紗綾 2019年8月1日号

非核化でも侮れない北朝鮮「通常兵器」ハイテク マル秘戦闘力①

掲載日時 2018年10月03日 19時00分 [社会] / 掲載号 2018年10月11日号

 9月9日に行われた北朝鮮建国70年を祝う軍事パレードに、米本土全域を射程に入れた大陸間弾道ミサイル(ICBM)が登場しなかったことから、「北朝鮮は武力挑発から対話に路線転換した」との見方が出ている。しかし、これは朝鮮戦争の「終戦宣言」にこぎ着くための、米国を刺激しない“戦術”にすぎない。

 9月19〜20日に開催された第3回南北首脳会談で「平壌共同宣言」が採択されたが、最大の焦点である北朝鮮の非核化を巡っては、実質的な進展はなかった。一応、東倉里にあるミサイル関連施設を専門家の立ち会いのもとで永久廃棄することが明記されている他、「アメリカが相応の措置を取れば」という条件付きで、寧辺にある核施設廃棄などの追加措置を取る用意があると記されている。

 この首脳会談の前には、金正恩党委員長が核廃棄に向けたスケジュール表を提示するなども予想されていたのだが、現実は核廃棄への意思を“チラ見せ”させただけだった。

「両施設は、北朝鮮の核兵器製造の中核施設であることは間違いありません。しかし、同様の施設は北朝鮮に100カ所以上あるといわれており、寧辺を閉じても、さらなる核開発は可能なのです。さらに言えば、最大35発はあるといわれる核兵器は保有したままですから、これでは非核化を確約したことになりません」(北朝鮮ウオッチャー)

 北朝鮮が本当に非核化の意志を持っているのか疑念は強まるばかりだが、この記念式典において、米国との非核化交渉で後ろ盾となってくれた中国とロシアとの親密ぶりもアピールしている。ロシアのプーチン大統領は祝電を送って北朝鮮との関係重視を表明し、経済や安全保障面で支援する考えを明らかにした。また、中国の習近平国家主席の特使として訪朝した“チャイナ・セブン”の一角、栗戦書全人代常務委員長は、軍事パレードで正恩委員長と共にひな壇に立ち、2人が手を握り観衆に応える場面もあった。米国の一方的な非核化圧力には屈しない意志を暗に示した格好だ。
「栗氏は7月、自民党の大島理森衆議院議長と会談していますが、北朝鮮の非核化に関して『なかなか難しい。北朝鮮は中国から指図されるのを嫌がっている』と愚痴をこぼしています。トランプ大統領はポンペオ国務長官の8月末の訪朝中止を公開するツイッターの中で、『中国が非協力的だ』と書き込んでいますが、実は中朝関係も微妙なのです」(政治ジャーナリスト)

 北朝鮮は核施設、核兵器の申告、査察・検証、廃棄を回避できれば、核保有国として存続し、日韓のみならず中ロにもニラミを利かせることで、経済的利益を最大限に引き出せると考えているフシさえあるのだ。

 北朝鮮の軍事パレードには、これまでのような「米帝を粉砕せよ!」というスローガンは消えたものの、現在の融和路線が崩壊し、和平に向けた外交努力が崩れ去った場合には、新鋭の通常兵器を実戦投入する可能性をうかがわせる兵器群類が登場した。

 「今回のパレードではこれまで存在を知られていなかった重量級の国産戦車が少なくとも2機種登場しており、機甲戦における米韓の優位性が揺らぐ恐れが出てきています。また同様に、現代的な軍事国家というイメージを打ち出すため、最新兵器の披露に力点が置かれていたのも特徴的でした。韓国にとって核、弾道ミサイル以外の第一級の脅威である、地下壕に隠れてソウルを火の海にできる大口径の22連装240ミリロケット砲や8連装300ミリロケット砲が姿を見せたのです。22連装砲はGPS誘導ロケット弾を使用し、推定60キロメートルの射程能力を持っています。また8連装砲は200キロメートルを超える射程を持ち、GPS誘導によって標的を正確にピンポイント攻撃できますから、韓国の北半分にある戦略拠点はすべて狙い撃ちされる可能性があるということです」(パレードを分析した軍事アナリスト)

 朝鮮人民軍の戦闘車両は、朝鮮戦争時にソ連が供与した第2次世界大戦でドイツ軍を蹴散らした『T34』など“博物館行き”が多く、なおかつ部品、燃料の不足でほとんど動かないといわれてきた。

 しかし、今回登場した“先軍政治”のイデオロギーにちなんだ名前を持つ『ソングン(先軍)915』と『チョンマ(天馬)216(2月16日=金正日総書記生誕)』の投入によって、地上軍の戦闘力は大幅に増強されている。

 「“張りぼて”を使って最新鋭兵器を開発したかのように装っている可能性もなくはありません。過去、北朝鮮が大規模な軍事パレードを行うたびに、周囲からはそのような反応が出てくるのがいつもの光景ですからね。しかし、パレードで披露された兵器には、裏付けとなる開発計画が実際に存在していたのも軍事上の常識ですから、北朝鮮がこのような兵器を開発することなどできるはずがないと高をくくっていると、現実を見誤ることになります。ついこの間まで、ICBMの開発さえ無理だといわれていたのですから」(同)

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