葉加瀬マイ 2018年11月29日号

これからの季節に用心が必要! 血栓症のシグナルと死亡リスク

掲載日時 2018年05月26日 08時00分 [健康] / 掲載号 2018年5月31日号

 血栓症とは、血液中にできた血栓が血管を詰まらせることにより引き起こされる病気を言う。心臓で起きると心筋梗塞、脳であれば脳梗塞、肺では肺梗塞、下肢では深部静脈血栓症などに陥り、手当てが遅れれば致命的な事態につながる。
 「今年のように、春先から夏日を記録するような場合には特に用心が必要です。暑い日が続くと、倦怠感、めまい、頭痛、ふらつき、痺れなどを感じた際、熱中症気味と思い込んでしまう人が多いのですが、実は血栓症を起こしていることもあるのです。専門機関の調査で、脳梗塞患者が最も多かったのが6月〜8月というデータもあり、まさにこれからの時期に当たるため、用心しなければいけません」
 とは、東京都立多摩総合医療センターの血液内科担当医。

 実際に、国立循環器病研究センターによる2008年〜'13年の6年間の脳梗塞患者の発生件数も、3〜5月=961件、9月〜11月=917件、12月〜2月=966件に対し、6月〜8月が1004件で最も多い。
 「また、台湾での発表になりますが、65歳以上の脳梗塞患者2万1000人のうち、平均気温が32℃を超えると27〜29℃のときに比べ脳梗塞による死亡率が1.66倍に増えるということも報告されているのです」(同)

 そもそも、血栓はどのようにして作られるのか。
 正常な血管では、血管内で血が固まることはなく、ケガなどで血液が出ることで、初めて固まる。そのためこの機能は、本来は止血のために重要な役割を果たしているのだ。
 「健康で若々しい血管は、ゴムのようにしなやかで、内側もすべすべしています。ところが老化すると、もろくなり内側がべタベタしてくる。その血管壁に血液中の悪玉コレステロールなどがとりつき、それを排除しようと白血球の仲間たちが集まってきます。それらは悪玉コレステロールなどを食べた後に死んでしまうのですが、その死骸と残ったコレステロールがプラーク(コブ=粥腫)となり、何らかの刺激で破れると、その傷を修復するため血小板が集まってかさぶたを作る。これが、悪いパターンの血栓です」(健康ライター)

 健康な血管は、出血が収まると傷口周辺の内皮細胞が増殖して、血管壁が修復される。その後は、血液中のプラスミンという物質などの働きで血栓は溶かされ跡形もなくなる。
 「ところが、動脈硬化や老化が進んだ血管は、こうしたシステムが上手く働きません。また、血液がよどむことで血栓ができることもあります。その代表が心房細動で、脳梗塞(脳塞栓)を引き起こしやすくする。心臓が震えるだけで血液を外に出せないからです」(心臓内科医)

 血栓は、動脈だけではなく、血液が心臓へ流れ込む静脈にもできることがある。脚の静脈に血栓ができると血流が妨げられ、脚に血液が溜まる(深部静脈血栓症)。脚の静脈の血栓は、何らかの拍子に血管の壁から剥がれることがあり、その剥がれた血栓が血流に乗って心臓に運ばれ、さらに肺に入って血管を詰まらせることがある。これが肺梗塞症だ。
 「米心臓学会によると、米国では5人に1人が深部静脈血栓症や肺梗塞症により死亡しているといいます。また、心臓の中でできた血栓が血液を通して脳へ運ばれ、脳動脈を詰まらせて脳梗塞を引き起こす心原性脳梗塞は、突如発症し、これにより麻痺や意識障害が起こって死に至る場合もあるのです」(同)

 中でも60歳以上の人は血管がもろくなり血栓ができやすい状態にあり、前述の心房細動などの心疾患によって不整脈が起こると、血流がよどんで心臓内の血液が固まって、血栓ができやすくなる。
 脳卒中などの研究を進める医学博士・内浦尚之氏は言う。
 「若い人でも、コレステロールや中性脂肪の高い人は、血液の流れが悪くなります。そうなると血流によどみが起こり、血栓症につながります。血栓ができるのは、比較的動脈よりも静脈に多い傾向がある。飛行機内などで同じ姿勢で座っていると発生し、エコノミークラス症候群を引き起こす深部静脈血栓症などは、血液が心臓から吐き出される動脈よりも、心臓に戻る静脈の方がゆっくりしているから発症するのです。また、血液成分のほとんどが水分のため、暑い日に大量の汗をかいた後、利尿作用もあるビールや、度数の強い酒ばかり飲めば、血液が固まりやすい成分に変わってしまいます。これによって、突然、手や脚の動作が効かなくなることがあり、“一過性の脳梗塞”と言われている。その場合、数分後にもとの状態に戻ってしまうため放置してしまうことが多いのですが、危険な状態にある可能性もあるのです」

 同じような体験をした場合、まず「なぜその状態になったのか」を知っておく必要がある。さらに2度目を体験した時は、本格的な脳梗塞に陥ることを考えなければならない。
 「夏場に向け、ダイエットをする人も注意が必要です。人間は1日に1〜2リットル程度の飲み水が理想と言われますが、飲み水以外に食べ物から摂ることで補っている。食べなければその分、他で水分を摂らなければなりません」(前出・健康ライター)

 人間の血液凝固能力には、1日の生活を送る中でも変動がある。いつ、どのような状態のときに固まりやすいのかも、しっかり知っておくことだ。
 「よく言われるのが、寝ていることで長時間体を動かさない早朝です。また、肉類を過食したり、興奮した時、さらに激しい運動をした後も、血栓ができやすいことが分かっている。薬でも、ピルやステロイドを使用している人は注意が必要です。もちろん、血管に圧力がかかり続ける高血圧の人、食事の前後で血糖値が大きく変動する糖尿病のほか、歯周病や風邪に罹っている人の場合も、血栓には注意しましょう」(同)

 まずは、飲みすぎ食べすぎ、運動不足やストレスを避け、食べ物では野菜、豆類を多めに摂るように心掛けて、血液がドロドロにならないような生活を送ることだ。

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