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森永卓郎の「経済“千夜一夜”物語」 東芝半導体売却で誰が儲けた

掲載日時 2017年09月08日 15時00分 [社会] / 掲載号 2017年9月21日号

 経営再建中の東芝が、8月24日に取締役会を開き、半導体子会社の東芝メモリを米国半導体大手のウエスタンデジタル(WD)を含む「新日米連合」に売却することで大筋合意したが、31日に開催された定例取締役会では、一転、結論が先送りとなった。
 当初は産業革新機構、日本政策投資銀行、米ファンドのコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)が、それぞれ3000億円、東芝も1000億円、さらにゆうちょ銀行など日本企業が500億円を出資。ほかにも三井住友銀行、みずほ銀行、三菱東京UFJ銀行が融資として7000億円程度を負担。一方、WD社は、普通株に転換可能な社債を引き受ける形で1500億円を拠出する方向で、売却額計1兆9000億円でまとまりそうだった。
 それが結局、土壇場になってWDの強硬姿勢などにより膠着。改めて交渉のやり直しとなったわけだが、いずれにせよ、場合によっては3兆円以上の価値があると言われた東芝のメモリは、安値の叩き売りという結果をもたらすだろう。その原因は、売り急いだからだ。

 東芝は、6月21日に東芝メモリの売却先に関して、日米韓連合に優先交渉権を与えた。WD社を売却先に入れたくなかったからだろう。東芝とWD社は、東芝の四日市工場に共同で設備投資を行い、生産されたメモリを予め定めた割合で分け合う合弁事業を行っている。東芝とWD社は、それだけの関係だ。
 ところが、WD社は東芝メモリの売却計画を知るや、売却にストップをかけ、もし売却するのであれば自社に安値で売れと言ってきたのだ。言い掛かりに近い申し入れだったため、東芝は当然応じなかった。ところが、WD社は東芝の半導体事業の売却を不服として、国際仲裁裁判所に訴えたのだ。
 東芝は、それも無視して、日米韓連合に優先交渉権を与えたのだが、日米韓連合が国際仲裁裁判所の訴訟リスクを恐れ、交渉が暗礁に乗り上げてしまった。国際仲裁裁判所は、米国に有利な判決をしばしば下すからだ。そのため東芝は、WDを含む新日米連合に東芝メモリを売却せざるを得なくなったのだ。

 私は、言い掛かりをつけてきたWD社が、最終的に1000億円以上の利益を出すのではないかとみている。米ファンドのKKRを含めれば、米国の儲けは、数千億円の規模に達するだろう。
 もともと東芝が経営危機に陥ったのは、米国の原子力企業であるウエスチングハウスというババをつかまされたからだ。米国に会社を傾けられ、立ち上がろうとすると、火事場泥棒のような形で、またカネを奪われる。
 こんなひどい話があるだろうか。実は、この事態を防ぐ手立てが一つだけあった。それは、東芝が東芝メモリを新規上場させることだ。そうすれば、一般投資家が妥当な価格で東芝メモリを買ってくれるから、東芝にとっても、東芝メモリの従業員にとってもベストの選択だっただろう。実際、東芝内においても、この方式が検討されていたふしがある。
 それが実現しなかったのは、銀行が早期売却の圧力をかけたからだった。日本のメガバンクは、一体、どこを向いて仕事をしているのだろうか。

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