園都 2018年6月28日号

話題の1冊 著者インタビュー 鴻上尚史 『不死身の特攻兵 軍神はなぜ上官に反抗したか』 講談社現代新書 880円(本体価格)

掲載日時 2018年03月04日 16時00分 [エンタメ] / 掲載号 2018年3月8日号

話題の1冊 著者インタビュー 鴻上尚史 『不死身の特攻兵 軍神はなぜ上官に反抗したか』 講談社現代新書 880円(本体価格)

 ――計9回出撃し、9回生還した特攻兵(佐々木友次さん)にインタビューしています。取材するきっかけは、なんだったのですか?

 鴻上 2009年に出版された『特攻隊振武寮 証言・帰還兵は地獄を見た』(講談社)という本を読んだことがすべての始まりでした。この本にある1ページにも満たない描写の中に「8回出撃し、8回生還した佐々木友次」という文章がありました。(この本では、8回になっていました)それに衝撃を受けて、ぜひ、ご本人にお会いしたいと思ったのです。「必ず体当りしろ」と参謀から強く命じられても、佐々木さんはそれを拒否し、爆弾を落とし帰還しました。
 それまでの特攻兵のイメージとは全く違い、日本人のイメージからも遠いことに驚かされました。ただ、この時点では、まさか佐々木さんがご存命とは想像もしていませんでしたね。

 ――“命令した側、された側”それぞれの視点で見る特攻とは、どのようなものだったのでしょうか?

 鴻上 “命令した側”は、戦後、自分たちが生き延びたことを免責するために、「特攻兵は穏やかに微笑みながら、自ら志願して特攻した」というイメージを作り上げました。しかし、戦後、現場の証言が徐々に明るみになってくると、実は現実は全く正反対であることが分かってきます。多くの兵士にとって、志願ではなく命令だったのです。そして“命令した側”は最後まで決してそれを認めようとはしなかったのです。

 ――本書は特攻隊を通して“日本型組織”についても語られています。

 鴻上 特攻が命じられた初期の頃はまだしも、後期になると、米軍のレーダー網は完璧になり、迎え撃つ艦載戦闘機も増えて特攻の成功率は著しく減少します。みんな心の中では「このような戦術は有効ではない」と思っていました。でも、誰も言い出さないのです。そして、リアルな戦術論や米軍の戦力分析を行うことなく「気力で立ち向かえ」とか「死ぬ気でやれ」といった“精神論”だけが語られ続けました。そう考えることで、すべてがうまくいくと信じ込もうとしていたんですね。
 誰かがそこで実証的データをあげて「この攻撃方法は効果がないんだ!」と主張することは、絶対にタブーでした。この精神論中心主義、死ぬ気でやればなんとかなる主義は、今も続く“日本型組織”の特徴ではないかと思います。
 戦後72年が経ち、戦争に対する貴重な肉声は失われつつあります。今だからこそ、特攻について冷静に考える時期がきたと言えるのではないでしょうか。
(聞き手/程原ケン)

鴻上尚史(こうかみ・しょうじ)
作家・演出家。1958年愛媛県生まれ。早稲田大学在学中の'81年に劇団『第三舞台』を結成。エッセイや映画監督、TV番組司会など幅広く活躍している。

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