林ゆめ 2018年12月6日号

世の中おかしな事だらけ 三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』 第171回 外国移民受け入れ政策に反対する

掲載日時 2016年04月20日 10時00分 [政治] / 掲載号 2016年4月28日号

 冒頭から結論じみたことを書いておくが、安倍政権が推進する「外国移民政策=外国人労働者受け入れ政策」を支持する人は、反・資本主義者である。資本主義の概念に、
 「外国移民を増やして経済成長」
 などといった発想は存在しない。

 むしろ、イギリス産業革命により資本主義が始まる「前」の時代であれば、「外国移民を増やして経済成長」といった発想が成立していた。産業革命以前の世界では、
 「生産者がモノやサービスを生産し、顧客が消費・投資として支出し、所得が創出される」
 という、一連の所得創出プロセスにおいて、生産を拡大する手段は「労働者を増やす」以外にほとんど存在しないも同然だったのである。

 産業革命以前の世界において、生産活動に投じられる要素は「土地」「労働」以外にほとんどなかった。すなわち、主産業が農業だったのである。人々は土地の上で労働(農作業)を提供し、生産された農産物が消費された。終わり。
 これが、産業革命以前の「経済」だった。産業革命以前は、生産活動を拡大するためには、土地や労働を増やす必要があった。とはいえ、土地は戦争でもしなければ簡単には広がらない。というわけで、産業革命以前の時代に生産活動を拡大する(=経済成長する)ためには、投入される労働量を増やす必要があったのだ。
 もっとも、労働者の投入を増やしたところで「労働者一人当たりの生産物」が拡大するわけではない。所得創出のプロセスにおいては、生産された「生産物」イコール「所得」になる。産業革命以前は、働き手の所得がほとんど増えない状況が続いたのだ。しかも、数千年という長期にわたってである。

 産業革命により、状況は一変した。産業革命以後の世界では、生産活動に対し、主に「資本」「労働」「技術」が投じられる。すなわち、労働者の数を増やさずとも、資本や技術を拡大することで経済成長が可能な時代が訪れたのだ。
 ここで言う資本とは、国富統計における「生産資産」を意味する。生産資産とは、例えば道路や鉄道、港湾や空港といった交通インフラ、工場、機械設備、運搬車両などになる。

 「資本」を理解する上でのポイントは、「資本は生産活動により生産可能」という点である。運送サービスを例に挙げよう。
 運送会社が、東京から大阪まで貨物を運送する仕事を受注したとする。運送会社は当然ながら、東名・名神自動車道という「高速道路」上に、トラックという「運搬車両」を走らせ、顧客の需要を満たそうとするだろう。
 高速道路は、過去の日本政府の公共投資により生産された資産だ(厳密には、高速道路を建設したのは土木・建設会社だが)。あるいは、トラックは日本の自動車企業が生産した資産に該当する。
 運送会社は過去の土木・建設会社や自動車企業が生産した資本を用い、自らの生産活動に労働を投じることで、「運送サービス」という生産物を生産することになるわけだ。別の言い方をすると「所得を得る」という話になる。
 あるいは、そもそも高速道路の建設や自動車の製造には「技術」が必要だ。技術なしでは、道路建設やトラック製造も不可能である。高速道路やトラックがなければ、運送会社は恐ろしいほどの「低生産性」で運送サービスを生産する羽目になる。江戸時代のごとく、大八車に貨物を乗せ、東京から大阪まで徒歩で荷を運ばざるを得ないわけだ。
 資本や技術が投じられて初めて、運送サービスの労働者は自らの生産物(運送サービスの供給)を拡大することが可能になる。すなわち、生産性が向上する。

 お分かりいただけたと思うが、資本主義の世界では、生産活動という「経済」に資本や技術が投じられることで、全体の生産規模(=GDP)はもちろんのこと、労働者一人当たりの生産物=所得を継続的に拡大していくことが可能になったのだ。経済成長とは、資本や技術を拡大する「投資」によりもたらされる現象なのである。
 資本主義経済において、経済成長のために必要なのは「資本」や「技術」におカネを投じ、労働者一人当たりの生産物の「量」を増やすことなのだ。決して「労働者の数を増やす」ではない。
 そして、経営者や政府が「いかなる時期」に生産性向上のための投資をするかといえば、もちろん「生産性向上が必要な時期」になる。当たり前だが、必要がなければ誰も投資などしない。

 それでは、生産性向上が必要な時期とはいかなる時期なのか。もちろん、人手不足の時期である。
 今後の日本は少子高齢化による生産年齢人口比率の低下により、政府や企業はいや応なしに生産性向上のための投資をせざるを得ない。そして、その投資こそが経済成長をもたらすのだ。
 ところが、現在の日本が「外国移民=外国人労働者」を入れてしまうと、人手不足が解消し、生産性向上のための投資が不要になる。つまりは経済成長率は抑制される。
 さらに、日本国民は外国移民とこれまで以上に「低賃金競争」をさせられ、実質賃金が下がり、実質消費も減る。日本経済は縮小し、最終的には発展途上国化することになるだろう。
 もちろん、現在の欧州をみれば理解できるが、外国移民=外国人労働者の受け入れは犯罪率を引き上げ(確実に上がる)、社会を不安定化させ、最終的にわが国を「かつて日本と呼ばれていた何か」に変えてしまう。同時に、外国移民受け入れは経済成長のための投資を不要とし、国民を貧困化に追いやるのだ。

 現在の日本において「経済成長のために外国人を」などと寝言を言っている連中は、反・資本主義者であることを是非とも理解してほしい。

みつはし たかあき(経済評論家・作家)
1969年、熊本県生まれ。外資系企業を経て、中小企業診断士として独立。現在、気鋭の経済評論家として、分かりやすい経済評論が人気を集めている。

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