小瀬田麻由 2019年2月28日号

世の中おかしな事だらけ 三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』 ★第299回 移民法

掲載日時 2018年12月11日 07時00分 [政治] / 掲載号 2018年12月20日号

 2018年11月27日、衆議院法務委員会は、「移民」受け入れ拡大を可能とする出入国管理法(入管法)改正案を、自民、公明両党と日本維新の会などの賛成多数により可決した。立憲民主党などの野党の反対を押し切り、採決は強行された。事実上の「移民法」成立である。

 ちなみに自民党の労働力確保特命委員会は、移民について、
「入国時に永住権を持っている者」
 と、奇天烈な定義をしている。さらには、就労目的の者は移民ではないと決めつけているわけだから、異常としか表現のしようがない。移民の定義は、国連の定義によると「通常の居住地以外の国に移動し、少なくとも12カ月間当該国に居住する人」になる。OECDも、ほぼ同じ定義だ。労働目的の者はもちろん、留学生も定住目的も、1年以上外国に住んでいれば、全て移民に該当する。

 現在、日本には約250万人の在留外国人が暮らしている。彼らはすべて「移民」なのだ。特に今回の入管法改正における「特定技能2号」は、明確に移民政策になる。家族帯同や永住が可能であるため、これを「移民政策ではない」というのは、黒を白と言い張るようなものだ。

 元々、政府が想定していた土木・建設分野や造船分野における特定技能2号制度は、「志願者の見込みがつかない」とのことで、見送りになった。とはいえ、問題は「制度ができてしまった」という事実である。

 派遣法を思い返してほしい。日本で労働者派遣が解禁されたのは、’86年になる。当初は一部の特筆すべき技能を有する14業種16業務(※通訳など)に「限定」された形での解禁だった。その後、’96年に対象業務が26業務に拡大。この時点でも、正社員では代替できない専門性が高い業務が中心と、やはり「限定」ではあった。

 限定が外れたのが’99年。派遣業種は原則自由化され、ネガティブリスト(派遣禁止業務)に掲載されている仕事以外はOKとなってしまう。そして’04年、ついに製造業における派遣が解禁された。当初は、期間1年だったのが、’07年に派遣期間が3年に延長される。最初に開けられた「蟻のひと穴」がジワジワと拡大されていったのだ。移民法も、同じ道をたどることになるだろう。短期的には、
「2号の業種がかなり絞り込まれているため、移民政策には当たらない」
 と、強弁して「蟻のひと穴」を開ける。その後、何十年もかけて穴を拡大していく。グローバリストや構造改革主義者のいつものパターンだ。しかも、特定技能1号は、単に「技能実習生」をスライドさせ、在留期間を延ばすだけの制度にすぎない。

 何しろ、技能実習生として3年以上の経験を積んだ外国人について、「特定技能1号」への試験を免除するという“抜け道”をすでに政府は示しているのだ。実に露骨である。

 要するに、今回の移民法は、特定技能1号で、
「技能実習生を、現状のまま、低賃金奴隷的労働者として雇用し続けたい」
 という経営者のエゴイスティックな欲求を満たすと同時に、将来的には「特定技能2号」で日本を移民国家化するという、二重の意味で非人道的、非国民国家的な法律なのだ。

 しかも、移民を雇用したとして「日本人の所得を引き下げない」ための工夫等は一切ない。日本人は、今後も移民と「低賃金競争」を強いられることになり、実質賃金は低下を続けることになる。

 現在の日本は、少子高齢化に端を発する生産年齢人口比率の低下で人手不足が深刻化している。本連載で繰り返している通り、人手不足下における「生産性向上のための投資」こそが、経済成長と「国民の豊かさ」をもたらす。

 何しろ、実質賃金とは中長期的には生産性向上以外に上昇する術がない(短期的には、労働分配率の引き上げで上昇させることが可能だが)。

 長引くデフレ、つまりは「ヒト余り」に苦しめられた日本国が、人口構造の変化により、ようやく生産性向上、実質賃金上昇のチャンスを迎えた。この「豊かになる絶好のチャンス」を潰すのが、移民政策であり、経営者の「低賃金の奴隷的な労働力がほしい」という邪な考え方なのである。

 移民法ならぬ出入国管理法案は、衆院における審議時間がわずか15時間であった。安全保障関連法案の審議時間が100時間を超えていたことを思うと、あまりの「短い審議」にがく然とせざるを得ない。

 出入国管理法は、安保法以上に日本国の運命を決定的に変える。しかも、突っ込みどころが満載だ。

 特に問題なのが、今回の「移民法」が極めて抽象的で、細かいことは「省令」で定めることになっている点だ。具体的には、各業種の受け入れ分野について、法務大臣が各分野の所管閣僚らと策定する「分野別運用方針」により決定されるのである。

 要するに、政府に移民政策の「白紙委任状」を提出せよという話だ。国民の代表である国会議員の議論とは無関係に、「運用方針」により日本は移民国家化していく。法律成立後にさまざまな「声」が産業界から上がり、法相と法務省が動き、なし崩し的に日本は移民国家化することになるだろう。

 安倍政権としては、あまりにも突っ込みどころ満載の「移民法」であるため、真面目に審議することを回避したのであろう。そもそも、移民の定義からして奇想天外であるため、今回の移民法を正当化することは、神様にも不可能だ。もはや、わが国は真っ当な「議論」すらなく、移民国家化の道をひた走っているわけである。

 ご存知の通り、過去に移民を受け入れていた欧米諸国ですら、現在は移民の「侵略」を防ごうとしている。ところが、わが国は逆の道を行く。周回遅れの日本国の針路を変更するためには「今、世界と日本で何が起きているのか?」について、国民が正しい情報を知り、政治を動かし、「日本の移民国家化に反対する」という圧力をかけなければならない。

 具体的には、移民法に賛成した国会議員を、選挙で落選させるのである。

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みつはし たかあき(経済評論家・作家)
1969年、熊本県生まれ。外資系企業を経て、中小企業診断士として独立。現在、気鋭の経済評論家として、分かりやすい経済評論が人気を集めている。

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