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プロレス解体新書 ROUND64 〈アンドレvs前田の真実〉 語り継がれる究極の“不穏試合”

掲載日時 2017年09月24日 16時00分 [スポーツ] / 掲載号 2017年9月28日号

 “伝説のセメント(真剣勝負)マッチ”として今なおファンの間で語り継がれ、かつてはその試合映像が裏ビデオとして流通していたアンドレ・ザ・ジャイアントvs前田日明(1986年4月29日、三重県津市体育館)。果たして真相はどこにあったのか? そして黒幕は誰だったのか?

 インディーマットで活躍した金村キンタロー(昨年引退)は、プロレス入りする前の高校生のとき、地元の三重県津市でアンドレvs前田を生観戦したという。
 そのときの感想としては「何か変な試合だなあ」というだけで、のちに言われるような不穏試合との認識はなかったそうだ。
 「あの当時は不透明決着の試合も多く、これもそのうちの一つにすぎないと捉えていたファンは多かったように思います。それが後々に“このカードが唐突に組まれた”ことや“テレビ放映の予定が急きょ取りやめになった”などの裏事情が明らかになり、また、当事者である前田自身が『アンドレにセメントを仕掛けられた』と語ったことで、いわく付きの試合として注目されるようになりました」(プロレスライター)
 では、いったい真相はどうだったのだろうか?

 この頃、相手の技を受けずにハードな打撃を繰り出すUWFのスタイルに不快感を抱くレスラーが多く、それを代表してアンドレが制裁を加えようとしたというのが、現在の通説である。それはアンドレ自身の意思によるものだったのか、それとも、誰かに焚きつけられたのか。
 「当事者である前田はこれについて、黒幕は坂口征二と推測しています。アンドレは試合後に『it's not my business(俺は関係ない)』と話しており、猪木も前田に対して『よくやった』と激励したそうで、消去法で当時のマッチメークに関わっていた坂口しかいないというわけです」(同)

 ただ、これはあくまでも前田の一方的な意見であり、疑問の声もある。
 「まず世界的トップスターだったアンドレに、新日側から前田の制裁を依頼するというのが簡単な話ではない。よりよいストーリーを作るための話であれば、アンドレも聞く耳を持つでしょうが、試合を壊すような頼みを受けるメリットがありません」(新日関係者)

 そもそもアンドレをボディースラムで投げさせてもらうだけでも、長期の交渉と深い信頼関係が必要だといわれるのに、リスクの大きいセメントの要求など簡単にできるはずもない。
 そこで“UWF勢に不満を募らせる外国人選手を代表して、アンドレが自主的に仕掛けた”との説が有力視されるのだが、しかし、それではアンドレが試合後に発した言葉との整合性が取れない。
 「性格的にもアンドレは、そんな言い訳をするタイプではないし、する必要もない。アンドレクラスのトップレスラーであれば、UWF勢との試合が嫌なら『やらない』と言えばそれで通るわけですから、やはり黒幕がいたと考えるのが自然でしょう。あくまでも推測の域は出ませんが、やはり猪木だったと思います」(同)

 この頃の状況として、新日とWWFの提携解消により、アンドレはラストシリーズとなることが決まっていた。そのため猪木は、アンドレからフォール、もしくはギブアップでの一本勝ちを要望し、その交渉を両者の間で重ねていた。
 そんな中でアンドレがUWFへの不満を口にし、それに対して猪木が『だったらやっちゃっていいよ』などと言うのは、いかにもありそうな話ではある。
 「猪木がアンドレに勝たせてもらうための交渉材料の一つとして、前田戦でのセメント許可を持ち出したという可能性もあるでしょう。日本側のトップである猪木の言うことであれば、アンドレがそれに従っても不思議はない。急きょテレビマッチとしてアンドレvs前田が組まれたというのも、猪木であればマッチメークの権限もあるし、テレビ局側への働きかけも容易です」(同)

 猪木黒幕説については、ファンの間でも“前田との対戦を避けたい猪木が仕掛けた”として根強く語られている。
 「しかし、猪木は前田のことを後継者、次期エース候補として考えていたし、直接対決についても話題を先延ばしにしていただけで、いつかはやるつもりだったと思います。だから、アンドレにセメントをけしかけたのだとすれば、それは前田つぶしのためではなく、前田がどこまでやれるかという、興味からのことだったのでしょう」(同)
 もしそうであれば、猪木がこの試合の直後に前田を激励したというのも、自然な流れだと言えよう。

 すでにアンドレは天に召され、猪木はたとえ張本人であったとしても、そのこと自体を忘れている可能性が高い。真相は確かめようもないが、当欄では猪木黒幕説を最有力としたい。

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