美音咲月 2019年7月25日号

〈目からウロコの健康術〉飲み込みの機能改善で予防する高齢者の死因上位「誤嚥性肺炎」

掲載日時 2019年06月06日 12時00分 [健康] / 掲載号 2019年6月13日号

 口の中で噛み砕いた食べ物は、通常、喉の先にある食道を通って胃に落ちるが、何らかの原因によって食道の隣にある気管に流れてしまうことがある。これを「誤嚥(ごえん)」といい、誤嚥した後に食べ物や唾液についた口腔内の細菌が肺の中で繁殖すると、誤嚥性肺炎が起きる。

 厚生労働省の調査によると、’17年に亡くなった日本人のうち肺炎による死亡はがんと心臓の病気に次いで3番目に多く、9.9%を占める。この中の誤嚥性肺炎の割合は約3割で、肺炎の患者を高齢者に限定すれば、誤嚥性肺炎の割合はおよそ7割まで上がると言われている。つまり、誤嚥性肺炎は高齢者の死因の上位を占める病気なのだ。

 4月、漫画『ルパン三世』の作者で、漫画家のモンキー・パンチ(本名・加藤一彦=かとう・かずひこ)さんも、誤嚥性肺炎のため81歳で亡くなっている。

 誤嚥性肺炎のきっかけとなる誤嚥は、なぜ起こるのか。嚥下障害の治療に注力する内科併設の歯科医院『もぐもぐクリニック』(東京都府中市)の松宮春彦院長はこう話す。

 「代表的なのが、加齢による喉の筋力の低下と神経の鈍化です。食べ物を飲み込む上で重要なのは喉仏と食道の動きで、喉仏が上に上がると食道が開くようになっているのですが、加齢で喉の筋力が落ちてしまうと喉仏が上がりにくくなり、食道も開きにくくなります。また、年を取ると喉の神経の働きも落ちるため、食べ物が喉に残っていることを感じづらくなり、舌の付け根や食道の入り口に食べ物がたまりやすくなります。こうしたことから、食べ物が気道に流れやすくなってしまうのです。筋力の低下や神経の鈍化は加齢だけではなく、脳卒中の後遺症やパーキンソン病、多系統萎縮症などの病気が原因であることもあります。また、頚椎症によって首の骨が喉の方に出っ張ってしまったり、喉頭がんや良性腫瘍ができたりして物理的に食道に食べ物が流れづらくなることも誤嚥の原因になり得ます」

 注意したいのは、誤嚥したからといって必ず誤嚥性肺炎が起こるわけではないことだ。加齢や病気で免疫力が落ちることによって細菌が繁殖しやすくなるので、発症の直接的な理由は免疫力の低下にある。高齢者は喉の筋力と神経の働きが低下して飲み込みの機能の異常(嚥下障害)を起こしやすくなり、さらに、若い人に比べて免疫力も低下しやすいので、誤嚥性肺炎が起こりやすくなるわけだ。

 誤嚥性肺炎の症状としては、「発熱やせきが続く」「色のついた痰が出る」「食欲や元気がない」といった風邪の諸症状と共通する。前出の松宮院長によれば、対応している診療科はリハビリテーション科や呼吸器内科、歯科が中心で、耳鼻咽喉科で治療を行っているケースもあるという。これらの診療科で痰を採取しての細菌検査や血液検査、レントゲン撮影を行って病気かどうかを診断する。治療方法は飲み薬や点滴による抗菌薬の投与が中心になる。

★嚥下障害改善で病気のリスク減

 誤嚥性肺炎を予防するためには、間接的な原因となる嚥下障害の有無を把握して、起きていれば改善を図ることが必要だ。嚥下障害の症状と治療方法について松宮院長はこう解説する。

 「嚥下障害の症状は誤嚥性肺炎のものと共通しますが、それら以外としては、『口角からよだれが垂れる』『かすれ声になる』の2つが大きな特徴として挙げられます。喉の機能が落ちることで口の中に唾液がたまりやすくなり、また、喉の神経がうまく働かなくなることで声帯が十分に閉じなくなると声を出しにくくなるからです。治療方法は喉をマッサージしたり舌を動かしたりするリハビリ療法が一般的ですが、当院のような嚥下障害の治療に注力する医療機関や一部のリハビリテーション病院では、喉の筋肉や神経に電気刺激を与えることで筋力アップや神経機能の正常化を目指す方法を行っているところもあります」

★自ら喉の機能を調べ鍛える方法

 嚥下障害が起きているかどうかは、ある程度自分でも確かめられる。松宮院長によると、30秒の間に3回、唾を飲み込めないときは高い確率で嚥下障害が起きているそうだ。

 また、喉の機能低下を防いだり、その向上を目指したりしたい人は、自分で取り組める体操も有効とのこと。額に手を当ててやや上に引っ張りながらへそをのぞき込んだり、仰向けに寝た状態で肩を床につけたままつま先が見えるまで頭だけを上げたりする動きを1日5〜10分行うことで、効果が見込めるという。

★口腔ケアや食事時も注意が必要

 誤嚥性肺炎を予防するためには、口腔ケアにも注意したい。松宮院長によれば、就寝中に口の中の食べかすや唾液が気管に流れてしまうこともあるため、特に夕食後や就寝前には丁寧にケアを行うことが大切だ。フロスや歯間ブラシも使って、食べかすや細菌が集まる歯垢を取り除いておこう。そもそも口腔内の細菌量が多いと発症リスクが上がるため、歯周病をしっかり治療しておくことも重要。

 在宅医療を通し、患者の自宅でも嚥下障害の治療を行っている松宮院長は食事中の注意点にも言及する。

 「食卓で食事をする際は、なるべく上体を真っ直ぐに起こしておくことが大切です。背もたれが後ろに傾いているイスに座って背中をつけていると、頭の角度も後ろに下がってあごが上を向いてしまうため、食べ物が気道に流れやすくなります。テレビを見ようと首をひねったまま食べるのも危険。片側の喉がつぶれて飲み込むスペースが狭くなるため、食べ物が気道に流れやすくなります。食事をする際にどうしてもテレビを見たい方は、ご自身の正面に機器を置きましょう。こうしたことに配慮した上で、食べることに意識を集中すると、誤嚥のリスクが減ります」

 高齢者は喉に食べ物が残りやすくなるため、体を横にしたり、寝たりするのは食事をしてから30分以上経ってからにすることもポイントだ。そうすることで、まれにあるという逆流性食道炎による食べ物の逆流と気管への流入も防げる。

 松宮院長は「40歳をすぎた中年層は、高血圧症を放置しないでほしい」とも話す。中年以降に発症率が上がる高血圧症は進行すると脳卒中の原因になり、脳卒中を起こすと、その後遺症で嚥下障害が起きやすくなるためだ。生活習慣病を予防し、早いうちに治療に取り組むことが結果的に誤嚥性肺炎の予防にもつながる。

 嚥下障害の治療を行っている医療機関は、ウェブサイト「摂食嚥下関連医療資源マップ」で調べられるので、ぜひ参考にしてほしい。

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