中島史恵 2019年6月6日号

世の中おかしな事だらけ 三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』 ★第293回 消費への罰と、利益への罰

掲載日時 2018年10月30日 19時00分 [社会] / 掲載号 2018年11月8日号

 安倍総理大臣は、10月15日に会見し、
「消費税率は法律で定められた通り、2019年10月1日に現行の8%から10%に引き上げる予定だ。全世代型社会保障制度へと転換し、財政健全化も進めていく。経済に影響を及ぼさないよう対応する。第1に、引き上げによる税収のうち半分を国民に還元する。'19年10月1日から認可・無認可あわせて幼児教育を無償化する」
 と発言した。

 改めて消費税とは極めて欠陥がある税制である。というよりも、欠陥以外は存在しないと言っても過言ではない。
 消費税は、
●低所得者層の「消費税対所得比率」が高くなり、高所得者層は低くなる
●赤字企業、失業者、低所得者、年金受給者であっても、容赦なく徴収される
 という、格差を拡大する「逆累進課税」の欠陥を持っており、さらに税金が本来持つべきビルトインスタビライザー(埋め込まれた安定化装置)の機能がない。好景気だろうが、不景気だろうが、税収が変わらない「安定財源」である消費税は、まさに欠陥税制なのである。

 さらに重要なポイントは、消費税とは「消費に対する罰」である点だ。たばこ税を引き上げると、たばこの購入が減る。つまりは、たばこの「実質消費」が減少する。

 消費税を増税すれば、当然ながら「実質の消費」が減るのである。消費税を増税しても、一時的に消費が落ち込むだけで、その後は「V字回復する」などと寝言を言っていた安倍政権だが、実際には「L字低迷」となっている。増税直前に駆け込み消費が起き、その後は駆け込み分を上回る落ち込みとなり、かつ「上がってこない」というのが現実なのだ。

「消費に対する罰」が継続している以上、実質消費が増えるはずもない。実質消費の低迷は、需要縮小、実質賃金の低下をもたらす。すると、実質賃金が下がった国民は、ますます実質消費を減らすという、絵に描いたような悪循環に入る。というより、すでにわが国は入っている。

 '19年10月に消費税を再増税すると、「消費に対する罰則が重くなった」ということで、実質消費は「一段下がった」形のL字低迷の状況に入るのは確実だ。

 さらに、安倍政権は消費税を増税し、よりにもよって増収分を「負債返済」に回している。増税による増収分を、せめて全額支出(政府の消費、投資)に回してくれればまだしも所得への影響は抑制される。ところが、増収分で負債返済されてしまうと、文字通りおカネが「消える」ことになり、誰の所得も生まれない。「増税+負債返済」の組み合わせは、我々が稼いだ所得をブラックホールに放り込み、そのまま貧困化させる最悪中の最悪の政策なのだ。

 総理は会見で「引き上げによる税収のうち半分を国民に還元する」と、語ったが、我々の所得から最悪の形で徴収した税収について、恩着せがましく「還元する」などと言ってほしくない。その上、問題なのは、
「国民に還元されない増収分は、負債返済に回される」
 という点である。つまりは、'19年10月に予定されている消費税増税の増収分の半分は、誰の所得にもならない。まさに、日本国民貧困化政策である。

 さて、改めて消費税と法人税の違いについて考えてみよう。法人税は、企業が費用を増やせば増やすほど減っていく。企業の費用増は、法人税の源たる税引き前利益の縮小になるわけだ。法人税率が高い場合、企業は、
「どうせ税引き前利益を増やしたところで、たくさん税金で持っていかれてしまう」
 となり、投資や人件費、交際費などを増やすことになる。

 つまりは、法人税は「過大な税引き前利益を残すこと」に対する罰なのだ。そして、「利益への罰」を回避するため、企業が投資や消費、分配(給与)を増やすと、確実に「需要」が増加することになる。結果的に、経済はインフレギャップ(総需要>供給能力)方向に向かう。

 それに対し、消費税は「消費への罰」だ。'89年(消費税導入)以降の日本は、見事なまでに「法人税減税分の財源を、消費税増税で賄う」ことを繰り返してきた。要するに、企業に「楽」をさせ、その分を一般国民からの徴税で賄ってきたのである。ということは、
「消費に対する罰を厳しくし、需要を縮小させ、同時に利益に対する罰を甘くし、需要を縮小させる」
 という、二重の需要縮小策を政府は推進してきたことになる。さらに、日本人の生産性はただでさえ上がりやすい。この状況でデフレギャップ(総需要<供給能力)にならなければ、むしろ奇跡だ。

 残念ながら、奇跡は起きなかった。「消費税増税」はデフレ化政策で、「消費税増税+法人税減税」は、さらなるデフレ化政策なのである。デフレ化政策を打った以上、わが国は普通に長期デフレーションに突入した。

 お分かりだろうが、「デフレ脱却」を標榜しながら消費税増税と法人税減税を繰り返す安倍政権は、その時点で「うそつき政権」ということになる。デフレ脱却をする気など、はなからないのだ。

 安倍政権が本気でデフレ脱却を望むならば、消費税「減税」と法人税「増税」が必要になる。消費税減税で消費への罰を減らし、消費という需要を増やす。法人税増税で「需要に回らなかった利益」に対する罰を増やし、需要を増やす。
 つまりは、安倍政権がグローバル株主資本主義に従属し(している)、
「法人税減税を繰り返し、株主への配当金を最大化する」
 政策を推進している限り、日本のデフレ脱却が果たせるはずはないのだ。

 現在の日本に必要なのは、「消費税減税と法人税増税」を大々的に打ち出す政治勢力だ。別に、既存野党でも一向に構わないが、とにもかくにも国会で消費税に関し、この手の「まともな議論」が行われることを心から願っている。

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みつはし たかあき(経済評論家・作家)
1969年、熊本県生まれ。外資系企業を経て、中小企業診断士として独立。現在、気鋭の経済評論家として、分かりやすい経済評論が人気を集めている。

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