園都 2018年6月28日号

森永卓郎の「経済“千夜一夜”物語」 仮想通貨の欠陥

掲載日時 2018年02月27日 08時00分 [社会] / 掲載号 2018年3月8日号

 580億円分の仮想通貨NEMを流出させたコインチェック社が、2月13日に会見を開き、事業を継続することと、停止していた日本円の出金を再開したことを明らかにした。しかし、流出したNEMを保有していた顧客への補償については、資金自体はあるとしながらも、具体的な時期を明らかにしなかった。
 コインチェックを利用していた投資家は、資金を塩漬けにされたままになるから、それだけでコインチェック社のずさんなデータ管理の責任は重い。しかし、私は今回の事件で、仮想通貨自体にも構造的な問題が判明したのではないかと考えている。

 ブロックチェーンという仮想通貨取引の正当性を検証する技術は、今のところまったく破られていない。また、盗み出されたNEMが、どこに存在するのかも特定されている。しかし、当初の報道では、その情報が取引所間で共有されているため、盗まれたNEMは、身動きできない状態に封じ込められるだろうとされていた。
 ところが、そのNEMは、犯行直後から数万円前後の少額ずつ、あちこちのアドレスに送金され、2月1日深夜には、1750万円という大金が送金されたことが判明している。それでも、この犯罪資金に対して、警察当局が手も足も出せない状態になってしまっているのだ。

 仮想通貨を取引するためには、ウォレットという口座を持つ必要がある。大手取引所を利用する場合には、本人確認が行われているが、ウォレットは、専用ソフトを使うと個人でも作成することができる。その場合は、個人情報を登録する必要がないから、持ち主が誰だか分からない。
 私は、盗まれたNEMがタックスヘイブンで現金化されてしまうのではないかと危惧していたが、2月10日にその一部が、闇サイトで他の仮想通貨に交換されていたことが明らかになった。汚れたNEMを手にした利用者は警視庁の事情聴取を受けたが、逮捕はされていない。このサイトを通じて、すでに数億円が交換されてしまった可能性もあるという。

 今回のNEM流出事件ではコインチェック社の自己資金で補償がなされるのだとしても、もっと巨額の流出が起きた場合、補償は不可能だ。そして流出した仮想通貨は、窃盗犯を野放しにしたまま流通してしまうだろう。いまの仮想通貨は、管理者を排除しようとすることに気を取られ、結局は安全も排除してしまったとも取れる。
 日本政府は、仮想通貨の取引所を登録制にすることで、仮想通貨の健全な発展を支えようとしたが、その判断は間違っていたのではないだろうか。

 私は、日本銀行が大手銀行、あるいは銀行グループに仮想通貨を供給し、それに基づいて、各銀行が独自の仮想通貨を発行するという形が近い将来に実現するのではないかと考えている。そうすれば、仮想通貨に資産の裏付けが生まれ、強制通用力を与えることも可能になってくる。また、価格変動も小さく抑えることができるから、投機の対象にもなりにくい。
 その時、いま流通している仮想通貨が価値を持ち続けるのか、大いに疑問だ。ひょっとすると、仮想通貨バブルはおしまいなのかもしれない。

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