幻冬舎 1800円(本体価格)

 黒川博行といえば『疫病神』シリーズが有名だが、もう一方で、不祥事を起こして大阪府警をクビになったかつての同僚、堀口と伊達の大阪府警元マル暴担当刑事コンビが活躍するバディ物も人気だ。本書『果鋭』は『悪果』『繚乱』に続くシリーズ第3作目だが、前2作を読んでいない人でも十分物語を楽しむことができるように書かれているので、心配はご無用。
 そんな2人の今回のターゲットは、20兆円産業ともいわれるパチンコ業界。ホールオーナー新井がゴト師からジェットカウンターの不正改造をネタに脅迫を受けていることから、この脅迫者を何とかすれば、悪くないシノギになる。そう踏んだ2人がいざ乗り込んだパチンコ業界は、まさに欲望に取り憑かれ、私腹を肥やそうとする輩が跋扈する魑魅魍魎の世界だった。
 ホールオーナーの金の流れから、協会への上納金、業界内でのパチンコ店同士のつぶし合いなど、普段、なかなか目にすることのない裏事情が、ノンフィクションのごとく赤裸々に明らかにされていく。このリアルさは、作者の綿密な取材力に裏付けされているだけに、やけに生々しく、知らぬ間にグイグイと作品に引き込まれている自分に気付かされる。
 日本のギャンブル市場が大きく成長してきた要因は、パチンコ・パチスロの存在が大きいことは周知の事実だが、最近ではその市場規模は年々縮小している。しかしその一方で、1人当たりの遊技回数や費用は増加しているという。パチンコ依存症への特効薬は存在しないが、やめたくてもやめられない人にはぜひ、本書を手に取ることをオススメする。オーナーの気分次第で出玉をコントロールされ、大当たりを引いても知らぬ間に数%抜かれて計数されるなど、数々の不正を目の当たりにすれば、きっと嫌気が差すに違いない。
(小倉恵壱/書評家)

【昇天の1冊】
 2020年東京オリンピックまでに、外国からの旅行客を4000万人に増やそうという計画を政府が進めているそうだ。
 「おもてなし」をもって受け入れる準備が民間にも必要。特に飲食店は滞在中の旅行者の胃袋を満たす上で外せない存在でもあるため、今から万全の態勢を整えよう…。『外国人が驚いた居酒屋の世界』(メディアパル/1300円+税)は、そんな狙いをもった1冊だ。
 意外と知られていないが、日本の居酒屋は外国人観光客に人気が高いそうだ。手頃な値段と豊富なメニューをはじめ、丁寧な店員の接客、和風のテーブルに割り箸をそろえた、日本人にはどうってことない雰囲気までもが、珍しいという。
 1杯目は「とりあえずビール」で乾杯するという半ば公然たる“しきたり”や、やたらと種類の多い日本酒。焼き鳥、刺身、おでん、魚介を目の前で焼く炉端焼きなども、外国にはない。
 だが、そうしたなじみのマナーやメニューについての“ウンチク”や“雑学”は欠けているもので、その代表例が「お通し」。注文しないのに出てきて勘定に乗せられている、この日本独特のシステムを、我々は外国人にどう説明したらいいのか。そもそも「お通し」は、英語で何というのか。そうした日本の常識を他国の人に解説するのは難しい。そこで本書を一読…というワケである。
 知っているようで知らなかった居酒屋の世界。外国人への「おもてなし」のために読んだつもりが、つい他人に話したくなるトリビアが満載の本である。
(小林明/編集プロダクション『ディラナダチ』代表)

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