葉加瀬マイ 2018年11月29日号

宴会シーズンは特に注意したい 心筋梗塞も招く尿酸値上昇

掲載日時 2017年12月02日 10時00分 [健康] / 掲載号 2017年12月7日号

 年末へ向け酒を飲む機会が増える季節だが、中高年の人が特に注意したいのが、尿酸値。尿酸値の上昇により、痛風の症状が出ることも怖いが、今回、取り上げるのはそれだけではない。心筋梗塞などの心血管疾患や、尿路結石に高血圧、高脂血症などと合併するケースが多いという点だ。

 尿酸値と聞くと、真っ先に思い描くのが痛風ではないだろうか。尿酸は、専門的には「プリン体代謝の最終産物」と呼ばれ、体内でプリン体が分解されてできた老廃物のことを言う。
 「そもそもプリン体は、細胞の中の核酸やDNA、RNAの構成成分として存在します。体内では常に細胞の新陳代謝が繰り返され、そのサイクルの中で、細胞が死滅する時に核酸も分解される。そして、核酸を構成していたプリン体は、最終的にそれ以上は変化せず、尿酸という物質になるのです」

 こう説明するのは、都内内科クリニックの医師だ。
 「尿酸は体内でプリン体が分解されてできた老廃物ですが、ビタミンCを上回る強い抗酸化作用があり、酸化ストレスから組織を守る有益な作用を持つとも言われています。しかし、血中濃度が7mm/dlを超えると結晶になる。その結晶が関節などに溜まり、激痛を引き起こす、いわゆる痛風になるのです。学会(日本痛風・核酸代謝学会)では、尿酸値が“7”を超えている場合、高尿酸血症としている。ただし、そのすべてが痛風発作を起こすわけではありません。つまり、尿酸値で高い数値が出たとしても、痛風発作の症状が出ない患者さんも多くいるということです」

 ただし、日本には痛風患者が約100万人、無症候高尿酸血症の人は、500万人いると推計されている。
 前出の内科医も、こんな体験があるという。
 「私も20年近く前、初めて高い尿酸値を示されました。放置していたら、痛風発作ではなく、尿路結石で激痛発作を起こしてしまい、それ以来、ずっと尿酸値を下げる薬を飲んでいます。血液検査で尿酸値が高いことは分かっていましたが、長く放置していたツケが来て、体外衝撃波による入院治療が必要でした。そのために日頃から尿酸値の定期的な血液検査を受けているんです」
 また、高い尿酸値は結石形成だけでなく、動脈の石灰化にも関係していることが明らかにされていることから、この内科医は2年前から尿酸値をきちんとコントロールするために酒もやめたという。

 そのような話を聞いて分かる通り、中高年の高尿酸血症で注意しなければならないのは、痛風や結石だけではないということだ。欧米などでは、心血管疾患の発症と大きく関係しているという報告が数多くある上、高尿酸血症の人の死亡原因第1位は、心筋梗塞などの心血管疾患というデータもあるという。
 血圧に詳しい医療ライターは言う。
 「尿酸値がもともと高い人は、高血圧、肥満、高脂血症、糖尿病などを合併しているケースが多く、それが心血管疾患を増やしている大きな要因だと考えられています。いずれも、動脈硬化を促進させる大きなリスク因子で、動脈硬化は心筋梗塞、狭心症、弁膜症、大動脈瘤などの心臓病を引き起こす要因になる。
 日本高血圧学会では、日本人の尿酸値の平均は男性5.5mm/dl、女性が4.5mm/dlだが、これが『1』上昇するごとに、男性で18%、女性で25%が高血圧を合併しやすいとの発表もあります。男性は『7.5以上』、女性では『6.3以上』の場合、高血圧を合併する患者の心血管疾患の発症が増えるという報告もある。やはり、尿酸値が高いまま放置しておくのは、リスクも大きくなると思います」

 尿酸値が上がる直接的な理由について、ある専門医は「尿酸が作られすぎて多い」ことや、「尿酸を排泄する力が低下している」ことなどが考えられるという。
 「尿酸が作られすぎる原因としては、プリン体の代謝障害や、食物として体内に取り入れるプリン体の量が多いことが該当します。この中で尿酸の排泄には、体質と生活習慣的な要因が大きく関係していると考えています」(同)

 厄介なのは、前述のように高尿酸血症を放置していると、尿酸の結晶が少しずつ大きくなる点。尿酸は本来、体の中ではすべて溶け、結晶としては存在しない。そのために白血球が、貪食(細菌や異物を取り囲んで食い殺そうとする活動)を試みようとするが、貪食された尿酸結晶は、白血球を破壊する作用をする。ゆえに、そうした箇所に炎症反応が起こり、やはり赤く腫れて激しい痛みが発生する痛風発作が出やすくなる。
 東京共済病院の内科担当医は、こう説明する。
 「何といっても怖いのは合併症ですが、他にも高尿酸血症は、心血管疾患の独立した危険因子であるということも報告されている。はっきりしたメカニズムはまだ解明されていませんが、尿酸が基準値を超える状態が続くと、血管の細胞が尿酸を取り囲んで血管の壁が厚くなり、血液の通り道が塞がれ、心筋梗塞や狭心症のリスクが高まるのではないかと考えられています」

 こうした様々な報告から、尿酸値が一定以上高ければ、無症状でも積極的に尿酸値を下げる治療を行うべきだ、という流れも出てきているという。
 現在は、男性も女性も尿酸値が「7」を超えるとリスクが高くなるとされているが、女性はもともと男性より尿酸値が「2」ぐらい低いため、「5」を超えた場合は注意が必要だ。女性の場合、男性に比べて尿酸値が高いと心血管疾患になりやすいとの研究結果もあるという。
 「尿酸値も心血管疾患も、リスクを下げるには生活習慣を改善することが重要ですが、それが難しい人は、早めに尿酸を下げる治療を検討した方がいいかもしれません」(同)

 最後に、普段の食事に関して専門医は、以下のように注意点を挙げる。
 「確かに、レバー類などの極端にプリン体を含む食事は控えた方がいいのですが、基本はカロリー摂取を抑えることです。常に“腹八分目”を意識し、早食いは避けること。肥満を解消していけば、おのずと尿酸値が下がっていくことをお忘れなく」

 これからのシーズンは、いつも以上の心掛けが重要だ。

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