☆HOSHINO 2019年6月27日号

世の中おかしな事だらけ 三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』 第320回MMT対財務省(後編)

掲載日時 2019年05月21日 06時30分 [社会] / 掲載号 2019年5月30日号

世の中おかしな事だらけ 三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』 第320回MMT対財務省(後編)
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 財務省はMMT(現代貨幣理論)に対する「反論資料」において、前回(319回)の論点に加え、1つ、個人的に実に興味深いことを書いている。

 筆者ら反・緊縮財政派は、日本銀行が日本政府の子会社であることを受け、一般政府と中央銀行を合わせた「統合政府」で経済や財政を考える。統合政府の場合、日本銀行が保有する国債は、実質的に「政府の負債」ではなくなる。何しろ、返済も利払いも不要なのである。つまりは、現金紙幣と同じだ。

 自国通貨建て国債のみしか発行していない国は、中央銀行が自国通貨を発行し、国債を買い取ることで返済負担が消滅する。だからこそ、黒田日銀総裁の発言にもあるように「自国通貨建て政府債務はデフォルトしない」のである。

 というわけで、財務省が財政破綻論を主張するならば、「自国通貨建て政府債務はデフォルトしない」に反論する必要があるわけだが、正面からは不可能なので(嘘つきになってしまう)、「反論資料」では絡め手で否定してきた。

〈日本銀行の国債保有について
○政府と日本銀行を統合して考えれば政府の負債(国債)と日本銀行が保有する資産(国債)が相殺されるとの指摘があるが、仮に政府と日本銀行のB/Sを統合したとしても、日銀の保有する国債の額だけ政府の債務が見かけ上減少するだけであり、当座預金等の日銀の債務が負債に計上されるため、負債超過の状態は変わらない。〉

 実に興味深い。
 少なくとも、日銀が保有する国債について、財務省も統合政府で考えると「日銀の保有する国債の額だけ政府の債務が見かけ上減少する」ことは認め(ここがポイントだが)、
〈当座預金等の日銀の債務が負債に計上されるため、負債超過の状態は変わらない〉
 と書いているのである。当座預金等とは、具体的には現金紙幣と日銀当座預金のことである。財務省は現金紙幣や日銀当座預金という負債の存在により「負債超過」であることは同じであると反論しているのだ。ということは、財務省は政府の「負債超過(=純負債)」について悪と認識していることになる。あるいは、認識させようとしている。

 財務省の資料には、残念ながら日銀のバランスシートしか載っていない。というわけで、筆者は親切心を発揮し、統合政府のバランスシートを作成した。なお、数値データは資金循環統計2018年末速報値版を使用する。

 図の一番右が、一般政府と日銀のバランスシートを合算した「統合政府のバランスシート」である。当たり前だが、一般政府と日銀を統合した相殺される国債は、日銀保有分(466兆円)のみで、統合政府のバランスシートでも「国債・財投債」は442兆円分残っている。もっとも、負債の半分程度は、元々は日銀の負債として計上されていた現金(115兆円)、日銀当座預金(405兆円)に姿を転じた。

 財務省は、〈当座預金等の日銀の債務が負債に計上される〉と書いている。それはその通りというか「当たり前の話」だが、ということは、財務省は「現金や日銀当座預金といった“国の借金”が原因で、日本は財政破綻する!」と、言いたいのだろうか。

 あるいは、統合政府にしたところで、日銀の純資産(28兆円)の金額分、政府の純負債が消えるだけであるため、財務省のいう「負債超過」は711兆円(=739−28)で計上されている。この一般政府や統合政府の負債超過、純負債が問題であり、711兆円を「ゼロにする必要がある」と財務省は主張しているのだろうか(そうとしか読めないが)。

 誰かの資産は、誰かの負債である。あるいは、誰かの純資産は、誰かの純負債。

 政府の純負債を縮小し、ゼロにするということは、その分、我々国民の「純資産」を削るという話になってしまうのである。つまりは、財務省には我々の資産を減らそうという魂胆があるとしか思えないのだ。

 プライマリーバランス黒字化は、所得面で国民を貧乏にする。さらに「負債超過」の削減は、資産面で国民の金融資産を根こそぎ奪い取ることを意味する。

 財務官僚がそこまで深く考えたとは思わないが、いずれにせよ「誰かの純負債は、誰かの純資産」であり「政府の純負債は、国民の純資産」であるという事実くらいは認識して欲しいと、切実に思う。

 ところで、統合政府のバランスシートの貸方(右側)を見ると、面白いことが分かる。現金とは文字通り「現金紙幣」である。現金紙幣について「借金だ!」と、騒ぎ立てる人はいない。

 日銀当座預金と国債は、共に「統合政府」の負債である。そして、両者の“違い”は、「当座預金には金利が付かず、国債には金利が付く」以外には存在しないのである。

 我々、一般の国民や企業が日常的に使用する「銀行預金」で考えてみよう。銀行預金は市中銀行の負債だが、主に金利が付かない当座預金と、付利される定期預金(あるいは普通預金)に分かれている。日銀当座預金は、市中銀行の当座預金と性質が全く同じである。それでは「国債」は?

 国債は、一定期間(償還期限まで)は現金化できず(※金融市場で売買することは可能だが)、利子が付く。つまりは、国債は定期預金と同じなのである。要するに、「国債という債務が原因で、政府は財政破綻する!」といったレトリックは、何と、「定期預金という債務が原因で、市中銀行が倒産する!」と言っているのに等しいという話になるのだ。

 どこの世界に「定期預金が原因で銀行が破綻する」などと騒ぎ立てる者がいるというのだろうか。日本国内に蔓延した財政破綻論者が、いかに無知であるか、財務省がどれほどデタラメか、この一点だけでも理解できる。財務省や財政破綻論者は、「銀行は定期預金が増えると破綻する!」と叫んでいるのも同然なのである。

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みつはし たかあき(経済評論家・作家)
1969年、熊本県生まれ。外資系企業を経て、中小企業診断士として独立。現在、気鋭の経済評論家として、分かりやすい経済評論が人気を集めている。

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