葉加瀬マイ 2018年11月29日号

やくみつるの「シネマ小言主義」 この映画そのものが「現代アート」!? 『ザ・スクエア 思いやりの聖域』

掲載日時 2018年04月30日 18時00分 [エンタメ] / 掲載号 2018年5月3日号

やくみつるの「シネマ小言主義」 この映画そのものが「現代アート」!? 『ザ・スクエア 思いやりの聖域』

 現代アートなんて、とんと疎い私です。何だか分かりにくいイメージもある現代アートですが、「人によってさまざまな解釈が可能なコンセプトを持つ美術」と定義するならば、本作そのものが現代アートなんじゃないかと。
 いや、決して小難しい映画じゃないんですよ。むしろお洒落で軽妙、クスッと笑わせるユーモアもあります。ただ、映画を見終わったあと、妙に色々なシーンが喉に引っかかった小骨のように気になって、「あのシーンって、もしかしたら現代社会の何かを象徴しているの?」と、隣の人と答え合わせをしたくなるところがアートっぽいんですよねぇ。

 主人公のクリスティアンは、スウェーデンの権威ある現代美術館のキュレーターで、その最先端の肩書きにふさわしい格好よさ。洗練された服装をして、北欧っぽい趣味のいい家に住んでいるバツイチのモテ男です。
 彼の新しい企画が「ザ・スクエア」という地面に正方形を描いただけのアート作品展。その四角い「結界」の中では「すべての人が平等の権利を持ち、公平に扱われる」というコンセプトを持っています。これは、逆説的にいうと、その四角の外にある我々が暮らしている社会は歴然と格差があり不平等、いかに差別と矛盾に満ちているかが対比的に際立ってくる仕組みです。

 スウェーデンというと、高福祉国家で貧富の差なんてあまりなさそうに思っていましたが、この映画を見ますと、どうやらそんなことはないらしい。
 たとえば、ヨーロッパの中でも先駆けてキャッシュレス化が進んだ、かの国。本作のセレブな主人公はホームレスにめぐんでやる小銭さえ持ち合わせない。つまり、格差をつなぐ小さな接点すらないということ。
 ところが、彼が自ら主催する作品展の「思いやりの聖域」というコンセプトとは裏腹に、「思いやり」とはほど遠いセコい言動で、「本音と建前」の矛盾に満ちた内面をさらけ出していきます。
 広告代理店まかせにして大炎上したプロモーションの弁明会見の様子なんて、今の国会の証人喚問そのものです。
 思えば、映画のスクリーンやテレビの画面もみんなスクエア。その中で繰り広げられている画像は、たとえフィクションだったとしても、自分たちの社会の映し鏡なんですよね。

 …とまあ、頑張って色々と考えてみましたが、頭の中が「中2」のままの自分なので誤解があるかも。でも、どんな解釈だって許されるのがアート作品ですよね!

画像提供元
(C)2017 Plattform Produktion AB / Socie´te´ Parisienne de Production / Essential Filmproduktion GmbH / Coproduction Office ApS

■『ザ・スクエア 思いやりの聖域』監督・脚本/リューベン・オストルンド
出演/クレス・バング、エリザベス・モス、ドミニク・ウェスト、テリー・ノタリー他
配給/トランスフォーマー

 4月28日(土)よりヒューマントラストシネマ有楽町、Bunkamura ル・シネマ、立川シネマシティ他全国順次公開。

 現代アート美術館のキュレーターとして周囲から尊敬を集めるクリスティアンは、離婚歴があるが、2人の娘のよき父親であり、電気自動車に乗り、慈善活動を支援している。そんな彼が次に手がける展示「ザ・スクエア」は、「思いやりの聖域」をテーマにした参加型アートで、他人を思いやる人間としての役割を訴えかけるものだ。しかし、自分の理想通りに生きるということは難しい。携帯電話と財布を盗まれたクリスティアンは、その犯人に対して取った愚かな行動によって予想外の状況に陥ってしまう。

やくみつる:漫画家。新聞・雑誌に数多くの連載を持つ他、TV等のコメンテーターとしてもマルチに活躍。『情報ライブ ミヤネ屋」(日本テレビ系)、『みんなのニュース』(フジテレビ系)レギュラー出演中。

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