政界風雲急 ◎カジノ大疑獄 大阪IRと大阪都構想「木っ端微塵」

社会・2020/01/24 06:00 / 掲載号 2020年1月30日号
政界風雲急 ◎カジノ大疑獄 大阪IRと大阪都構想「木っ端微塵」

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 昨年末、自民党の秋元司・元内閣府副大臣が東京地検特捜部に収賄容疑で逮捕されたカジノ汚職事件。その事件絡みで年明け早々、新たに日本維新の会の下地幹郎・元郵政民営化担当相(現在は維新除名)が、中国カジノ企業元顧問からの現金授受を認めた。

 この状況は、かつてカジノ誘致推進の旗を振ってきた橋下徹・元大阪市長やカジノ候補地の筆頭地、大阪市にも思わぬ余波が及ぶと、もっぱらだ。維新と対立する大阪の自民党関係者は「カジノがぐらつけば、維新が10年越しで進める大阪都構想にも影響を及ばす」と強気の声を上げ始めた。

 事件の経緯を全国紙司法担当記者が解説する。
「収賄の疑いで逮捕された秋元は年明けに再逮捕され、賄賂総額は1000万円にのぼる。その秋元とは別に、5人の国会議員にも“カネをバラまいた”と、すでに逮捕されている中国企業元顧問らが暴露している。特捜部の最終ターゲットは自民党大物議員との情報も錯綜する中で、現金授受を認めたのが下地議員です」

 下地議員の説明によると、現金100万円は2017年総選挙中に中国企業元顧問から受領。だが、あくまで個人献金の認識だったという。領収書は相手の都合で未発行、そのため収支報告書に未記載。また、下地議員は当時、超党派カジノ議連の副会長だったが、職務権限はゼロで問題ないことを強調した。
「下地氏は返金で一件落着と思っていたが、事は簡単ではなかった。というのは、下地氏が所属する日本維新の会にとって、現ナマ授受は、維新崩壊にもつながりかねない2つの大問題があるからだ。下地氏を即刻、除名処分にしたのはそのためです」(維新関係者)

 維新崩壊につながりかねない2つの危機とは何か。

 1つは、今の日本維新の会の拠点である大阪府と大阪市の立ち位置だ。
「大阪は2025年万博開催の誘致に成功したことにより、昨年4月の統一地方選で府、市議選とも圧勝した。大阪都構想が焦点となった府知事、市長選でも勝ち、勢いを維持したまま昨夏の参院選も改選7を上回る10議席を獲得。それもこれも、万博と同時に『カジノを含むIR誘致は120%間違いない』と思われていたからだ。カジノ誘致の近畿圏への経済効果は年間約7600億円と試算され、維新は敵なし状態だった」(同)

 昨年12月24日、まだカジノ候補地として正式決定前にもかかわらず、大阪府と大阪市は’26年の全面開業を目指しIR事業者公募手続きを開始した。事業者は4月までに書類提出し、6月に業者選定、来年秋、工事着工と見切り発車するほどの自信の有り様だ。すでに米MGMリゾーツ・インターナショナル、香港のギャラクシー・エンターテインメントなど3事業者が手を挙げている。

 吉村洋文府知事は昨年末の会見で「世界最高水準のIRを誘致したい」と胸を張った。そこに冷水を浴びせたのが、秋元議員の逮捕劇だったわけだ。
「秋元逮捕だけなら、松井一郎市長と吉村府知事もまだIR事業を粛々と進められるとして余裕があった。でも、維新所属の下地氏の100万円授受が発覚すると真っ青になった。というのも、万博後のカジノ誘致成功なくして大阪の都市構想は描けないからだ。カジノを呼び水にして、今年11月にもう一度、二重行政廃止の大阪都構想の住民投票を実施しようとしていた矢先だった。今回の事件前後、千葉市や北海道がカジノ候補地から手を下したように、マイナスのイメージが増殖している。大阪では、カジノで街づくりすることを好意的にみられていた。その維新の構想も、身内から疑惑議員が出ては負のイメージは避けられない。そうなると、大阪都構想の住民投票はどうなるか、まったく不透明になってくる」(同)

 今後、さらなる国会議員のカジノ収賄疑惑が噴出したり、特捜部が最終ターゲットとする自民党大物議員が具体的に表面化すれば、カジノを軸とする大阪街づくり構想も一気に吹き飛びかねない。

 2つ目の危機は橋下氏への影響だという。今も維新の影のオーナーとして橋下氏の人気は絶大。松井市長らが進める大阪街づくりのベース、万博とカジノ誘致に最も熱心だったのが他ならぬ橋下氏だった。特にカジノ誘致には力を入れ、府知事、市長時代にはシンガポールなどカジノ先進地を視察に訪れるなど誘致活動に奔走した。

 一方で橋下氏は沖縄での街頭演説や、著書『沖縄問題、解決策はこれだ!』の中で『沖縄にカジノを含めたIR施設設置』『普天間返還跡地480haに統合型IRリゾート』などと訴え、大阪ともども沖縄にカジノIR誘致を強く提言してきた経緯がある。
「確かに、橋下氏は大阪同様、沖縄へのIR誘致を熱心に提言していた。それだけに維新とすれば、沖縄で大きな影響力を持ち、菅官房長官ともツーカーの仲という下地議員がカジノ絡みで事実上、裏金をもらっていたのは裏切り行為。だから維新は下地議員を除名、さらに議員辞職まで求めている。橋下氏によからぬ火の粉が飛んでこないようにするための配慮だろう」(政界関係者)

 橋下氏はポスト安倍、解散総選挙が騒がれるのを機に国政進出、「天下取り」のチャンスを窺っているとされる。橋下氏や維新にとって、今後のカジノ疑獄は大ダメージとなりかねない。

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