森咲智美 2018年11月22日号

やくみつるの「シネマ小言主義」 誰もが持つ「罪」の意識が炙り出される! 『友罪』

掲載日時 2018年06月01日 16時00分 [エンタメ] / 掲載号 2018年6月7日号

やくみつるの「シネマ小言主義」 誰もが持つ「罪」の意識が炙り出される! 『友罪』

 殺人という大罪を犯した人物から、友人の自殺に対して一方的に自責の念を感じ続けている人物まで、人はみな、それぞれが負い目や罪を背負って社会の片隅で同時並行的に生きている。
 そんな現実を描くこの映画。「心を許した友はあの少年Aだった」という惹句からも、日本を震撼させたあの連続児童殺人事件を当然、我々観客に想起させます。

 で、どの人に感情移入するか…なんですけど、自分はほとんどの人物に共感することができず、唯一できたのが、交通事故で人の命を奪った息子を持つ佐藤浩市でした。
 息子の罪を償うために家族を解散し、タクシードライバーとして働きながら遺族に謝り続ける佐藤浩市は、刑期を終えるやいなや、結婚しようとする息子を許すことができません。「被害者の家族は今も時計が止まったように苦しみ続けているのに、なぜお前が新たに幸せを得られるのか」と。佐藤浩市は息子から「自己満足だ」と罵られますが、何と言われようと、己のスタンスに一番近い。

 もちろん、どんな人でも更生の道の権利はあるわけなんですが、「なかったこと」にされると、どうしても違和感を感じてしまう。
 たとえば、刑務所の慰問に行かれる俳優や芸人さんなど、多くいらっしゃいますよね。自分は、せめて服役中は笑いを封印して欲しいと思う。それどころか、一瞬たりとも幸せな瞬間を与えないことが、被害者とその家族に対する贖罪じゃないかと考えるわけです。

 佐藤浩市以外の登場人物の心情には、最後まで寄り添えなかったのですが、扮する役者陣のキャスティングはなかなか絶妙です。
 「少年A」に代表される、不気味で倒錯した人物を演らせたら右に出るものなしの瑛太。元週刊誌の記者で、かつて友人を自殺に追いやったことを苦しみ続ける生田斗真。医療少年院の看守には、いい感じでくたびれた中年女性になった富田靖子。恋人にAV出演を強要される夏帆なんて、もっと肉感的な女優でもよさそうなところを、あえてはかなげな夏帆を選ぶところに監督のセンスを感じます。

 刑事罰を伴う罪だけでなく、もっと範囲を広げれば、罪を犯していない人なんていないわけで、当然、自分にもかぶさってきます。
 よくない別れ方をした人には恨まれているでしょうし、好き勝手言っているわけですから名誉毀損されたと責められても仕方がない。死なせてしまった虫や魚なども数知れず…。わき上がる罪の意識に苛まれそうになるので、あんまり深入りしないようにご注意を。暗くなりますよ。

画像提供元
(C)薬丸 岳/集英社 (C)2018映画「友罪」製作委員会

■『友罪』監督/瀬々敬久
出演/生田斗真、瑛太、夏帆、山本美月、富田靖子、佐藤浩市
配給/ギャガ

 5月25日(金)、TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー。
 目指していたジャーナリストの夢から挫折し工場で働き始めた益田(生田斗真)は、同時期に入社した鈴木(瑛太)と出会う。無口で影のある鈴木は周囲との交流を避けていたが、同じ年の2人は少しずつ打ち解けていき、次第に友情が芽生えていく。ところが、ある事をきっかけに、鈴木が17年前の連続児童殺傷事件の犯人なのではないかと疑いを抱くようになり…。薬丸岳の小説を、『64 ロクヨン』の瀬々敬久監督によって実写映画化した人間ドラマ。

やくみつる:漫画家。新聞・雑誌に数多くの連載を持つ他、TV等のコメンテーターとしてもマルチに活躍。『情報ライブ ミヤネ屋」(日本テレビ系)、『みんなのニュース』(フジテレビ系)レギュラー出演中。

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