葉加瀬マイ 2018年11月29日号

森永卓郎の「経済“千夜一夜”物語」 外国人単純労働者受け入れへ

掲載日時 2018年06月23日 15時00分 [社会] / 掲載号 2018年6月28日号

 5月30日の日本経済新聞が「外国人、単純労働に門戸」と一面で報じた。技能実習制度の修了者および特定技能評価試験(仮称)の合格者には、最長5年間の就労資格を与える方針だという。
 政府は、この新しい在留資格によって、建設や、農業、介護、宿泊、造船業で'25年に50万人超の外国人労働力を確保する方針だ。

 日本は、これまで日本人と競合する単純労働の外国人労働力は受け入れない方針を貫いてきた。しかし、現方式の統計が始まった2008年に49万人だった外国人労働者数は、'17年には128万人と、9年で2.6倍へと膨れ上がっている。こうした急増の主な原因は、技能実習と留学生のアルバイトだ。
 技能実習制度は、発展途上国から日本に技能者を招き、日本の企業で働きながら技能を身に付け、その技能を本国の発展のために役立ててもらうというのが本来の趣旨だ。しかし、近年では、人手不足が深刻な業種で、労働力確保の手段として使われているケースが多くみられる。
 また、留学生には週28時間(夏休みなど長期休暇中は週40時間)のアルバイトが認められている。これがコンビニやファーストフードで働く外国人が急増した原因なのだが、留学して本気で勉強する気があるのなら、そんなに長時間働けるはずがない。

 つまり、日本がいつの間にか外国人労働大国になってしまったのは、脱法行為が原因ということだ。しかし、それに対して政府は、なし崩し的に外国人労働者に門戸を開こうとしている。もしそうなったら、真っ先に生じるのが、賃金の低下だ。
 経済学者の小塩隆士氏による「外国人労働者問題の理論分析」(『ESP』'90年6月)によると、単純労働の外国人労働者が100万人流入した場合、GNPは0.13%上昇するが、単純労働の賃金は24%下がるとしている。賃金が大幅に下がれば、いまの人手不足の業界は、ますます日本人が働かなくなってしまい、外国人労働者なしでは生きていけなくなってしまう。

 それだけではない。単純労働者の受け入れは、メリットが雇用企業に即時に現れるのに対して、コストは時間をおいて、国民全体に降りかかってくるという特徴がある。低賃金分野に外国人を入れるのだから、彼らの納める税金は少なく、一方で、失業対策、住宅対策、子弟の教育対策などで、日本人以上のコストがかかるからだ。
 UFJ総合研究所が'05年2月に行った「マクロモデルを用いた国際労働力移動の影響調査」では、生産年齢人口を維持するため、年間69万人の移民の受け入れが必要として、その場合の経済的影響を試算している。
 そこで単純労働者を受け入れたケースをみると、成長率は平均0.2%底上げされるが、2050年時点の政府収支への影響は、社会保障がプラス8兆円にはなるものの、財政への影響がマイナス18兆円となってしまうために、財政・社会保障全体では10兆円のマイナスとなっている。

 高度成長期に大量の外国人労働者を受け入れたヨーロッパは、いまなお負の遺産に苦しんでいる状況だ。むやみやたらに“人手不足解消”という目先の利益に飛びつくことは、自殺行為なのだ。

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