〈企業・経済深層レポート〉 久美子社長続投は悪手 ヤマダ電機へ“身売り”した大塚家具の不安要素

社会・2020/01/08 06:00 / 掲載号 2020年1月9・16日合併特大号

 大塚家具の抱えていた資金繰り問題に、とうとう終止符が打たれた。大手家電量販店「ヤマダ電機」が約44億円の資金を投じ、大塚家具の株式を50%以上取得して子会社化。実質、ヤマダ電機に“身売り”したのだ。

 この朗報に大塚家具の株式に買いが殺到。一時ストップ高になるほどだった。しかし、多くの専門家は「不透明感がぬぐいきれたとは到底思えない」と、大塚家具再建に厳しい見方をしている。一体、どういうことなのか。

 まず、大塚家具の盛衰史を簡単に振り返ろう。1969年に創業した大塚家具は、高級家具をそろえた会員制モデルと、住宅ブームによって業績を伸ばした。

「日本の’60年代に始まった高度成長期では、国民は一戸建て新築住宅、新築マンションをこぞって購入していました。国交省統計でも’65年頃に80万戸前後だった新築住宅件数が、’73年には190万戸と倍増。大塚家具は、その恩恵に預かり急成長したのです」(不動産業界関係者)

 ところが、2008年にリーマンショックが発生したことで’09年の新設住宅着工数は41年ぶりに100万戸を割り、その後も100万戸を割り続けている。リーマンショック後の不況に歩調を合わせて、大塚家具の業績が悪化。ニトリといった低価格家具開発の新星企業の躍進も大きなダメージとなる。

 そのため、高級路線を追求する創業者の大塚勝久氏と、会員制撤廃で大衆志向を模索する娘・大塚久美子氏が対立し「お家騒動」に発展してしまう。

「久美子氏が勝ち、’15年に社長に就任しましたが、業績は改善せず、’07年に727億円あった売上高は、’18年に373億円と半減。資金繰りに苦しみ、破綻寸前まで追い込まれてしまったのです」(同)

 そこに「白馬の王子様」として現れたのが今回のヤマダ電機だ。

 救世主が登場したわけだが、厳しい見方をする専門家の声が多いのはなぜなのか。

 その理由を全国紙経済部記者は「三つの大きな不安材料が消えていないからです」と指摘する。

「一つはブランドイメージの低下です。久美子社長が就任したことで、高級家具を購入していた層が離れてしまいました。しかも、久美子社長が取り込みたかった、IKEAやニトリなどを利用する層も、中途半端な大塚家具への大量移動には繋がらなかったのです」

 不安材料の二つ目は、“久美子社長の続投”だ
「久美子社長が就任してから、すでに5年目。しかし、経営は改善するどころか、ますます泥沼に入り込み、破綻寸前に追い込まれていましたからね」(同)

 日本経済全体が低成長とはいえ、帝国データバンクの調べでは、家具業界全体の売上高は、ここ数年は伸びている。

「ニトリは31期連続増収増益で’17年度の売上高は5448億5000万円。一方、大塚家具は連続赤字。久美子社長の経営手腕に疑問符が付くのも当然で、今回も社長続投を不安視する声が大きいのです」(同)

 実は久美子社長の経営手腕への疑念は、昨年から噴出していた。

「三井住友銀行がお墨付きを出したことで、大塚家具の支援をしようとしていたヨドバシカメラですが、支援条件に出したのが久美子社長の退任。しかし、この案を蹴ったため破談になりました。だから今回、ヤマダ電機が久美子社長の続投を認めたことに対して、業界内では驚きの声が上がっています」(家具業界関係者)

 そして三つめは、子会社化に踏み切ったヤマダ電機だ。

 そもそもヤマダ電機は住宅メーカーのエス・バイ・エルを買収して、’11年に住宅関連事業に進出した。

「理由は、売上が停滞した家電事業のテコ入れです。住宅との相乗効果で、本業である家電の売上を伸ばす作戦でした。その流れで大塚家具の商品やノウハウを採り入れたのですが、そもそも、2018年に大塚家具から出資を打診された時は断っています」

 それが’19年2月に業務提携。リフォームや家具など住宅関連商材を増やしたヤマダ電機の新業態店舗で、大塚家具が商品供給をし始めた。

「ヤマダ電機もそれだけ家電事業がうまくいっていないということでしょうし、業務提携してまだ10カ月。十分な成果が見極められない段階での子会社化に、勝算があるとは思えません」(経営コンサルタント)

 ヤマダ電機の山田昇会長は会見で「大塚の家具は利益率が高い。信用不安が解消すれば3年で投資額は解消できる」と強気な発言をしているが、不安材料は多い。

 ヤマダ電機の決断は、吉と出るのか凶と出るのか、全く不透明だ。

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