水利権・不動産をしゃぶり尽くす 東電を標的にした中国政府系ファンドの黒い魂胆(2)

社会・2011/06/20 11:00 / 掲載号 2011年6月23日号

 繰り返せば、これは東電の決算期末を控えた3月末のこと。新年度入りした4月以降の保有状況は一切明らかになっていない。関東財務局などへの提出が義務付けられている株の大量保有報告書は、5%以上を取得した場合などに限定されるためだ。従って、東電が米格付け会社のスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)から「投機的」の烙印を押され、株価が年初来安値を更新して坂道を転がり落ちているいま、株安に乗じて何者かがシコシコと買い漁ったとしても5%未満に留まる限りは誰にもわからない。
 だからこそ、東電が9月中間決算で新たな株主動向を発表する秋までにオムニバス=国家電網公司が意欲的な買い増しを行い、気がついたときには圧倒的な存在感を誇っている可能性をも排除できないのが実情だ。

 東電は監査法人が「継続企業の前提に重要な疑義を生じさせる状況にある」と異例の警告を行いながらも、当面は上場が維持されるとはいえ、兆単位の原発補償を余儀なくされることで株主配当は長期間にわたって見込めない。それを承知で大株主に躍り出た以上、中国政府系ファンドをダミーに仕立てた国家電網公司が「東電しゃぶり尽くし」に舌舐めずりしたとしても不思議ではない。
 「中国は粗悪な原発を数多く抱えている。だからといって、東電の事故を反面教師にしようなんて殊勝な考えを起こすわけがない。いま市場で囁かれているのは、赤いハゲタカとなって東電の資産をとことん食ってしまうこと」(海外ファンドに詳しい関係者)

 東電は原発や火力発電所だけでなく、水力発電所を持つ。当然ながら広大な山林を抱え、豊富な水資源を誇る。一方、中国は水事情が厳しいことから北海道などの山林買収に意欲を燃やしている。その点、大株主として東電への発言力を強めれば、懸案だった水利権確保に向け大きく前進する。
 加えて中国企業は日本の不動産、マンション、別荘などを次々と買収するなど存在感を増しているが、東電は数多くの遊休不動産を抱えている。利に聡い中国政府にとって、そんな宝の山を抱える東電は垂涎の的。より大きな投資マネーの回収を狙ってソロバンを弾かないわけがない。
 海外企業が電力会社の株を10%以上保有する場合、外為法の定めで事前の届け出が必要だが、逆にいえば9.99%までならば政府は介入できない。これ自体、東電の筆頭株主である日本トラスティ信託口(4.4%)の倍以上で、資産16兆円を誇る国家電網公司がその気になれば筆頭株主の座は十分手が届く。

 だが、それにも増して不気味なのは中国側が“究極の一手”を駆使しかねないことだ。巨大な天変地異の場合、原子力損害賠償法の定めで電力会社(東電)は免責される。従って東電の株主(中国側)が日本政府の賠償責任を求めて訴訟を起こせば、政府が敗訴して賠償の肩代わりを迫られる。法曹関係者が言う。
 「そこまで見据えての挑戦であれば、東電どころか日本政府がしゃぶり尽くされる。まさに中国政府と中国企業の本性見たりです」

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