川崎あや 2018年3月1日号

本好きリビドー(190)

掲載日時 2018年02月11日 18時00分 [エンタメ] / 掲載号 2018年2月15日号

◎快楽の1冊
『秘伝・日本史解読術』 荒山徹 新潮新書 800円(本体価格)

 豊臣秀吉の朝鮮出兵の余波で半島から薩摩島津家に連れて来られた陶工たちのその後の歴史を描き、長らく名作の誉れ高い司馬遼太郎の短編「故郷忘じがたく候」。それに真っ向から挑んだのが本書の著者、荒山徹氏の「サラン・故郷忘じたく候」(傍点筆者)で、10年以上前の発表だが衝撃の傑作だった。
 氏によれば陶工たちはいわゆる従軍慰安婦問題でも同様に連呼されるが如き“強制連行”の被害者でも何でもなく、むしろスカウトだという。李氏朝鮮では数百年にわたり両班と称する貴族が厳格な身分制度の頂点に君臨し、焼き物作りに限らずあらゆる“職人”は最末端の下層階級同然の扱いでその搾取と圧迫と差別は言語に絶した。ところが、日本ではどうだったか?
 彼らの手から生み出される茶器飯碗に至るまでが、珍重され有難がられ高値で取引され需要は高まるばかり。無論、島津義弘の誘い等も加味しつつ、陶工らは技術者の誇りを胸に新天地を求めて海を渡ったのが実相に近いのではないか。何より明らかな証が、彼我の待遇は雲泥の差であり、大坂の陣後に徳川幕府が日朝の国交を回復してから双方合意の上で帰国が懇ろに奨励されたにも拘わらず、これに応じた者がごく僅かだったという事実だろう。
 だが、本書を読めば根はなお深く、戦中の国粋化に対する反動から戦後の歴史学が左傾化してしまったことはやむを得ずとも、さらに重ねて“韓傾化”の歪みが、日本史の中でも特に古代史学におけるそれが迷走的に目立つとする著者の指摘は鋭い。
 とはいえ全く堅苦しくなく楽しめる。時代区分ごとに勘所を押さえたお薦めの歴史小説を、それも他人の作品をきめ細かく紹介する姿勢も極めてフェアだ。
(居島一平/芸人)

【昇天の1冊】
 日本は狭いようでいて、実は広い…。そんなふうに感じさせてくれたのが『相性がわかる! 県民性のヒミツ』(宝島SUGOI文庫/580円+税)。
 正月がすぎると各地の雑煮が話題となる。汁はすましか味噌か、使う味噌も赤出汁か白味噌か、餅は丸いか四角いか、入れる具は何か…など、たかが雑煮というなかれ。それほど都道府県によって大きく異なる。すなわち県民性の違いなのだ。
 好みの“味”が違うなら、仕事上で付き合う相手も男女の相性も、県民性に由来するところが大きい。その相性を各都道府県の成り立ちや歴史に求め、人間関係をより円滑に進めるための一助にしようという本だ。
 例えば、北関東の栃木の女は、福島・新潟の男と相性がいいという。大阪・長野・徳島の女なら岡山の男、北海道の女なら東京の男…。理由についてはネタバレになるので本書に譲るが、どれも男女がお互いにないモノを補い合える、理想の相手なのだそうだ。
 出身県の県民性というものは、幼少期からの性格や価値観形成に大きく影響を及ぼすことから、成長してからその人自身の人格を変えることは難しい。人は県民性に一生縛られて生きていかなければならない。それなら、自分の価値観や生活習慣を理解し、合わせてくれる相手を探すほうが仕事も恋愛も上手くいくというワケだ。
 著者は“県民性博士”といわれるマーケティング研究家の矢野新一氏。膨大な調査とデータに基づいた説得力ある解説は読み応えがある。
(小林明/編集プロダクション『ディラナダチ』代表)

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