本好きリビドー(229)

エンタメ・2018/11/21 15:00 / 掲載号 2018年11月29日号

快楽の1冊
『殿山泰司ベスト・エッセイ』 大庭萱朗編 ちくま文庫 950円(本体価格)
「三文役者」の精髄を集めた決定版

 俳優・殿山泰司―といっても没後はや30年近くなる。お若い衆にはピンと来ぬかもしれないが『スター・ウォーズ』に出てくるヨーダが比叡山で頭を丸めた上に、世の辛酸を嘗め尽くしたような風貌の御仁。

 かつて台詞が一言もない新藤兼人監督の『裸の島』に主演した以外、生涯ほとんどの作品に脇役として存在するも画面に登場するだけで強烈なクセのある匂いを漂わせた自称“三文役者”(ある時は“老残役太郎”とも)は独特の文体に中毒者続出の名文家、エッセイストとしても知られた。残念ながらその著作のほぼすべてが絶版、古本屋でも高値が付けられている昨今。こうして『よりぬきサザエさん』のごとき形で読めるのはひとまず喜ばしい。

 自身の青春と戦争と撮影所を語りつつ、そこはかとなくハードボイルドな香りの自伝『三文役者あなあきい伝』をはじめ、プライベートではジャズと推理小説をこよなく愛した素顔がほの見える『JAMJAM日記』など数々の名著から親友・金子信雄の著書文庫版に寄せた解説に至るまで、そのエッセンスを抽出した配列の編集だが、惜しむらくは怪著『日本女地図』がまるまる漏れている点。

 全国47都道府県それぞれ出身女性の特徴から性癖からをウソかマコトか体験談を混えて事細かに論じ、おまけに各地での女性器の呼び方まで網羅するおかしくも大真面目なこの本の一章だけでも、放り込んでほしかった…とはファン心理の欲張りか。

「妻」でもなく「女房」でもなく「嬶」でもなく、まして「妾」でも「彼女」でもない“側近のオンナ”という表現は著者の大発明。原文を引用する愚は避けるにしかず。とにかく一読していただきたい。「ハマる」のは確実。
(居島一平/芸人)

【昇天の1冊】

 男のアンチエイジングが話題になる機会が増えてきた。もっとも女のそれと違い、男の場合は精力の衰えを回復したいという願いが多いという。そして、精力の減退とは、ED(勃起不全)、LOH症候群(男性更年期)などの症状を指す。

 もちろん見た目を若く見られたいという願望も少なくない。「太った」「頭髪が薄くなった」などだ。誰でもひとつは思い当たる節があるだろう。

 そうした悩みに答えた1冊が『20歳若返る デキる男のアンチエイジング』(イースト・プレス/1300円+税)だ。

 著者は医学博士の古賀祥嗣氏。泌尿器科の専門医だけにその道についてはプロ中のプロで、男性力のアップは男性ホルモンを増やすことで治療できるという。

 男らしさを維持する鍵は、この男性ホルモンにある。刺激を受けるとワクワクする高揚感や、女性に比べて攻撃的で、セックスへの好奇心も旺盛…若い頃に持っていたこうした気持ちは、体内で生成される男性ホルモンの作用だ。

 それが加齢とともに男性ホルモンが減少すると、なんとなく何事にもヤル気が起きなくなってくるワケだ。

 同書は生活習慣を改善しようというお題目だけ記された書籍とも違う。勇気を出して医者の診察を受ければ、治療してくれると説いている。

 男性力のアップについて、今では病院で診てもらえる時代になった。最近、元気がないという諸兄、そんな少しの勇気をもらえる本なのだから、一読してみてはどうだろう。
(小林明/編集プロダクション『ディラナダチ』代表)

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