葉加瀬マイ 2018年11月29日号

本好きリビドー(152)

掲載日時 2017年04月29日 18時00分 [エンタメ] / 掲載号 2017年5月4日号

◎快楽の1冊
『フィリピンパブ嬢の社会学』 中島弘象 新潮新書 780円(本体価格)

 1980年代初頭、「ジャパゆきさん」という言葉が流行語になった。アジア各国から「ジャパンに行く」というのがその語源だが、何も彼女らは観光のために来日していたわけではない。バブルで沸く日本に“出稼ぎ”に行き、郷里に送金するのが目的だった。時代は変わったが、現在、ジャパゆきさんは“偽装国際結婚”という形で今でも日本に存在している。
 タイトルに「社会学」とあるが、なにも難しい学問の話ではない。著者が大学時代にフィリピンを訪れ、その情け深く情熱的に生きる人たちを見て、発展途上国の実情に興味を持ったことが始まりだ。
 著者はその後、フィリピンパブで働く女性と交際を始め、家族や周囲の反対を押し切ってゴールインするという実体験を、まさに社会学のフィールドワークのごとくまとめているのが本書である。
 日本ではまだ国際結婚は少数だが、実際に決心するには相当の決意とリスクを受容する覚悟が必要だ。80年代にジャパゆきさんと結婚した日本人男性は数多くいるが、多くの人が経済問題で破たんしている。湯水のように金を使う祖国の家族たち、そして、それを「当たり前」と感じ、どれだけ送金することができるかが彼女たちの「使命」であり「生きがい」でもあるのだ。
 「今フィリピンに来ているんだ。ミカ(※著者の妻)の家族がどれだけ金を送っても、すぐに使って要求する。どうすればいいんだろう」。著者の苦悩は続く。
 そして受け入れ難い現実を目の当たりにする。フィリピンでは国民の1割が海外に出稼ぎに出ている。そして、彼らが送ってくる外貨が国の経済を支えているのだと。もはや、一家族の特別なケースなどではなく、国全体の問題なのだ。
 中国や韓国、北朝鮮ばかりに注目しがちだが、本著はもう一つのアジアの生々しい現実を浮き彫りにする。
(小倉圭壱/書評家)

【昇天の1冊】
 戦国時代の武将といえば、信長、秀吉、家康をはじめ東北の伊達政宗、甲斐の武田信玄、越後の上杉謙信、中国の毛利家まで名将・知将の名がズラリと並ぶ。さらに今でも各都道府県民に慕われている“ご当地”の大名まで含めれば、数限りない。
 だが、武将たちは平時ではどういう暮らしを送っていたのか、拠点としていた城の内部構造は、また合戦における軍の組織、兵士の階級、戦い方などは、名前が知られているわりに理解されていない。
 そうした点をイラストで事細かに図解し、「絵事典」と名付けて刊行したのが『戦国の合戦と武将の絵事典』(成美堂出版/1500円+税)。ページを開くと、どのページもカラーの絵が掲載されており、その数なんと600点。文字ばかりが並び、難解で複雑な戦国時代を解説する本は数多いが、このイラストを見れば一目瞭然で、これほど丁寧かつ分かりやすい時代物書籍は、そうそうないだろう。
 例えば、武将たちはどんな食事をしていたのか? 服装、女性関係、趣味、余暇のすごし方は?
 また侍大将、軍監、軍師、騎馬兵、足軽といった軍の編成と、具体的な役割とは? こういった大河ドラマや時代劇では知りえなかったところまで斬り込んでいる。
 著者の高橋伸幸氏は、現在放送中の『おんな城主 直虎』に関する書籍も執筆している気鋭の“歴史探偵家”だ。
 週刊実話読者には時代劇ファンも多いだろうから、テレビ鑑賞の補助として一読をお勧めしたい。
(小林明/編集プロダクション『ディラナダチ』代表)

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