菜乃花 2018年10月04日号

米朝戦争だけじゃない! 統一朝鮮VS中国の「第三極」紛争

掲載日時 2018年01月13日 15時00分 [社会] / 掲載号 2018年1月25日号

米朝戦争だけじゃない! 統一朝鮮VS中国の「第三極」紛争

 北朝鮮の金正恩委員長は元旦の新年の辞で「核ボタンが執務室の机の上にいつもある」と世界を威嚇し、大陸間弾道ミサイル(ICBM)の実戦配備を事実上宣言した。しかし、メッセージ内容を慎重に読み解くと、重点は韓国への対話呼び掛けにあることが分かる。
 「韓国の文在寅大統領は就任直後から、何度も北朝鮮に対話を呼び掛けてきましたが、平壌から色よい返事が返ってこないばかりか、嘲笑や誹謗の類いしか届きませんでした。それだけに文大統領は、最初の対話の相手がトランプ米大統領ではなく自分だったことを喜んだに違いありません。何しろ近い将来、正恩委員長と文大統領との南北首脳会談の可能性すら示唆したのですから、文大統領にすれば『いよいよ俺の手で統一朝鮮を実現するのだ』といった思いが湧いてきたことでしょう」(大手紙元ソウル支局長)

 文大統領の政治の師匠である故・盧武鉉元大統領が、2007年に行われた南北首脳会談で描いたのが『高麗民主連邦共和国構想』だ。
 「同構想は、そもそも正恩委員長の祖父である金日成主席が、1980年10月の朝鮮労働党成立35周年を記念して行われた第6次朝鮮労働党大会で、当時の全斗煥大統領政権に提唱した南北朝鮮の統一方法ですから、正恩委員長にとっても悲願と言えるものです。それだけではなく、彼は『高句麗』復活に燃えていることはよく知られています」(北朝鮮ウオッチャー)

 高句麗は、西暦668年まで続いた現在の中国東北部の一部から北朝鮮および韓国北部までを含んだ王朝で、首都は現在の平壌に置いていた。北朝鮮も韓国も、かつて高句麗だった土地は中国の領土ではなく統一朝鮮の土地だと主張するのは正当性がある。従って中国は「高句麗は属国だった」との自説を曲げていない。
 「現実に中朝間には、中国の吉林省東部の延辺朝鮮族自治州一帯を巡る“領土紛争”があるのです。将来、高麗連邦が樹立され、かつての高句麗の首都・平壌から世界に向かって南北再統一のメッセージが発信され、南北統一コリアが核保有国を宣言、中国に朝鮮族自治州一帯の返還を要求すれば、習近平国家主席はビックリ仰天でしょう。南北間でもなく対米国でもない、統一朝鮮と中国との“第三局”の紛争です」(同)

 だが、事は文大統領の絵図通りにはいかない。
 「日米韓への脅迫と核兵器開発を続けた北朝鮮がギリギリになって五輪参加を表明したのは、国際的圧力をかわしつつ、核兵器を温存するための道具として平昌五輪を利用しようとしているのはミエミエで、知らぬは文大統領だけです。さすがの米国も“平和の祭典”の真っ最中に戦争はやらないだろうと北は読んでいるはずで、正恩委員長のもくろみは各国の立場の相違に付け込み、それを広げることにあります。まずは米韓、さらには日中露隣国5カ国が抱える相違点を引っ掻き回し、その間、核・ミサイル開発をさらに進めるつもりでしょう」(米国務省東アジア政策担当幹部)

 何しろ米国には、地球上最も非合法な政府に正当性を与えることになる北朝鮮の五輪参加なら「ボイコットする」という強硬論も根強い。北にとって五輪への参加は、米韓分離になり得る。そうすれば、実際は遅れているICBMの実戦配備を推し進めることもできる。
 「北朝鮮が昨年4月28日に発射実験に失敗した中距離弾道ミサイル(IRBM=火星12型)が平安南道の民間地区に落下し、大きな被害を出したことが明らかになりました。また、これに関連して昨年末には、核実験場の建設およびミサイル開発担当の大幹部などが粛清され、他にも6階級降格者もいる模様です。これはまだまだ核・ミサイル開発を進める決意の表れと見て間違いないでしょう」(軍事ジャーナリスト)

 北朝鮮の国境都市、新義州では昨年末に「米軍の北爆が始まる」との噂が広がったことがある。気が揉めるのは、五輪後の4月の北爆勃発だ。
 「日本の首相官邸も動き出しています。平昌五輪はパラリンピックを含めると3月18日まで続き、その間にプーチン大統領が2度目の2選を目指すロシア大統領選が公示され、3月18日は投票日に当たります。プーチンの当選は確実ですが、朝鮮半島有事が勃発すれば選挙戦に影響が出かねない。そこで米露は米朝全面衝突時のシナリオを擦り合わせたのです。4月まで米国が軍事力行使を保留すれば、ロシアはそれ以降の軍事行動を黙認するというもので、安倍政権もこの情報をキャッチし、首相の覚えめでたい杉山晋輔外務次官を次期駐米大使に充てる抜擢人事を決めています」(国際関係アナリスト)

 北朝鮮がICBMに着弾可能な核ミサイルを完成させたら手遅れになる。生物化学兵器を誇示しているばかりか、太平洋上での大気圏核実験まで示唆している。米国に残された時間はそれほど多くない。
 「2018年、アメリカの最大の政治スケジュールは11月に行われる中間選挙です。トランプ大統領はこの選挙で勝利し、当然、2年後の大統領選で再選されることを考えているはずで、中間選挙に有利となると判断したら、夏に空爆する可能性もあります」(同)

 金、文両氏の『高麗連邦』が正夢となるのが先か、はたまた北の空が赤く染まるのが先か――。
 今年は朝鮮半島から1秒たりとも目が離せない。

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