葉加瀬マイ 2018年11月29日号

世の中おかしな事だらけ 三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』 第282回 生産性向上こそが経済成長の道

掲載日時 2018年08月07日 12時00分 [政治] / 掲載号 2018年8月16日号

 少子高齢化による生産年齢人口比率の低下は、わが国に高度成長期並みの人手不足をもたらそうとしている。特に少子高齢化に加えて若者の都心部への流出が続く「地方」の人手不足は、すでに半端ない。
 日本商工会議所の三村明夫会頭は7月19日、加藤勝信厚生労働大臣と懇談し、年々、深刻化する人手不足や、若者流出による地方の疲弊などを訴えた。
 「各地の人手不足は悲鳴にも近い」
 と、三村会頭は発言している。
 日商の調査によると2018年は65%の企業が人手不足の状況にあるという。人手不足に陥る企業の割合は、毎年5%ずつ上昇している。しかも政府が「残業規制」を含む働き方改革法を通した。残業時間が規制されることで、納期の遅れや、機会損失が生じる可能性が高い。さらには、大企業が残業時間を厳守することで、中小企業へ「しわ寄せ」が向かう事態も、当然ながら想定できる。

 さて、人手不足問題を考える際に、まずは注視しなければならないのは、生産者1人当たりの生産量、すなわち「生産性」である。日本の生産性は、高いのだろうか、低いのだろうか。答えは、少なくともG7諸国の中では「最低」となる。左図(※本誌参照)は労働者1時間当たりの生産性を、購買力平価USドルで比較したものだ。日本の時間当たり労働生産性は、実はG7諸国最低が続いている。(※労働者1人当たり生産性でも同様である)

 日本の生産性の低さはマクロ面、ミクロ面で理由が異なる。
 マクロ面の生産性は、付加価値の合計(GDP)÷労働者数となる。デフレという需要不足が続いたわが国の生産性が低いのは、マクロ面から見ると当然だ。ミクロ面では、企業や政府が生産性を高めるための投資を怠ってきたことを意味している。特にひどいのが、先日も取り上げた「サービス業」である。
 サービス業の資本装備率(1人当たり○万円)は'95年には1310万円だったのが、'16年には何と486万円にまで落ち込んだ。資本装備率が、ピークから4割以上も下がってしまったのだ。デフレ突入後、日本はヒト余りが進み、労働者が買いたたかれる状況が続き、サービス業は次第に「労働集約的」になっていったわけである。資本主義的には退化だ。

 結果的に、日本はマクロ面でもミクロ面でも生産性が高まらず、その状況で人手不足に突入した。そうであれば、人手不足に対する回答は1つしかない。もちろん、生産性向上のための投資をすることだ。
 もっとも、デフレで疲弊した企業が生産性向上の投資に踏み込むのは困難である。当然、政府が「需要面」「投資面」と2つの面から生産性向上をサポートしなければならない。
 具体的には、
 「長期安定的に需要が見込めるよう、財政出動を長期プロジェクトで実施する」
 「各企業の生産性向上の投資を税制面で支援すると同時に、政府自らも技術やインフラに投資する(要は長期プロジェクトだが)」
 この2つでいいのである。日本の生産性がG7最低ということは、その分、伸びシロがあるとも言える。特に、サービス業はそうである。というわけで、まずは政治家、企業経営者、そしてすべての日本国民が、
 「人手不足は生産性向上で解消を」
 「生産性向上こそが経済成長の道」
 であるという、資本主義国として当たり前のことを再認識する必要がある。ところが、わが国は人手不足を「外国人労働者で解消を」とやっているわけだ。

 政府は7月24日に関係閣僚会議の初会合を開き、'19年4月に外国人の新たな在留資格の運用を開始することを決定した。具体的には、技能実習生の在留期間について、農業、介護、建設、造船、宿泊の五分野について5年から10年に延ばすとのことである。さらには、適用業種を5分野以外にも広げていく方針だという。安倍政権は、資本主義に抗う「反・資本主義政権」である。
 ちなみに、筆者は別に、
 「現在の日本にいる外国人労働者は、全員、追い出すべきだ」
 などと、移民排斥を主張しているわけではない。
 留学生や技能実習生が担っている分野は、速やかに生産性向上のための技術投資、設備投資を実施し、期限が来たら祖国にお戻りいただく。元々、実習生にしても留学生にしても、日本で「学んでいただき」、将来的に彼らの祖国に貢献してもらうことを前提に受け入れているのだ。また、高度人材とやらが担っている分野は、速やかに「日本人」の技術者を養成する必要がある。

 そもそも外国人高度人材に頼らなければ、技術不足に陥るなど、わが国は江戸時代に回帰したとでもいうのだろうか。外国の高度人材に頼らざるを得ないなど、まさに発展途上国である。
 あるいは、
 「日本人がやりたがらない仕事を、外国人に担ってもらう」
 などと、移民受入を正当化している人は、二重の意味で差別主義者といえる。特定の職業に対する蔑視と、外国人に対する蔑視があるのではないか。

 いわゆる3K仕事にしても、介護産業にしても、技術開発と設備投資で資本装備率を上昇させ、「もうかる仕事」にすればいいのだ。他の人のために尽くす仕事に貴賤はない。誰かに貢献する仕事は、すべて尊いはずだ。それにも関わらず、よくぞ「日本人がやりたがらない仕事」などといった表現ができるものだ。
 日本は、これまでの3K仕事や介護職などに就き、一生懸命働けば、やがては車や家を建てられる国を目指すべきだ。そして、日本はそうなることが可能なのである。
 それにも関わらず、日本は「人手不足を外国人で」などとやっている。

 日本の人手不足は、生産性を引き上げるための投資で補わなければならない。繰り返すが、それが資本主義国の王道なのである。生産性向上こそが経済成長の道だ。

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みつはし たかあき(経済評論家・作家)
1969年、熊本県生まれ。外資系企業を経て、中小企業診断士として独立。現在、気鋭の経済評論家として、分かりやすい経済評論が人気を集めている。

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