〈男と女の性犯罪実録調書〉②出所後も心の葛藤は消えず

官能・2020/08/05 00:00 / 掲載号 2020年8月13日号

 42歳で仮出所すると、地元から遠く離れた更生保護施設に入った。誰にも前科を知られてはいけないという緊迫感の中ですごし、入所者とのトラブルから、精神病院に入院したこともあった。千尋は境界性パーソナリティ障害と双極性障害と診断された。

 それでも5カ月後には一人暮らしを始め、リラクゼーションマッサージの仕事を見つけた。金髪にして、ブランド物を身に着けるようになった。そんなときに知り合ったのが、近所に住む田中静雄(61)だった。

 田中は既婚者だったが、「仮面夫婦で、家庭内別居中なんだ。だから、自由にすごせる」などと話した。2人はドライブや食事に行く関係になり、知り合って4カ月後には肉体関係を持った。そのときに千尋は思いきって自分の過去を話した。田中は「そんなことは関係ない。辛い思いをしてきたんだね」と言って、千尋の腹に残る傷跡を見て泣いてくれた。

 この人なら信頼できる。心の支えになってくれる人ができた。千尋は4度目の結婚をする決意を固めた。

 ところが、そうなると田中がそばにいないと寂しくて仕方なくなり、何度も自殺未遂を図っては、警察を呼ぶという奇行を繰り返すようになった。

 田中は見かねて朝から千尋の家に向かい、朝食を一緒に食べてから会社に出かけるという生活を送るようになった。夜も必ず千尋の家に寄り、泊まれるときは泊まった。そのうち、千尋の症状も改善された。

 千尋は更生保護施設の職員にも、田中のことを「婚約者」として紹介した。田中もその場で、「結婚を考えて付き合っております」と言ってくれた。

 千尋はますます田中に依存するようになった。しかし、すべてがうまくいっていたはずなのに、ある日、田中が前回の事件のコピーを持ってやってきた。
「今でも名前をネットに打ち込んだら出てきてしまうんだな」
「どうすればいい?」
「そのままでいい。いずれ消えるだろうから」

 千尋は田中の意図が分からず、悶々と苦しんだ。

 それからしばらく経って泊まりに来たときに、こんなことを言われた。
「オレみたいなジジイと付き合うのをやめて、若いのと付き合ってもいいんだぞ」
「どうしてそんなことを言うの?」
「オレは年だし、ワガママだからよ…」

 千尋はさらに苦しんだ。もしかしたら自分と別れたがっているのではないか。また、あのときと同じだ。自分を捨てようとしているに違いない。他の女に取られるぐらいなら、殺してしまったほうがいい。1度ハードルを越えた女は、2度目も簡単にハードルを越えるのだろうか。
(明日に続く)

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